Victor XL-Z1000A
COMPACT DISC PLAYER ¥800,0001988年にビクターは,超弩級のセパレート型CDプレーヤーXL-Z1000+XP-DA1000を発売し
ました。その改良モデルにあたるのがXL-Z1000A+XP-DA1000Aで,1993年に発売されまし
た。超弩級と呼ぶにふさわしいその技術と内容は,一体化モデルにも受け継がれ,ロングセラーを
続けていきました。CDトランスポート部にあたるXL-Z1000Aは,徹底した振動対策をはじめとして正確な信号ピックア
ップと信号伝送をめざした凝りに凝った内容を持ったものでした。
XL-Z1000Aでは,ピックアップの振動を抑えるために「重心点保持機構」を採用していました。これ
は,振動の低減を構造から見直したもので,ピックアップがディスクの内周側にあるときのレンズ位置
をメカベースの重心上に配置し,さらに,外周上にあるときは筐体を支えるインシュレーターの重心と
一致させる設計により,ピックアップが構造的に最も振動の影響の少ないラインをトレースするように
なっていました。CDトランスポートは,トレイからの振動の悪影響をさけるために,トレイを廃したトップローディング方式
を採用していました。そのうえに,11mm厚のガラストップを使用し,気密性を上げ,その重量とともに
振動の影響をより抑えていました。また,大型のディスクスタビライザーを標準装備して,ディスク保持
の安定を図り,オプションでさらに大口径のものを用意するなど,クランパーの違いによる微妙な音の変
化を楽しめるようになっていました。メカニズムの振動の発生を抑えるために,メカベースに分厚い高剛性アルミ材を,さらにその下を鋳
物製の強固なシャーシベースで支える強固なコンストラクションを採用していました。また,スピンド
ルは,プロ用と同等の直径6mmの極太型で,軸受けにはサファイアを使って経年変化による性能
劣化を防いでいました。さらに,メカベースとシャーシベース間には,オイル,スプリング,ゴムを組み
合わせた特殊なインシュレーター配され,徹底した振動対策が行われていました。ピックアップのトラッキングには,当時一般的だったリニアモーター方式を採用せず,コッキングを抑
えるためにシンプルなベルトドライブ方式を採用していました。また,モーターはフローティングされ,
ピックアップへ直接影響する振動も追放していました。サーボ回路には,振動や音圧を受けたとき
のみゲインを上げる「Vサーボ回路」を搭載し,安定したトレース性能と高音質を両立させていまし
た。各主要ユニットは,銅メッキ処理を施した専用ケースに収めることで,磁気シールドし,迷走電流によ
る悪影響をなくしていました。さらに,マイコンノイズによる音質劣化や回路間の相互干渉を排除する
ため,FLディスプレイや不使用回路の停止機能を充実していました。端子板やリアパネルと別構造
として渦電流を追放し,PCOCC信号ラインなど高音質へのこだわりが隅々に見られました。
電源部は,安定化電源のための大容量トランスをデジタル系とサーボ系それぞれに完全に独立して
搭載し,相互干渉の追放を図っていました。トランスは,ノイズを抑えるバイファイラ巻,振動を抑える
珪砂入樹脂含浸とし,銅メッキベースにマウントし,インシュレーターを介してシャーシベースに取り付
けられるという凝りようでした。
Victor XP-DA1000A
DIGITAL TO ANALOG CONVERTER ¥600,000D/AコンバーターのXP-DA1000Aの特徴は,「K2インターフェース」の搭載にありました。デジ
タル信号の波形伝送において,ジッター(時間差歪)やリップル(波形歪)などの外乱ノイズが波形
に付加されることが大きな問題としてあります。「K2インターフェース」は波形伝送を符号伝送に変
換して符号外成分だけを取り除くことで信号波形の純度を高める技術でした。具体的には,半導体
の高速スイッチ動作により,デジタル入力信号の符号情報だけを検出し,符号情報をもとに,別の
ブロック上に新たなデジタル波形を作り出すことにより,ジッターなどの影響を受けずに変換出力の
精度を高く保つことができるという技術でした。
XP-DA1000Aにはマスタークロック生成用の基準水晶発振器を置き,K2インターフェース回路を
制御することにより,きわめて正確な符号検出を可能にしていました。さらにXL-Z1000Aとの組み
合わせでは,「ジェネレーター・ロック方式」をとることにより,この高精度なマスタークロックをシンク
ロ端子からXL-Z1000Aに供給することで,デジタル信号のピックアップまでも制御し,完全同期
をはかることができました。
K2インターフェースへ伝送される符号データはデジタル伝送で,符号のタイミングを制御する時間
データはアナログ伝送であり,1本のラインで送ると干渉を生じるため,XP-DA1000Aでは,入力
デジタル信号を符号データと時間データに分離し,2本の光ケーブルで伝送するようになっていまし
た。しかも光ケーブルを螺旋状に設置して,高次の反射モードも減衰させるようにしていました。D/Aコンバーターには,当時すでに主流になっていた1ビットタイプではなくあえてオーソドックスに精
度を高めた8倍オーバーサンプリング・デジタルフィルターを使用したマルチビットタイプを搭載していま
した。精度の追求の困難な下位ビットをディスクリート構成とし,L/R独立させた合計4つのコンビネ
ーションDACで,ゼロクロス歪みを抑えていました。さらに,1台1台入念にビット調整を行い,実動作
上フルタイム20ビットを達成して,再量子化ノイズを低減していました。D/Aコンバーター出力は,
S/Nに優れた電流伝送方式を採用し,I/Vコンバーターは超高速変換タイプで,動作点を入念に調
整し,バラツキのない高性能を実現していました。ドライバーアンプは,高速増幅回路により10Wパワ
ーアンプ並の出力を持つ余裕の設計で,さらに,信号ラインにはPCOCCを使用していました。内部のコンストラクションは,各回路ごとの干渉を徹底的に抑えるためシールドがしっかり行われた設
計で,デジタルI/O基板,K2インターフェースのデジタル信号処理部とアナログ信号処理部,デジタ
ルフィルター,D/Aコンバーター,それに3つの電源部を構造的に分離し,明確に独立させた8ブロッ
クコンストラクションになっていました。それぞれの回路は,純銀皮膜のケースでシールドされ,デジタ
ルノイズの漏洩や電源リークなどを徹底的に排除した通信機グレードのシールド構造となっていました。
リアの端子板も,渦電流の排除のため,リアパネルとは別構造となっていました。振動の排除につい
ては,各ブロックごとに独立して最良の構造で対処されていました。,デジタル,K2,アナログ回路は
すべて特殊な振動減衰素材でフローティングマウントされ,トランス自体が振動する電源部は,トラン
スを強固なりジッド構造でおさえつけた上でフローティングされていました。
また,電源部からの相互干渉を防ぎ,安定した電源供給をはかるために,電源部は,入力のエンコー
ダー部,デコーダー部,アナログ部に専用電源を配し,それぞれ独立したトランスまで搭載した分離設
計が採用されていました。以上のように,ビクターの歴代最上級機でセパレート型CDプレーヤーであるXL-Z1000A+XP-DA
-1000Aは洗練されたシンプルで上品な外観に,凝りに凝った構造と回路を内蔵し,ビクターらしい中
庸で音楽を楽しく聴かせる音を持った名機でした。ここで開発された技術やノウハウは一体化モデルの
XL-Z900やその後継機,また,D/AコンバーターXP-DA999などに生かされていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
XL-Z1000A
不動の信念。
不動のコンストラクションを介して,
音楽の最後の一粒までも拾いあげたい。
◎完全同期へ。XP-DA1000A
ジェネレーターロック方式。
◎構造的な無振動・無共振設計を
初めて採用した,重心点保持機構。
◎音に捧げた,トップローディング。
◎強固なアルミメカベースとシャーシー
ベース,6φの極太スピンドル。
◎コッキングレス,ベルトドライブ・
トラッキング方式。
◎高音質へ配慮,
コンストラクション&パーツ。
◎完全分離,2電源トランス構成,
独立電源回路。
◎正確なデジタル伝送のための端子。
◎タイムサーチ付多機能リモコン。
◎デジタル歪の根本的解消。
K2インターフェース。
◎完全同期への対応。
◎デジタル信号は
1ラインでは正しく送れない。
◎8fsフルタイム20ビット・
コンビネーション4DAC
◎8ブロックコンストラクション
◎4系統デジタル入力,バランス/アンバランス・
アナログ出力,光/同軸同期端子。
◎フローティング&リジッド構造。
◎完全独立3電源。
■XL-Z1000A■
型式 | コンパクトディスク・デジタルオーディオシステム |
ディスク | コンパクトディスク |
読み取り方式 | 非接触光学読み取り(半導体レーザー使用) |
レーザー | GaAlAsダブルへテロダイオードλ=780nm |
回転数 | 約500rpm〜200rpm(CLV) |
デジタル出力端子 | 光(ST)=光波長/875nm 同軸(BNC)=最大出力レベル/0.5Vp-p |
同期入力端子 | 光(TOS),BNC |
消費電力 | 11W(電気用品取締法基準) |
寸法/重量 | W471×H126×D403mm/19.0kg |
■XP-DA1000A■
周波数特性 (CD,AUX1/2,DAT) |
5〜20,000Hz±0.15dB |
全高調波歪率 (CD,AUX1/2,DAT) |
0.002%以下(20〜20,000Hz,EIAJ) |
S/N | 112dB(デジタル ゼロ時,EIAJ) |
ダイナミックレンジ | 100dB(EIAJ) |
セパレーション | 100dB以上 |
対応サンプリング周波数 | 32kHz,44.1kHz,48kHz(自動切換) |
アナログ出力レベル | 5V(バランス),2.5V(アンバランス) |
消費電力 | 40W(電気用品取締法基準) |
寸法/重量 | W471×H126×D403mm/18.0kg |
XL-Z1000
精緻な演奏。
精密さと厳格さをつくして,
音楽の最後の一粒までも拾いあげたい。
◎完全同期へ。XP-DA1000A
ジェネレーターロック方式。
◎初めての重心点保持機構。
構造的に無振動・無共振設計を追求。
◎音に捧げた,マニュアルローディング。
◎最大厚12mmのアルミメカベース,
6φの極太スピンドル。
◎コッキングレス,ベルトドライブ・
トラッキング方式。
◎高音質へ配慮,
コンストラクション&パーツ。
◎完全分離,2電源トランス構成,
独立電源回路。
◎タイムサーチ付多機能リモコン。
◎デジタル歪の根本的解消。
K2インターフェース。
◎完全同期への対応。
◎デジタル信号は
1ラインでは正しく送れない。
◎8fsフルタイム20ビット・
コンビネーション4DAC
◎8ブロックコンストラクション
◎4系統デジタル入力,バランス/アンバランス・
アナログ出力,光/同軸同期端子。
◎フローティング&リジッド構造。
◎完全独立3電源。
型式 | コンパクトディスク・デジタルオーディオシステム |
ディスク | コンパクトディスク |
読み取り方式 | 非接触光学読み取り(半導体レーザー使用) |
レーザー | GaAlAsダブルへテロダイオードλ=780nm |
回転数 | 約500rpm〜200rpm(CLV) |
デジタル出力端子 | 光(EIAJ)=光波長/875nm 同軸(ピンジャック)=最大出力信号レベル/0.5Vp-p |
同期入力端子 | 光(EIAJ),BNC |
消費電力 | 11W(電気用品取締法基準) |
寸法/重量 | W471×H126×D403mm/19.0kg |
周波数特性 (CD,DBS,AUX1/2,DAT) |
5〜20,000Hz±0.15dB |
全高調波歪率 (CD,DBS,AUX1/2,DAT) |
0.002%以下(20〜20,000Hz,EIAJ) |
S/N | 112dB(デジタル ゼロ時,EIAJ) |
ダイナミックレンジ | 100dB(EIAJ) |
セパレーション | 100dB以上 |
対応サンプリング周波数 | 32kHz,44.1kHz,48kHz(自動切換) |
アナログ出力レベル | 2.5V(バランス,アンバランス) |
寸法/重量 | W471×H126×D403mm/18.0kg |
※本ページに掲載したXL-Z1000A+XP-DA1000A及び
XL-Z1000+XP-DA1000の写真・仕様表等は1993年
7月のVictorのカタログより抜粋したもので,日本ビクター
株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等
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