XC-007の写真
EXCELIA XC-007
COMPACT DISC PLAYER ¥82,400

1989年にアイワがエクセリアブランドで発売したCDプレーヤー。アイワはそれまでカセットデッキ
小型のシステムオーディオなどのイメージが強いブランドでしたが,1987年にDATの第1号機と
なるXD-001を発売し,「・・・を超えたオーディオ」の意味を持たせたEXCELIAブランドを展開して
デジタルオーディオ時代に実力派のDAT,カセットデッキなどを開発していきました。その中で,CD
プレーヤーも発売され,シリーズ中のトップモデルがこのXC-007でした。

D/Aコンバーター部は,16ビットタイプがL・R独立で搭載され,さらに独自のダブルLBSS(リニア・
ビット・シフト・システム)が搭載されていました。これは,デジタル信号の上位4ビットによりレベルを
検出し,フルスケールに対し1/16以下の信号を4ビットシフトアップ(16倍)してD/A変換した後,ア
ナログアッテネーターで1/16に減衰させるという技術で,全帯域にわたりデジタルノイズを1/16に
抑え,理論上20ビットに相当する効果を発揮していました。
デジタルフィルターとして,18ビット4倍オーバーサンプリング方式のものが搭載され,D/Aコンバー
ター部は,SN比115dB以上,ダイナミックレンジ100dB以上という特性を実現していました。

XC-007のトレイXC-007の内部構造

CD再生に影響があると考えられる制振構造にも配慮されていました。光学系メカシャーシには,内
部損失が大きいBMC(バルク・モールディング・コ ンパウンド)が使用され,さらに,スレッドモーター
にはギヤ等の接触した伝達機構をもたないリニアモーターを搭載して,内部共振の改善と剛性の向
上が図られていました。外部振動に対しては,入念なフローティング構造がとられ,重量級の亜鉛ダ
イキャストシャーシの要所にフローティングゴムが配され,そのうえで厚さ2mmの厚板メカシャーシを
配した2重構造がとられていました。さらに,低反発特殊ゴムと特殊加工ゴムを組み合わせた大型2
重構造インシュレーターが搭載されていました。

電源部は,大型電源トランスを2基搭載し,電源部をデジタル系,アナログ系を完全分離,独立させ
音質を劣化させる電源ラインからのデジタル系のアナログ系への干渉を抑えていました。
さらに,回路間のデジタル成分漏れを遮断するため,デジタル系とアナログ系の基板をそれぞれ別
基板とし,分離独立させていました。

アナログ出力は,FIXEDとVARIABLEの2系統が備えられ,デジタル出力は,光と同軸の2系統が
備えられていました。4系統の一斉出力が可能であるとともに,デジタル出力系とアナログ出力系そ
れぞれにON/OFF切換スイッチが備えられ,回路間のノイズ防止を徹底できるようにもなっていまし
た。

ディジタルディスプレイは2段型で,下段でトラック,インデックス,1曲経過時間が表示されると同時
に,上段に全曲残量時間が表示され,切換スイッチで,下段に1曲残量時間,上段で全曲経過時間
が表示されるという便利な表示となっていました。また,20曲ミュージックカレンダーも装備されてい
ました。
機能としては,10キーによるダイレクト選曲,20曲ランダムプログラム,さらにインデックスサーチ,
6モードのリピートプレイが装備されていました。
また,テープデッキで名を成していたアイワらしく,録音レベル設定のためのデジタルRECキャリブ
レーションが搭載されていました。これは,6種の正弦波をROM中にデジタル化して記録し,歪率
0.0025%とという高精度な正弦波が出力できる機能でした。さらに,テープ等への録音時に便利
な自動的に曲間を一定に作り出すオートブランクも装備されていました。

以上のように,XC-007は,アイワの歴史上,最上級機のCDプレーヤーとして,しっかりした作り込み
がなされたコストパフォーマンスの高い1台でした。親会社であったソニーの技術を生かしつつ,エクセ
リアブランドの独自性も出した苦心の設計でもあったと考えられます。クリアで帯域バランスの素直な
音は,カセットデッキで高い技術を持っていたアイワらしさを感じるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



「音質重視」の頂点。
SN比115dB以上のダブルLBSS,
デジタル・アナログ完全独立電源。


◎新開発のダブルLBSS回路を採用。
 SN比は115dB以上。
◎デジタル系・アナログ系を分離,
 完全独立電源方式。
◎音質重視を一貫して実証。
 L/R独立デュアルD/Aコンバーター。
◎内部振動を制するために。BMC使用
 フローティング光学メカシャーシ。
◎高精度な録音レベル設定へ。
 デジタルRECキャリブレーション。
◎操作性も高精度を追求。
 独自のデジタル・ディスプレイ。
◎出力系にも最先端の技術。
 光・同軸のデジタル出力。


●主な仕様●


読み取り方式
非接触光学式読取り(半導体レーザー使用)
レーザー
GaGs+GaAlAsダブルへテロダイオード
回転数
200rpm〜500rpm(CLV)
演奏速度
1.2m/s〜1.4m/s
エラー訂正方式
CIRC(クロスインターリーブソロモンコード)
サンプリング周波数
44.1kHz
チャンネル数
2チャンネル
復号化(D/A)
16bit直線(20bit相当)
周波数特性
2Hz〜20kHz±0.2dB
高調波歪率
0.0025%(1kHz・EIAJ)
SN比
115dB(A)以上(EIAJ)
ダイナミックレンジ
100dB以上(1kHz・EIAJ)
チャンネルセパレーション
100dB以上(1kHz)
ワウ・フラッター
測定限界以下
出力レベル
アナログ:2V
デジタル・同軸/光:約0.5VPP/−18±3dBm(波長660nm)
ヘッドホン:100mW
端子形状
アナログ:ピンジャック
デジタル:同軸端子・光端子
ヘッドホン:ステレオ標準ジャック
負荷インピーダンス
アナログ:10kΩ以上
デジタル:75Ω
消費電力
20W
最大外形寸法
430W×126H×366Dmm
重量
12kg

※ 本ページに掲載したXC-007の写真・仕様表等は1989年4月
 のEXCELIAのカタログより抜粋したもので,アイワ株式会社に
 著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,
 引用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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