Victor XL-V1100
COMPACT DISC PLAYER ¥150,000ビクターが1986年に発売したCDプレーヤー。発売当初からCDの分野では比較的地味な存在であった
ビクターが発売した一体型の高級機で,外観はそれほど特徴的ではありませんが,中身の充実したコスト
パフォーマンスに優れた1台でした。XL-V1100の最大の特徴は,一体型の中でD/A分離を徹底した2ボックスコンストラクションでした。これ
以降同社のCDプレーヤーは,光伝送も取り入れ,D/A分離構造を特徴としていきますが,その原器ともい
えるのがこのXL-V1100でした。
キャビネット内部が前後に仕切られており,後部の1/5くらいのところが別ケースになっていて,オーディオ
系が納められ,アルミ板でシールドされた前部がデジタル部と,電源部,プレーヤーメカニズム部となってい
ました。前部も,中央を銅メッキされたシールド板が設けられ,前後と底板を連結し,全体の構造強度を高め
た構造になっていました。底板は,両面に銅メッキが施された厚い鉄板で,複雑な断面形状を持つ6mm厚
のアルミ製側板,Pタイルによるダンプが施された3mm厚アルミ製の天板と合わせて振動の影響を受けない
頑丈な筐体となっていました。
電源部は,23.5VAの大型の電源トランスが搭載され,電源回路も,オーディオ系,デジタル系,サーボ系
の3つに分離独立され,相互の干渉を抑えていました。
回路基板もシールドを兼ねた両面基板で,上層箔をアースに利用してわずかなクロストークや外来ノイズも
排除する仕組みになっていました。内部に使用されているビスも振動減衰や非磁性化などの面で銅メッキが
施されたものが大量に用いられていました。D/Aコンバーター部には,当時最新の4倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターを搭載し,D/Aコンバ
ーターには16ビット直線のマルチビットタイプを左右独立で搭載していました。電流伝送方式の採用により
デジタルノイズも少なくなっていました。CDドライブメカは,ピックアップ部や回転系をがっちり固定した制振材メカベースをフローティングさせて外来
振動を排除したビクター自慢のIS(Independent Suspension)フローティングメカにズムに支えられた,
ハイプレシジョン3ビームピックアップを搭載していました。サーボ系は,高感度な振動検出素子Vセンサー
を用いたビクター独自のVサーボを採用していました。これは,振動検出素子が振動を感知したときだけ,た
だちにサーボを強める方式で,余分なサーボ電流による悪影響を抑えるというものでした。以上のように,XL-V1100は,派手ではないものの,ビクターらしくオーソドックスに音質を追求した高級機
でした。その比較的スリムな筐体から,厚みと力のあるダイナミックな音を聴かせてくれた実力機でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎2ボックス構造で音の独立宣言,
シールド配置されたオーディオ系。
◎4倍オーバーサンプリングの
高性能デジタルフィルター。
◎ハイプレジション・ピックアップと
Vサーボで外乱に強い高安定トレース。
周波数特性 | 2〜20,000Hz |
全高調波歪率(1kHz・EIAJ) | 0.0025% |
ダイナミックレンジ(1kHz・EIAJ) | 97dB |
SN比(デジタル・ゼロ時・EIAJ) | 100dB |
ワウ・フラッター | 測定限界以下 |
出力レベル(フル・スケール) | 2.0Vrms(FIX) |
D/A変換 | 16ビット直線 |
操作機能 | 15曲ランダムプログラム,曲番およびインデックス頭出し
曲番およびインデックス・スキップ,マニュアルサーチ(リモコン2速度) リピート(全曲,A−B間,プログラム・リピート),ポーズ,イントロスキャン タイマープレイ |
リモコン機能 | トレイのOPEN/CLOSE,音量調整(可変出力およびヘッドホン出力) |
ディスプレイ | 8ケタ大型FLによるトラックNo.,時間,インデックス,プログラム等の表示
20曲プログラムチャート |
ディスク・ローディング | センターホールド方式による水平ローディング |
その他 | ボリューム付きヘッドホン端子,(リモコン対応),シンクロ端子(2出力タイプ)
GMD(グランド)端子,リモコン送信機RM-SX1100付属 |
電源 | AC100V(50/60Hz) |
消費電力 | 18W |
外形寸法 | 435W×100H×380Dmm |
重量(本体) | 10kg |
※本ページに掲載したXL-V1100の写真・仕様表等は1987年2月の
Victorのカタログより抜粋したもので,日本ビクター株式会社に著作権
があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をするこ
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