Victor XL-Z531
COMPACT DISC PLAYE ¥59,800 
1989年に,ビクター(現JVCケンウッド)が発売したCDプレーヤー。1982年にスタートしたCDは,1986年
頃になると,各社がオーディオ機器の売れ筋価格帯の598クラスに力の入ったコストパフォーマンスにすぐれ
たモデルを投入し始め,競争が激化していきました。そうした中,ビクターも,1987年のXL-Z511,1988年
のXL-Z521と,発売したモデルが人気となり,その後継機として発売されたのがXL-Z531でした。

XL-Z531には,ビクター自慢の「K2インターフェース」が搭載されていました。「K2インターフェース」は,デジ
タル信号の波形伝送において問題となる,ジッター(時間差歪)やリップル(波形歪)などの外乱ノイズが波形に
付加されることを防ぐために,波形伝送を符号伝送に変換して符号外成分だけを取り除くことで信号波形の純
度を高める技術でした。具体的には,精密なマスタークロックに制御された検出回路によって,デジタル入力信
号の符号情報だけを検出し,符号情報をもとに,別のブロック上に新たなデジタル波形を作り出すことにより,
ジッターなどの影響を受けずに変換出力の精度を高く保つことができるという技術でした。この「K2インターフェ
ース」により,次段のD/Aコンバーターへの信号や光及び同軸のデジタル出力を高純度なものに保つことがで
きるようになっていました。

K2インターフェース構成図

D/Aコンバーターには,新開発のの「DD(Digital Direct)コンバーター」が搭載されていました。「DDコンバー
ター」は,1ビットD/Aコンバーターで,基本構成はMASH方式に近いものでした。8倍オーバーサンプリングデ
ジタルフィルターが搭載され,その後段のノイズシェイピングはビクター独自の「VANS(Victor Advanced 
Noise Shaper)方式」となっており,従来は3次までが限度とされていたノイズシェイピングの次数を4次に上
げることで,よりデータの精度をより高めていました。

DDコンバーターダイアグラム

また,ビット圧縮されたデータをパルス波に置き換えるパルス幅変調には「PEM(Pulse Edge Modulation)
回路」が搭載されていました。「PEM回路」は,パルス変調器を並列で2つ搭載しており,2つのパルス波を作り
出し,その差を出力とすることで高い分解能と精度を得ようとするものでした。クロック周波数は,MASHの約半
分の16MHzで,中庸を得た設計のD/Aコンバーターでした。

メカニズムや基板に帯する振動や音圧の影響を抑えるために,シャーシの剛性を上げるだけでなく,材質,形状
構造の3点をバランスよく検討して設計されたアークベースが採用されていました。アークベースは,振動吸収性
にすぐれた特殊樹脂を新開発し,形状については,共振を徹底的に抑えた細かな格子状リブを新設計したもの
で,構造的には,シャーシベース鋼板と密着させた上で,メカニズムと回路基板をベース上に直接組み付けるこ
とにより,CDプレーヤー全体の制振特性を大きく向上させていました。



さらに,ディスクドライブ系の精密動作を維持するために,アークベース/メカベース/ピックアップベースの間に
インシュレーターを配してフローティングし,アークベースに一体成型した大型インシュレーターフットの特殊ダン
パーと合わせた3重のサスペンション構造によって振動を排除していました。
ディスクドライブメカニズムには,12cmディスクと8cmシングルの慣性モーメントを均一化して,回転安定性を
高めるスタブライズ・ホイールを搭載し,サーボ電流の変化を抑えて,音質の劣化を防いでいました。

機能的には,演奏機能として,32曲ランダムプログラム,ランダムプレイ,リピート(1曲,全曲,プログラム,A-
B),99曲のインデックスサーチ,イントロスキャンが搭載されているほか,テープ等への録音時にA/B面振り
分けて,指定時間内に収めるためのオートエディット(マイコン任せで曲順通りにワンタッチ編集)やプログラム
エディット(好みの曲順でプログラムできるラクラク編集),マルチエディット(何枚ものディスクからプログラム編
集)の3つの編集機能・トリプル・エディティング・システムが搭載されていました。
その他,リモコンによる操作が可能な電動ボリューム(ヘッドホン連動)も装備されていました。

表示系のFLディスプレイは,曲番,時間等を表示するカウンター系を20曲プログラムチャートから分離してトレ
イ上部に配置して,機能別にして見やすさをアップしていました。ディスプレイのマイコンノイズの発生を防ぐため
に,ディスプレイのON/OFFは2系統別々に
可能になっており,明るさが選択できるディマースイッチも装備されていました。
出力は,アナログ出力が固定/可変の2系統,デジタルが光/同軸の2系統装備され,端子はいずれも金メッキ
端子となっていました。

以上のように,XL-Z531は,ビクターが598クラスに投入した意欲作でした。ビクターは,中級機ではこのクラ
スがトップモデルとなり,大きく離れてXL-Z900等の超高級機があるというラインナップであるため,技術的に
も機能的にも力の入った設計となっており,コストパフォーマンスの高さもあり,人気モデルとなりました。598ク
ラスながら,しっかりと厚みのある音は,アークベース等のしっかりとした土台があってのことではなかったかと
思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



弦のふるえの止まった瞬間が
聞こえました。
この音の細密さが,
DDコンバーターの再現力です。

◎K2インターフェース+DDコンバーターで一新
 したデジタルの音楽性,微小レベルの再現性。
◎メカニズムや回路基板をダイレクトにマウントする
 構造で,音圧や振動を排除するアークベース。
◎サイズの異なるディスクの音質変化を追放する,
 スタビライズ・ホイールで各サイズのCDも高音質。
◎カウンター系とプログラム系を分離した新デザイン。
 明るさも変えられる2系統のFLディスプレイ。
◎編集に便利なトリプル・エディティング・システム。

●音質重視設計のリモコン電動ボリューム(ヘッドホン連動)
●リモコンによるトレイのオープン/クローズ,
 リピート(全曲/1曲/プログラム/A-B間)
●32曲ランダムプログラム
●99曲インデックスサーチ
●イントロスキャン
●オートスペース
●タイマープレイ
●CDシングル対応トレイ
●光/同軸(金メッキ)2系統デジタル出力端子
●金メッキ2系統アナログ出力端子(固定/可変)
●シンクロ端子




●主な仕様●

ダイナミックレンジ  100dB以上(EIAJ) 
全高調波歪率 0.0017%以下(EIAJ)
S/N 110dB以上(EIAJ)
チャンネルセパレーション 100dB以上(EIAJ)
周波数特性 4~20,000Hz
ワウ・フラッター  測定限界値以下 
出力レベル  2.0Vrms(EIAJ) 
消費電力 14W(電気用品取締法基準)
外形寸法 435W×130H×341Dmm
重量(本体) 7.5kg(本体)


※ 本ページに掲載したXL-Z531の写真・仕様表等は1989年9月
 のVictorのカタログより抜粋したもので,JVCケンウッド株式会社
 に著作権がありま す。したがって,これらの写真等を無断で転載,
 引用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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