XD-Z909の写真
Victor XD-Z909
DIGITAL AUDIO TAPE DECK ¥195,000

1990年にビクターが発売したDATデッキ。CDからのダイレクト録音を可能にしたSCMS規格のDATデ
ッキで,XD-Z707(¥138,000),XD-Z505(¥99,800)というラインナップを成すシリーズの最上
級機でした。3機種を擁するシリーズを持っていたことからも。このころのビクターのDATデッキへの熱意が
表れていました。

メカニズム部は,ビクターがVHS等のビデオで培ってきた技術を生かしたもので,「ファイントラッキング・メ
カニズム」と称していました。ロータリーヘッドを毎分2000回転ものスピードで回転させ,髪の毛のわずか
1/10の幅のトラックにデジタル符号を記録するメカニズムは非常に高精度なものです。総重量わずか
230gの軽量化,省電力化が図られ,ロータリーヘッドには録・再特性に優れ,しかもダブルスキャン方式
に対応した高い耐摩耗性を誇るTSSヘッドが採用され,超小型キャプスタンDDモーターには,サーチ時間
を短縮するプランジャーブレーキを,また直径28mmのフライホイール,テンションコントロール機構も導入さ
れ,ミクロン単位精密さと滑らかな走行安定性を実現していました。

ファイントラッキング・メカニズム

「ファイントラッキング・メカニズム」によって,標準モードの2倍以上の精度が要求される32k-LPモードの
基本性能もしっかりとクリアされていました。さらに,長時間モードで再生するとき,録音時の2倍のスピード
でドラムを回転させる独自の「ダブルスキャン方式」が採用され,48kモードに近づく,エラーを最小限に抑
えた良好な再生特性が得られるようになっていました。

AAコンバーター部K2インターフェース

アナログソース録音時のA/Dコンバーターには,ビクター自慢の「AA(アナログ・アキュレート)コンバータ
ー」が新たに搭載されていました。従来のA/Dコンバーターでは,アナログ信号をいくつかのビット量の積
み重ねに置き換え,デジタル信号に変換していましたが,ビット量の誤差や温度変化によって積み上げる
ほど誤差が大きくなるという弱点があるため,「AAコンバーター」では,1ビット変換方式が採用されていま
した。アナログ信号をビット量ではなくパルス波に置き換えその波の幅を直接デジタル信号に変換すること
で,振幅方向の精度が必要でなくなり,時間軸で変化するパルスの波は水晶精度でコントロールされるた
め,直線性に優れたデジタル変換が実現していました。さらに,変換誤差を入力にフィードバックして減らし
ていくために,4次のノイズシェーパーを通過させてサンプリング歪みを帯域外にシフトし,64倍デジタルフ
ィルターを通過させることで,可聴帯域外のノイズをほぼ完全に除去する仕組みになっており,高S/N,
低歪みで安定したA/D変換を実現していました。

再生時にはたらくD/A変換部は,18ビットデジタルバイアスD/Aコンバーター+18ビットアクティブD/A
コンバーターで構成された,8倍オーバーサンプリング・フルタイム18ビットの4D/Aコンバーターが搭載さ
れていました。小入力から大入力まで常に18ビットがフル稼働でき,さらにデジタルバイアス動作により,ゼ
ロクロス歪みがなくなり,DAC単体の非直線歪みがランダム化されるため,すぐれた音質を実現していまし
た。
さらに,XD-Z909では,D/Aコンバーターの直前に,ビクター自慢の「K2インターフェース」が搭載されて
いました。「K2インターフェース」は波形伝送を符号伝送に変換して符号外成分だけを取り除くことで信号波
形の純度を高める技術でした。具体的には,半導体の高速スイッチ動作により,デジタル入力信号の符号情
報だけを検出し,符号情報をもとに,別のブロック上に新たなデジタル波形を作り出すことにより,ジッターな
どの影響を受けずに変換出力の精度を高く保つことができるという技術でした。そのために,PLL回路を2つ
搭載し,1stPLL回路が,入力デジタル信号の揺らぎに素早く追従しながらタイミングをとらえクロックデータを
送り,さらに2ndPLL回路が,このデーターをもとに安定した同期信号を作り,マスタークロックとして発振する
仕組みになっていました。このマスタークロックに合わせてもう一度生成され,「K2インターフェース」から出力
されるデジタルデーターは,結果として外乱ノイズが除かれたピュアな信号波形になるというものでした。この
搭載により,より高音質で高精度なD/A変換部となっていました。

XD-Z909の内部

内部のコンストラクションは,各回路間の相互干渉を防ぐために,完全に独立させた5ブロック構造をとっていま
した。A/D・D/A両変換部,メカ部,電源部,信号処理部,ディスプレイなどの表示部を基板ごと,あるいは
シールド構造まで採用して分離し,さらに,ツイン構成の電源トランスを搭載して,アナログ/デジタル回路を
完全にセパレートしていました。
また,振動による悪影響を抑えるために,カセットデッキTD-V931等で採用されている最適なダンピング特性
とヘビーウェイトを実現した「ソリッドベース」をシャーシベースのさらに下に配し,外部から受ける振動を排除し,
内部からの振動も効果的に吸収する構造となっていました。

機能としては,特徴的なものとして,別体構造のマイクアンプと端子が付属していました。マイクアンプはアッ
テネーター(−20dB)も装備された本格的なもので,生録音も可能となっていました。また,再生中のデジタ
ルサウンドにアナログだけでなくデジタル入力信号もミキシングできるデジタルミキシング機構も装備されてい
ました。さらに,滑らかなフェード操作をコンピューターに記憶させたデジタルフェードシステムが搭載され,スイ
ッチ一つで5秒,10秒のフェードイン,フェードアウトが自動的に行え,デジタル入力に対してもフェード機能が
使用できるようになっていました。

以上のように,XD-Z909は,ビクターのDATデッキの最上級機として,優れた基本性能とコンストラクション,
多彩な機能を持った,使いやすい高性能なDATデッキでした。細身にならないしっかりした音は,長時間モード
でも充分実用になるなど,上級機らしさを感じさせるものでした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。


ビクターのダットなら,
21世紀に聴いても,
いい音が変わらない。

K2インターフェース搭載。
デジタル録音のクオリティを
ここまで高めた最上級機。

◎デジタル特有の音質劣化要因を,
 根本から解消するK2インターフェース。
◎アナログ信号にあくまで忠実な
 デジタル変換を行うAAコンバーター。
◎分解能の限界に迫る,
 ニュー8fsフルタイム18ビット4D/Aコンバーター。
◎DATの永遠の音質に相応した
 ファイントラッキング・メカのクオリティ。
◎相互干渉をことごとくシャットアウトする,
 極めて厳格な5ブロック構造。
◎パーツや基板にまで配慮した,
 効率のいい信号伝送&レイアウト設計。
◎ボディをどっしりと守り抜く,
 無共振,無振動設計を追求したソリッドベース。
◎音質を汚す要因,マイコンノイズを排除する,
 FLディスプレイ・オフ機能。
◎別体構造の高性能ローノイズマイクアンプ&端子。
 アッテネーターも装備。
◎音量調整ができる可変出力など,
 豊富なデジタル/アナログ入出力端子。
◎サブコードの操作性を向上させた,
 カンタン便利なオートIDエディット。
◎デジタル入力にも対応,オリジナルテープ制作に
 活かせるデジタルミキシング。
◎ワンタッチで失敗のないフェード操作が楽しめる
 デジタルフェード機能。
◎デジタル入力も録音前にレベルのチェックができる
 サンプリングモニター。
 
●主な仕様●

基本仕様:DAT懇談会のR-DAT規格に準拠SCMS対応
 

■採用モード■

  
録音・再生モード
録音・再生モード 
録音・再生モード 
録音・再生モード 
再生専用モード

48k
44k
32k
32k-LP
44k-WT
テープ速度 8.15mm/秒 8.15mm/秒 8.15mm/秒 4.075mm/秒 12.225mm/秒
録音・再生時間(R-120) 120分 120分 120分 240分 80分
サンプリング周波数 48kHz 44.1kHz 32kHz 32kHz 44.1kHz
量子化ビット数 16ビット直線 16ビット直線 16ビット直線 12ビット直線 16ビット直線

 

■仕様■

チャンネル数 2チャンネル・ステレオ
周波数特性(EIAJ) 48kモード:2〜22,000Hz±0.5dB
44kモード:2〜20,000Hz±0.5dB
32k,32k-LPモード:2〜14,500Hz±0.5dB
SN比(EIAJ,録音・再生) 48kモード:93dB
ダイナミックレンジ(EIAJ,録音・再生) 48kモード:93dB
総合ひずみ率(EIAJ,1kHz,録音・再生) 48kモード:0.003%
ワウ・フラッター 測定限界以下
アクセス時間(EIAJ) 5分間:9.0秒
60分間:34.8秒
早送り・巻戻し時間(R-120テープ) 約60秒
誤り訂正方式 2重リードソロモンコード
入力端子 MIC(φ6.3標準ジャック):1系統0.3mV/10kΩ
                (フルスケール時2.5mV/10kΩ)
                適合インピーダンス600Ω〜10kΩ 
ANALOG(LINE)IN(ピンジャック):1系統63mV/入力インピーダンス25kΩ
                (フルスケール時500mV)
DIGITAL COAXIAL IN(ピンジャック):1系統0.5Vp-p/入力インピーダンス75Ω
DIGITAL OPTICAL IN(光コネクター):1系統−27dBm〜−14dBm           
出力端子 ANALOG(LINE)OUT(ピンジャック):2系統0.3V(フルスケール時2.5V)
                               /出力インピーダンス200Ω(固定)
                            0〜0.3V(フルスケール時0〜2.5V)
                               /出力インピーダンス400Ω(可変)
PHONES(φ6.3標準ジャック):1系統10〜0.15mW/8Ω(フルスケール時10mW/8Ω)
DIGITAL COAXIAL OUT(ピンジャック):1系統0.5Vp-p/出力インピーダンス75Ω
DIGITAL OPTICAL OUT(光コネクター):1系統−21dBm〜−15dVm
その他の端子 コンピュリンク/シンクロ(φ3.5ミニ)
電源 AC100V 50/60Hz共用
消費電力(電気用品取締法基準) 38W
最大外形寸法(足・つまみを含む) 435W×143H×362Dmm
重量 約11.1kg
※本ページに掲載したXD-Z909の写真,仕様表等は1990年6月のVictorの
 カタログより抜粋したもので,ビクター株式会社に著作権があります。したがっ
 て,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられています
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