Aurex XD-80
DIGITAL RECORDING PROCESSOR ¥280,0001981年にオーレックス(東芝)が発売したデジタルレコーディングプロセッサー。VTRを記録媒体として活用
してデジタル録音を可能にするいわゆるPCMプロセッサーは,当時いくつかのメーカーから出されていました
が,オーレックスのXD-80は高品質なパーツを投入して作り上げられた高音質な1台でした。XD-80の記録方式は,当時の電子機械工業会(EIAJ)の標準フォーマット,標準化周波数44.056kHz
量子化ビット数14ビット相当というもので,NTSC TV方式準拠のビデオ信号を利用したPCM変調方式でし
た。このデジタル信号処理用のLSIは,東芝,ソニー,三洋の3社が共同開発したもので,高性能と機器の小
型化を実現していました。
この信号処理LSIの主な特長として,ADSD(オートマチック・データ・スライスレベル・コントロール・自動データ
抜き取りレベル制御回路)がありました。パルスの0と1を判断するスライスレベルを自動的に最良のレベルに
コントロールして,安定したデータ抜き取りを実現し,データを記録したテープの互換性を高めていました。さらに
ASSC(アナログ・シンク・スライスレベル・コントロール)も搭載されていました。シンク(同期信号)を正しく抜き
取るために,シンクのスライスレベルを自動的にコントロールし,VHS,ベータを問わず,データのタイミングのず
れを抑え,安定した音楽再生を実現するものでした。
また,このLSIには,CRCCチェック,シンドロームチェック,H相関データチェックの,3重のデータ誤り検出方式
を採用し,ドロップアウトによる影響を抑えていました。そして,このLSI自体は,14ビットのみでなく,業務用の
16ビットシステムにも使用可能なものでした。
A/D変換器,D/A変換器を含む,アナログ信号を扱うアナログ系には,同社の高級プリアンプ等で採用されて
きた高性能素子が投入されていました。低インピーダンス化,異種金属接触の減少,振動の防止を促進させた
uΛ-U形Λコンデンサー,ブチル巻きの銅箔スチロールコンデンサー,大容量(6.8μF/100V)のGUコンデ
ンサー,高音質の電解コンデンサーをパラレル使用するなど,贅沢で音質重視が貫かれた設計となっていました。機能的には,それまでのPCM方式では不可能であった,キュー・レビュー(20倍速),2倍速,3倍速,スローな
どの可変速再生が可能となっていました。強力な異常検出回路,有害信号排除回路,多重PLL制御システムな
どにより,VTRの可変速再生操作により行えるようになっていました。
また,2台のVTRデッキを使ったデジタルコピー機能,VTRの再生デジタル信号と録音入力をデジタル化した符号
の状態でミキシングできるミキシング機能,無録音スペースを作るデジタルレックミュート機能などが搭載されてい
ました。そのほか,10kHzで約10dBの高域補償を行うエンファシス回路,デジタルデータからの正確なレベル表
示を行うピークホールド付レベルメーター(スイッチ切換でVTRトラッキング調整インジケータに),録音モニターに便
利なヘッドホーン端子なども搭載されていました。
以上のように,XD-80は,オーレックスのデジタルレコーディングプロセッサーの最高級機として,当時最新の技術
を投入し,持ち前の高性能素子を満載した力作でした。その音の良さは,名機であったといえるでしょう。オーレック
スらしいこだわりの見える1台でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
XD-80の原理的な特長
◎85dB以上の広大なダイナミックレンジ
◎10〜20,000Hzまでフラットに伸びる,周波数特性
◎驚異的な低歪率0.015%以下を実現。
◎ワウ・フラッターは実用上ゼロ
◎85dB以上の優れたチャンネルセパレーション
◎ドロップアウトに対処。3重誤り検出と誤り訂正・補正回路XD-80の機能的な特長
◎可変速再生(バリアブルスピード)
◎デジタルコピー機能
◎デジタルミキシング機能
◎デジタル・レックミュート機能
◎エンファシス回路(オートエンファシス)内蔵
◎ピークホールド付ワイドレンジレベルメーター採用
◎VTRトラッキング調整インジケータ
◎オートマチックモードセレクター(AMS)回路
◎コントロールワードの内容をインジケーターが表示
◎便利なヘッドホーン端子付安定したデーター抜き取り
◎オートマチック・データースライスレベル・ディテクター・
コントロール(ADSD)回路
◎アナログ・シンク・スライスレベル・コントロール(ASSC)回路高音質素子の採用
◎音質重視設計のアナログ系新開発のLSI
◎PCMレコーディングプロセッサー用LSIの開発
信号記録方式 | NTSC TV方式準拠のビデオ信号を利用したPCM変調方式 |
符号形式 | EIAJ標準フォーマット |
オーディオチャンネル数 | 2チャンネル |
標準化周波数 | 44.056kHz |
量子化ビット数 | 14ビット相当 |
エンファシス | T1=80μsec,T2=15μsec ON-OFF可能 |
誤り訂正方式 | P・Qによる2重訂正ワード |
再生方式 | |
復号化 | 14ビット直線復号 |
誤り訂正 | P・Qによる2重訂正
1ブロック(6データワードおよび2パリティ ワード/IH)中の2ワード誤りまで完全訂正 |
補正 | 平均値補正 |
エンファシス | エンファシスコントロールコードにより自動切換え |
録再性能 | |
周波数特性 | 10Hz〜20kHz±0.5dB |
高調波歪率 | 0.015%以下 |
ダイナミックレンジ | 85dB以上 |
ワウ・フラッター | 測定限界以下 |
入力端子 | |
ライン入力 | |
端子形状 | ピンジャック |
入力インピーダンス | 50kΩ不平衡 |
適合信号源インピーダンス | 低インピーダンス |
−14dB録音レベル | 90mVrms |
0dB録音レベル | 550mVrms |
等価入力雑音電圧 | 10μV以下 |
最大許容入力レベル | REC LEVELボリュームにより任意 |
ビデオ入力 | |
端子形状 | ピンジャック |
入力インピーダンス | 75Ω不平衡 |
適合信号源インピーダンス | 75Ω不平衡 |
最大許容入力レベル | 2.0Vp-p |
規定入力信号レベル | 1.0Vp-p |
出力端子 | |
ライン出力 | |
端子形状 | ピンジャック |
出力インピーダンス | 75Ω不平衡 |
適合負荷インピーダンス | 10kΩ以上不平衡 |
0dB再生レベル | 最大2Vrms |
ヘッドホーン出力 | |
端子形状 | φ6.3mmステレオヘッドホーンジャック |
適合負荷インピーダンス | 8Ω以上 |
0dB再生レベル | 最大5Vrms |
ビデオ出力 | |
端子形状 | ピンジャック |
出力インピーダンス | 75Ω不平衡 |
適合負荷インピーダンス | 75Ω不平衡 |
規定出力レベル | 1.0Vp-p(75Ω不平衡) |
電源 | |
入力電圧 | 100V 50/60Hz |
消費電力 | 30W |
その他 | |
外形寸法 | 450W×93H×386Dmm |
重量 | 7.3kg |
※本ページに掲載したXD-80の写真,仕様表等は1981年12月のAurexのカタログ
より抜粋したもので,東芝株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真
等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
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