Victor XL-Z701
COMPACT DISC PLAYER ¥89,800
1987年に,ビクターが発売したCDプレーヤー。 前年に発売された
XL-V1100の弟機といった存在
でしたが,1年分の新しさも盛り込まれていました。ビクターはCDプレーヤーの分野では,あまりブランド
イメージが強くはありませんでしたが,中級機として多機能な弟機XL-V501をさらに機能的にアップし,
音質的には最上級機XL-V1100に近づけようとした意欲作でした。
XL-Z701の特徴としては,XL-V1100で初搭載された,一体型CDプレーヤーの中でデジタル部とオー
ディオ部を明確に分離するための2ボックスコンストラクションの採用でした。CDプレーヤーで問題となる
デジタル部のオーディオ部への干渉による音質へ影響を抑えるために,メカニカルな分離と電気的な分
離が図られていました。
メカニカルな分離のために,オーディオ基板全体をシールドケースの中に収容し,内部では,基板の上に設
けられたシールドプレートで,デジタル処理部とアナログ処理部がさらに仕切られていました。天板上部から
見ても,シールドケースの天板部が分かるように,独立したまさにシールドケースでした。
電気的な分離のために,デジタル部からオーディオ部への信号伝送は,フォトカプラによるオプティカルリ
ンク(光伝送)によって行われるようになっていました。さらに,電源回路も,デジタル系,サーボ系,オー
ディオ系の3系統独立構成となっていました。
D/Aコンバーター部には,当時最新の4倍オーバーサンプリング・266次のデジタルフィルターを搭載して
いました。このデジタルフィルターは,リップルによるオーディオ周波数特性のうねりを従来のものより2桁
減少させ,帯域外の減衰特性も100dBをクリアした当時最先端のものでした。D/Aコンバーターには16
ビット直線の高速変換・マルチビットタイプを左右独立で搭載していました。電流伝送方式の採用によりデ
ジタルノイズも少なくなっていました。
さらに,アナログ信号にまぎれこんだデータ切換の信号の歪み(グリッチ)を取るデグリッチャー回路が搭載
されていました。XL-Z701に搭載されたのは,信号に直列なスイッチ素子をなくし,わずかな音質劣化も排
除した,新開発の「ダイレクト・シャントタイプ・ファインデグリッチャー」で,歪みがほぼ皆無近づけられていま
した。
CDドライブメカは,ピックアップ部や回転系を制振材ベースにマウントし,フローティングさせて外来振動を排
除したビクター自慢のIS(Independent Suspension)フローティングメカにズムに支えられた,ハイプレシ
ジョン3ビームピックアップを搭載していました。ピックアップの可動部質量は,それまでの約1/2に軽減され
サーボ電流を半減させてサーボノイズを抑えていました。サーボ系は,高感度な振動検出素子Vセンサーを
用いたビクター独自のVサーボを採用していました。これは,振動検出素子が振動を感知したときだけ,た
だちにサーボを強める方式で,余分なサーボ電流による悪影響を抑えるというものでした。また,ディスクの
キズやヨゴレによる異常波形を打ち消すハイバランスYサーボも搭載され,安定したトレースが確保されてい
ました。
シャーシ底部には,15mm厚のパーティクルボードをはり付けたソリッドベースが採用され,シャーシを支える
インシュレーターとあわせ,外部からの振動に対処していました。
XL-Z701は,CDプレーヤーとして同クラスの中で最も多機能な部類の1台でした。32曲プログラム選曲
ランダムプレイ,約15秒ずつのイントロスキャン,イントロ当てクイズにも使えるランダムイントロプレイ,約
4秒のオートスペース,5モードのリピート機能(全曲/1曲/プログラム/ランダム/A−B)などが搭載されてい
ました。また,特徴的な機能として,テープ等への録音に便利なエディティング機能がありました。10キーで
収録可能時間を指定すると,自動的に1曲目から収録可能な曲までがプログラムされる機能でした。テープ
等の時間が少し余るときには,残りの曲で時間的に収まる曲が点滅し,そこで好きな曲番を指定できるよう
にもなっていました。
出力端子は,アナログは固定と可変の2系統,デジタルは同軸と光の2系統が装備されていました。 アナロ
グの可変出力には,モーター駆動できるボリュームが装備され,リモコンでの操作が可能となっていました。
以上のように,XL-Z701は,当時のビクターの中核モデルといった存在で,技術的にも機能的にも盛りだく
さんともいえる内容を持ったコストパフォーマンスの高い1台となっていました。当時のビクターはCDプレー
ヤーの分野では,あまりメジャーとはいえない存在でしたが,アナログ系の設計もしっかりしており,ビクターら
しい音づくりがされているためか,オーソドックスなバランスながら,魅力的な中高域の味わいもあるなど,音
楽を気持ちよく聴ける音を持っていました。