XL-A700の写真
PIONEER  XL-A700
DIRECT DRIVE FULL AUTO PLAYER ¥79,800

1977年にパイオニアが発売したフルオートプレーヤーシステム。この当時,国産プレーヤーの主流は
ダイレクトドライブ方式になり,さらに各社とも水晶制御技術を取り入れたクォーツロック方式の採用が
見られるようになっていました。このXL-A700は,中級機ながらダイレクトドライブ,クォーツロック方式
のプレーヤーとしては初のフルオートプレーヤーとして登場しました。

ターンテーブルは,直径32.4cm,慣性質量340kg-cm2の アルミダイキャスト製で,この重量級ターン
テーブルを2/3回転以内で定速回転させる,起動トルク1kg-cmの高性能ブラシレスDCサーボホール
モーターを搭載していました。このモーターは,磁極切換(スイッチング)機構にホール素子を応用したも
ので,従来DCモーターで必要であったブラシ,コミュテーターを用いておらず,ブラシによる機械的スイッ
チングに比べて低振動,高S/N比,高耐久性を実現していました。ホール素子は,固体(半導体薄膜)
に電流を流し固体表面に対し垂直に磁界を加えたとき、電流方向及び磁界方向それぞれに垂直な方向
に電圧が発生するという原理(ホール効果)を利用した磁気量を電気量に変換することができる素子で,
現在でも CD−ROM、DVD用などの小型高性能モーター等に使用されている技術です。パイオニアは
1969年に他社に先駆けて真空蒸着による量産化技術を確立し,ホールモーターを開発,翌1970年
には,このホール素子を用いたホールモーターの商品化を実現していました。その意味でも,このブラシ
レスDCサーボホールモーターはパイオニアにとってお家芸であったともいえるのでしょう。

XL-A700のホールモーター

モーターの回転を制御するサーボ回路に,この時代ではまだ少なかったQuartz PLL(位相制御方式)を
採用していた点がXL-A700の大きな特徴でした。モーターの回転軸に取り付けられたジェネレーター(発
電機)の出力パルスと基準信号発振器のパルスを比較し,位相差を検出することによってモーターの回転
数を制御するものですが,基準信号発振器に高い精度を持つ水晶発振器を用いることにより,より高精度
な制御が行われるようになっていました。
クォーツPLLによって制御される駆動回路は,正方向と逆方向に動作する両方向駆動回路で,モーターの
回転が速くなっても遅くなっても素早く応答でき,45rpm,33・1/3rpmの切換時にも,サーボがかかって
素早く定速回転に入れるようになっていました。
クォーツPLLによって制御を行う回路は,従来のものに比べて10数倍の複雑な回路が必要となるため,
XL-A700では,IC化が図られ,駆動回路用にはバイポーラ型ICが,制御回路用にはMOS型ICが採用さ
れ,安定性と信頼性を確保していました。
サーボ回路には,精度の高いCR発振器が内蔵され,クォーツロックをOFFにしたときも,PLLが働くため
回転数微調整時にも耐負荷特性,耐ドリフト特性が働き,±6%の範囲でレコードのピッチ調整ができる
ようになっていました。

ターンテーブル外周には,ストロボ溝が刻まれていますが,1本溝となっていました。それまでの通常のスト
ロボライトは家庭用AC電源の周波数を分周して照射するため,ストロボ溝が回転数毎,電源周波数毎に
必要で4本となっていましたが,XL-A700のストロボライトは,水晶振動子の発振周波数を分周して点灯す
るため,電源周波数の変動の影響を受けず,回転数変更時にも分周比率を変えることによって1本溝を
可能としていました。

上部から見たXL-A700

トーンアームは,237mmと長い有効長をもつS字型パイプアームで,垂直・水平方向にアンギュラコンタクトベアリ
ング(かなり精度が高く高価なものらしいです。現在でも軸受けの精度と強度が必要な機械類に使われているよう
です。)を採用し低い摩擦により高い感度を得ていました。ヘッドシェルもアルミ合金製のしっかりしたものが搭載さ
れていました。アームの取付ベースには,充分な強度を持った6tアルミパネルを使用し,キャビネット内側からも厚
肉鋼板(厚さ6mm,重量700g)で補強した超低域再生にも耐える強度の高い作りとなっていました。
また,アルミダイキャストフレーム,チタンパイプカンチレバー,高エネルギー希土類マグネット,特殊ダイヤモンド針
(0.5mil)のMM型カートリッジPC-330U(¥10,000)が付属していました。

XL-A700の特徴はフルオートタイプのプレーヤーであることですが,アームの駆動用には,ターンテーブルの駆動
とは別に,アームのオート動作専用の精密ギヤモーターが搭載され,回転系への負荷がなく,信頼性と耐久性を高
めていました。リターン検出機構には,従来多く採用されていたメカニカル方式ではなく,LEDとフォトトランジスター
を組み合わせた新開発の光学式速度検出機構を採用していました。完全無接触方式により,アームの感度の悪化
を防ぎ,リターン検出時の負荷を0にしていました。

XL-A700のリターン検出機構PC-330Uの写真
XL-A700の内部

キャビネットは,適度な内部損失を持った硬質合板を組み合わせた高密度モノコック仕様となっていました。モーター
本体,フルオートメカ,トーンアームなどは剛性の高いアルミダイキャスト製フレームにがっちり固定されていました。
このダイキャストフレームと高密度モノコック仕様キャビネットを組み合わせることで,ハウリングや共振を抑えたしっ
かりとしたキャビネットを実現していました。また,木目調の外観以外に,メタリックスター調子上げのXL-A700Sも
ラインナップされていました。
キャビネット下部には,特殊ゴムとダイキャストソリッドを組み合わせた大型インシュレーターが装備され,高さ調整
水平度調整(インシュレーター1回転につき0.5mm可変)も可能となっていました。

以上のように,XL-A700は,プレーヤーとしての基本性能がしっかりとしたフルオートプレーヤーで,使い易い大き
さにバランスよくまとめられた中堅機でした。

XL-1550の写真
PIONEER XL-1550
DIRECT DRIVE PLAYER ¥59, 800

XL-1551の写真
PIONEER XL-1551
DIRECT DRIVE PLAYER ¥63,000

XL-A700よりわずかに先行して,フルオート機構を搭載しないマニュアルプレーヤーXL-1550(木目調仕上げキャ
ビネット),XL-1551(メタリックスター調子上げ・クィックストップ機構付)が発売されており,こちらもプレーヤーとして
ターンテーブル部はほぼ同等の内容を持っていました。パイオニアのプレーヤー技術はこれらの機種の後,クォーツ
ロックDDプレーヤーに広く展開していくこととなりました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介しま す。



Quartz PLL採用。
すぐれた耐負荷特性・
ドリフト特性を実現。
新開発光学式リターン検出機構
(電子式)を採用したフルオート機。


◎回転数の検出が素早く正確な,
 QuartzPLL(位相制御方式)を採用。
◎水晶が発振する高い周波数精度を応用し
 た,基準信号発振器を内蔵。
◎IC化された制御回路・駆動回路。性能の
 安定性・信頼性の向上を果たしています。
◎モーターの回転速度が早くなったとき,素早
 く制御できる両方向駆動回路。
◎すぐれた耐負荷特性とドリフト特性。これも
 クォーツPLL採用による成果です。
◎回転ムラ0.025%以下(WRMS),S/N62dB
 以上(JIS)。エレクトロニクス技術による精
 度の追求が,すぐれた基本性能として結実。
◎調整が容易な1本ストロボ。縞目が見や
 すい波形整形回路を採用しました。
◎速度微調整機構は,内蔵CR発振器による
 PLL制御。音楽のピッチ合せが確実に,
 しかも容易に行えます。
◎トルクの大きいダイレクトドライブモーターを
 採用。2/3回転以内(331/3rpm)で定速に達
 するすぐれた起動特性です。
◎トーンアーム駆動用に精密ギヤモーターを使
 用したフルオート機構(クィックプレイ機能付)
◎リターン検出機構にLED(発光ダイオード)
 とフォトトランジスターを採用した光学方式。>
 検出時の負荷を”0”にしました。
◎有効長が長く(237mm)追随性にすぐれた,
 S字型パイプアーム。アーム取付けベースの
 強度を高めた音質重視構造です。
◎カートリッジはチタンパイプカンチレバー使用
 のPC-330/U。忠実度の高いクリアーな音質。
◎ハウリングを確実に防止し,高性能駆動部
 をしっかり支えるアルミダイキャストフレームと
 高密度キャビネット。
◎すぐれた駆動部・トーンアームにふさわしい付
 属機構。


●XL-A700,XL-A700Sの仕様●



<フォノモーター部>

型式
Quartz PLLダイレクトドライブ・フルオートプレーヤー
モーター
Quartz PLL・ホールモーター
ターンテーブル
324φmm,アルミダイキャスト(慣性質量340kg-cm2)
回転数
33・1/3rpm−45rpm
回転数微調整範囲
±6%
回転ムラ
0.025%以下(WRMS)
S/N
62dB以上(JIS),70dB以上(DIN-B)
負荷変動
0%(針圧120g以内)
起動特性
2/3回転以内
回転数偏差
0.003%以下
ドリフト
時間ドリフト:0.0003%/h以下
温度ドリフト:0.00004%/℃以下



<アーム部>

型式
スタティックバランスS字型パイプアーム
実効長
237mm
オーバーハング
15mm
適合カートリッジ自重
4〜13.5g(9.0g以上サブウェイト使用)
高さ調整範囲
±5mm



<付属カートリッジ>

型番
PC-330/U(MM型),交換針PN-330/U
構造
シールドケース:スーパーパーマロイ
フレーム:アルミ合金ダイキャスト
針先
0.5mlダイヤモンド
振動系実効質量
0.45mg
使用針圧範囲
1.0〜1.8g(1.5g適正)
周波数特性
10〜28,000Hz(±3dB)
チャンネルセパレーション
25dB以上(1kHz)
20dB以上(100〜10,000Hz)
出力電圧
3mV(1kHz50mm/secRMS)
出力バランス
1dB以内(1kHz)
ダイナミックコンプライアンス
12×10−6cm/dyne (100Hz水平垂直)
スタティックコンプライアンス
18×10−6cm/dyne (光学式)
出力インピーダンス
2,000Ω(1kHz)
負荷抵抗
30〜250kΩ(適正47kΩ+170pF)
自重
6.4g
寸法
14.8W×29L×17Hmm
取付寸法
JIS及びEIA規格



<その他>

オート機能
専用ACギヤモーター使用フルオート
(マニュアル,クィックプレイ可)
オートリードイン/オートリターン/オートカット/リピート
使用半導体
IC×4,トランジスタ×9,ダイオード×12
ホール素子×3,LED×1,フォトトランジスタ×1
付属機構
アンチスケーティング,ラテラルバランサー,針圧直読ウェイト
アーム高さ調整機構,アームエレベーション
ヘッドシェルスタンド(EPアダプター受共用),ストロボ照明ランプ
フリーストップヒンジ,高さ調整機能付インシュレーター
供給電圧
100V,50/60Hz兼用
消費電力
10W
外形寸法
490W×200H×390Dmm
重量
13.5kg







●XL-1551/XL-1550の仕様●



<フォノモーター>

モーター
Quartz PLL・ホールモーター
駆動方式
ダイレクトドライブ
ターンテーブル
324φmm,アルミダイキャスト
ターンテーブル慣性質量
340kg-cm2
回転数
33・1/3rpm−45rpm
回転数切換
電子式
回転数微調整範囲
±6%
回転ムラ
0.025%以下(WRMS)
S/N
62dB以上(JIS),70dB以上(DIN-B)
負荷変動
0%(針圧120g以内)
起動特性
2/3回転以内
回転数偏差
0.003%以下
ドリフト
時間ドリフト:0.0003%/h以下
温度ドリフト:0.00004%/℃以下



<トーンアーム>

型式
スタティックバランスS字型パイプアーム
実効長
221mm
オーバーハング
15.5mm
適合カートリッジ自重
4〜14.5g(9.5g以上サブウェイト使用)
高さ調整範囲
±5mm



<カートリッジ>

形式
PC-330/U(MM型)
交換針
PN-330/U
構造
シールドケース:スーパーパーマロイ
フレーム:アルミ合金ダイキャスト
針先
0.5mlダイヤモンド
カンチレバー
チタンパイプ
適正針圧
1.0〜1.8g(1.5g適正)
周波数特性
10〜28,000Hz(±3dB)
出力電圧
3mV(1kHz50mm/secRMS)



<付属機構・その他>

使用半導体
IC×4,トランジスタ×9,ダイオード×12
ホール素子×3,LED×1,フォトトランジスタ×1
付属機構
アンチスケーティング,ラテラルバランサー,針圧直読ウェイト
アーム高さ調整機構,アームエレベーション
クィックストップ機構(XL-1551のみ)
ヘッドシェルスタンド(2個),ストロボ照明ライト
フリーストップヒンジ,高さ調整機能付インシュレーター
供給電圧
100V,50/60Hz兼用
消費電力
5W
外形寸法
490W×185H×390Dmm
重量
12kg

※ 本ページに掲載したXL-A700,XL-A700S,XL-1551,XL-1550の
 写真・仕様表等は1977年4月のPIONEERのカタログより抜粋したもので,
 パイオニア株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を
 無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意くだ
 さい。

 
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