EXCELIA XK-007
STEREO CASSETTE DECK ¥79,800
1988年に,アイワがEXCELIA(エクセリア)ブランドで発売したカセットデッキ。当時アイワはEXCELIA
(エクセリア)ブランドを展開し,音質重視の高性能なカセットデッキやCDデッキ,DATデッキを発売して
いました。そして,エクセリアブランドのカセットデッキの中でXK-009に次ぐ弟機として発売されたのが
XK-007でした。



走行系は,キャプスタン専用のDCサーボモーター,巻き取りおよびFF/RWD用のDCモーターによる2
モーター構成で,テイクアップ側とサプライ側両方にそれぞれキャプスタンとピンチローラーを配したクロ
ーズドループ・デュアルキャプスタン方式となっていました。キャプスタンは2基のキャプスタンのシャフト
径を変えて共振周波数の重なりを防いだ周波数分離型デュアル・キャプタンとしていました。また,テイ
クアップ側のキャプスタンに独自のマイクロ・グレイン・プロセッシング処理を行い,キャプスタン表面に
微細な粒状加工を行い,テープスリップを防止するアイワ伝統の技術も採用していました。



さらに,音質を汚すファクターのひとつであるカセットハーフの振動を抑えるAMTS(Anti Modulation
Tape Stabilizer)が搭載されていました。非磁性体のアルミ板と無反発性の特殊ゴムの2層構造のカ
セットボックスとし,プランジャーを利用して約1kgの力でカセットハーフを挟みつけるような構造になっ
ており,カセットハーフを点ではなく面でスタビライズする独自の方式で,ハーフの振動を解消し,変調
ノイズの発生の低減,低域のしまり,セパレーションの向上などの効果があるということでした。



ヘッドは,3ヘッド構成で,録再ヘッドは,パーマロイによるコンビネーションタイプのスーパーDXヘッド
が搭載されていました。ヘッド捲線には,純度99.997%,酸素含有量5ppm以下という,OFCや
LC-OFCをも凌ぐデータをもつPC-OCCを使用していました。さらに,ヘッド形状は,コンター効果
に充分留意したアイワ独自の設計となっており,低域のあばれを抑えていました。そして,ヘッドは
30gという重量級の亜鉛ダイキャスト製ヘッドブロックで精密に固定され,微細なヘッド振動を抑えこ
み,変調ノイズの低減を図っていました。さらに,ヘッドブロックには,独自のバイアスシールドがセッ
トされ,録音ヘッドワイヤーからのバイアス洩れを約40dB低減し,再生イコライザーアンプへのバイ
アス混入を防止し,音の純度を高めていました。
消去ヘッドには。ダブルギャップセンダストヘッドを採用していました。通常多くの消去ヘッドではフェ
ライト材が用いられますが,シングルキャプスタンに比べテープテンションが高くテープとヘッドの密
着度の高いデュアルキャプスタンでは,フェライト材の保磁力(Hc=0.1~0.15)に伴う自発磁化
作用で,テープ信号の高域劣化を引き起こす恐れがあるということで,Hcが0.007~0.02と非
常に低いセンダスト消去ヘッドを使用していました。
再生ヘッドからの信号はPC-OCCワイヤを介してダイレクトに再生アンプへ入力され,音質劣化の
要因となるカップリングコンデンサをはじめ,高域での位相ズレをもたらすピーキングコイルを完全
に排除していました。さらに,増幅素子には専用に開発された低雑音・低歪率・高耐圧・高スルーレ
ートデュアル・オペアンプを採用した差動入力DC構成で,強力電源,高精度イコライザ素子と相まっ
て,ダイナミックレンジの拡大と音質の向上を実現していました。

ノイズリダクションは,ドルビーB,Cを搭載していました。さらに,高域信号の量に合わせて録音時
バイアス量を最適状態に可変させるドルビーHXプロを搭載し,優れた高域特性を改善していました。
このドルビーHXプロは,アイワが1983年に国産としてカセットデッキに初搭載したもので,それ以
降国産デッキに広まりました。

その他,機能的には,音質重視デッキらしくシンプルでしたが,音に関わる機能として,録音レベル
バイアスのマニュアル調整機能を搭載していました。発振器等は内蔵されていなかったため,聴感
による調整をするものでした。
表示部は,FL表示による24セグメント×2chのピークホールド付ピークメーターが搭載され,テー
プカウンターは,左右のリール台からのパルスを高速演算してテープ走行量を分・秒単位でデジタ
ル表示するリニア・カウンターが搭載されていました。

以上のように,XK-007は,アイワがエクセリアブランドで発売したカセットデッキの中級機で,上級
機のエッセンスを継承し,アイワが積み上げてきたデッキ技術をしっかりと投入して作り上げられた
コストパフォーマンスにすぐれた1台となっていました。基本に忠実に完成度を高めたその性能は
しっかりとしたものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



A・M・T・S搭載・制振3ヘッドデッキ。
めざしたものはマスターの数値。   

◎音の透明度,音像定位の進化へ。
 PC-OCC捲線3ヘッド。
◎高域のダイナミックレンジ,周波数特性を著しく改善。
 ’83年にアイワが日本で初搭載のドルビーHXプロ。
◎高精度再生へ,差動入力DC構成。
  再生イコライザアンプ。                 
◎高精度録音のために。
  マニュアルキャリブレーション。
◎カウント精度もデジタルの時代へ。
  リニア・カウンター。                   


 

●主な仕様●


ヘッド (再生)PC-OCC巻線スーパーDXヘッド 
(録音)PC-OCC巻線スーパーDXヘッド 
(消去)ダブルギャップセンダストヘッド
モーター DCサーボモーター (キャプスタン専用)×1 
DCモーター (巻取及びFF/RWD専用)×1
ワウ・フラッター 0.025%(WRMS)
±0.045%(W・PEAK)
周波数特性 メタルテープ:(-20dB録音)20~20kHz±3dB
        (0dB録音)   20~17kHz±3dB
CrOテープ:(-20dB録音)20~19kHz±3dB
        (0dB録音)   20~14kHz±3dB 
LHテープ  :(-20dB録音)20~18kHz±3dB
        (0dB録音)   20~11kHz±3dB
SN比 75dB(Dolby C NR ON,メタルテープピークレベル)
寸法 430W×135H×420.7Dmm
重量 8.1kg
 ※本ページに掲載したXK-007の写真,仕様表等は1988年6月のAIWAのカタログ
 より抜粋したもので,アイワ株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等
 を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。     
    

 
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