XL-Z505の写真
Victor  XL-Z505GM
COMPACT DISC PLAYER ¥59,800

1990年にビクターが発売したCDプレーヤー。ビクターは,アナログプレーヤーの分野では,優れた製品を
多く輩出し,ブランドイメージも確立されていましたが,CDプレーヤーの分野では,すぐれた技術と音質をもっ
た製品を出していましたが,比較的地味な存在となっていました。そんな中,ビクターが,手頃なエントリーク
ラスの中級機ともいえるモデルに持ち前の技術を思い切って投入し,デザインイメージも大きく変えて作り上
げたのがXL-Z505でした。

XL-Z505には,「K2インターフェース」が搭載されていました。「K2インターフェース」は,デジタル信号の波
形伝送において問題となる,ジッター(時間差歪)やリップル(波形歪)などの外乱ノイズが波形 に付加される
ことを防ぐために,波形伝送を符号伝送に変換して符号外成分だけを取り除くことで信号波形の純度を高め
る技術でした。具体的には,精密なマスタークロックに制御された検出回路によって,デジタル入力信号の符
号情報だけを検出し,符号情報をもとに,別のブロック上に新たなデジタル波形を作り出すことにより,ジッター
などの影響を受けずに変換出力の精度を高く保つことができるという技術でした。この「K2インターフェース」
により,次段のD/Aコンバーターへの信号や光及び同軸のデジタル出力を高純度なものに保つことができる
ようになっていました。

K2インターフェスICK2インターフェース構成図

D/Aコンバーターには,ビクター独自の「DD(Digital Direct)コンバーター」が搭載されていました。「DD
コンバーター」は,1ビットD/Aコンバーターで,基本構成はMASH方式に近いものでした。8倍オーバーサ
ンプリングデジタルフィルターが搭載され,その後段のノイズシェイピングはビクター独自の「VANS(Victor
Advanced Noise Shaper)方式」となっており,従来は3次までが限度とされていたノイズシェイピングの
次数を4次に上げることで,データの精度をより高めていました。
また,ビット圧縮されたデータをパルス波に置き換えるパルス幅変調には「PEM(Pulse Edge Modula-
tion)回路」が搭載されていました。「PEM回路」は,パルス変調器を並列で2つ搭載しており,2つのパルス
波を作り出し,その差を出力とすることで高い分解能と精度を得ようとするものでした。クロック周波数は,
MASHの約半分の16MHzで,中庸を得た設計のバランスのとれたD/Aコンバーターであったと思います。
さらに,「K2インターフェース」と「DDコンバーター」は,精密なファインクロック・ジェネレーターから,同期信
号の供給を受けるようになっており,さらに変換精度が高められていました。

DDコンバーターDDコンバーターダイアグラム

内部構成も伝送ロスを排除するために,アナログ,デジタルとも信号経路を,信号の流れに沿った最短かつ
効率の良いレイアウトがとられ,各回路間の相互干渉を排除するための分離構造にも配慮されたものとなっ
ていました。特にFLディスプレイから洩れるマイコンノイズに対しては,このクラスで初めて本格的なシールド
パネルが設置されていました。また,電源部も,デジタル/アナログ分離が徹底されていました。

XL-505の内部
ラダーフレームシャーシアークベース

ディスクをドライブする回転系を本体の重心点付近に配したセンターメカが採用されていました。構造的に
共振や振動の少ない位置に配置することで,精密なピックアップ動作も確保しようというものでした。さらに
共振を排除するために,シャーシベースには厚さ1.6mmの鋼板をフレーム構造で曲げ剛性を強化したラ
ダーフレームシャーシが開発,採用されていました。
強靱なラダーフレームシャーシの上には,さらにメカアークベースを介してピックアップ系が搭載されていま
した。高振動減衰率をもつ発泡高比重樹脂を用いて堅牢な構造としたアークベースは,シャーシの振動を
ピックアップ部に伝えないためのものでした。
シャーシ上部にはトップカバービームが配置され,天板の鳴きを防ぎ,フロントパネルとリアパネルをガッチ
リと補強して強固な箱型構造が実現されていました。

プログラム演奏機能として,32曲ランダムプログラム,ランダムプレイ,リピート(1曲,全曲,プログラム)
が搭載されているほか,テープ等への録音時に指定時間内に収めるためのオートエディット(マイコン任せ
で曲順通りにワンタッチ編集)やプログラムエディット(好みの曲順でプログラムできるラクラク編集)が搭載
されていました。
FLディスプレイは,ディスクトレイを挟んで,カウンターと20曲プログラムチャートが左右に独立して配置さ
れていました。ディスプレイのマイコンノイズの発生を防ぐために,ディスプレイのON/OFFは2系統別々に
可能になっており,明るさが選択できるディマースイッチも装備されていました。

XL-Z505は,当時のビクターのAVアンプに合わせたガンメタリックのモデルに加え,ブラックパネルのモデ
ルもありました。

XL-Z505ブラックカラー・バージョン
Victor XL-Z505
COMPACT DISC PLAYER ¥59,800

以上のように,XL-Z505は,手頃な中級機ながらビクターの主力モデルとして,力の入った設計がされた
コストパフォーマンスにすぐれた実力派のCDプレーヤーでした。薄型の筐体からは,土台のしっかりした力
強い音が再生され,ビクターらしい音楽を楽しく聴かせる1台でした。実際,当時の評価も高く,2年連続で
このクラスのベストバイモデルにも選ばれたほどでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



メカアークベース採用のセンターメカ,
K2インターフェース&DDコンバーター,
ファインクロック・ジェネレーターの競演。
ニューテクノロジーが,
ここまで高音質に磨きをかけた。


◎デジタル出力のクオリティを飛躍させた
 ファインデジタルアウト回路。
◎理想のデジタル伝送を実現する
 K2インターフェース。
◎DDコンバー ターにより,アナログ出力も高音質。
◎相互干渉や伝送ロスを追放するD/A分離&
 最短伝送経路。
◎振動や共振の最も影響の重心点に,回転系を
 配置したセンターメカ。
◎分厚い鋼板と効 果的なフレーム構造の
 ラダーフレーム シャーシ。
◎振動や音圧を回転系に寄せつけない
 メカアークベー ス。
◎天板の鳴きを抑え,本体の補強にも貢献する
 トップカバー ビーム。
◎2モードのテープ編集が楽しめる
 エディティング・ システム。
◎明るさを変えたり消灯もできる,2系統
 FLディスプレイ。





●主な仕様●

周波数特性 4〜20,000Hz
全高調波歪率(1kHz・EIAJ) 0.0017%以下
ダイナミックレンジ(1kHz・EIAJ) 100dB
SN比(デジタル・ゼロ時・EIAJ) 110dB
チャンネルセパレーション(EIAJ)
110dB以上
電源 AC100V(50/60Hz)
消費電力 15W
外形寸法 435W×115H×345Dmm
重量(本体) 7.6kg


※ 本ページに掲載したXL-Z505の写真・仕様表等は
 1990年12月のVictorのカタログより抜粋したもので,
 日本ビクター株式会社に著作権があります。したがって
 これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律
 で禁じられていますので,ご注意ください。

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