SANSUI
XR-Q9
QUARTZ SERVO DD PLAYER ¥79,800
1979年に,サンスイが発売したフルオートプレーヤー。サンスイは,アナログプレーヤーの分野
では,あまり強いブランドではありませんでしたが,このXR-Q9は,回転系,キャビネット,アーム
など各部に技術をしっかり投入した力作でした。
アナログプレヤーとして重要なトーンアームには「最適支持点方式ストレートアーム」を搭載していま
した。この「最適支持点方式トーンアーム」は,当時サンスイが展開していたもので,従来の質量集
中方式に加えて,最適支持点理論を導入し,物体の持つ動的支点の概念をトーンアームの支点設
定に応用したトーンアームでした。この方式は,ピボット軸が動的バランス点で支持されているため,
先端のカートリッジ部は,ベースからの振動等の影響を受けにくく,優れたトレース能力とクリアーな
音質を実現できるというものでした。
XR-Q9では,この方式では初のストレートアームを採用していました。こ
のアームは,特殊ダンプ
材入りの無共振形インテグレーテッドタイプで,実効長245mmのロングストレートアームでした。
ヘッドシェルは,ダイキャスト製のフィンガー一体型が搭載されていました。ストレートアームとした
>ことで,理想的なラテラルバランスがとれ,レコード溝の外周,内周に均一に圧力がかかるため,ス
テレオ再生能力の向上が図られ,アームがよりシンプルな形となり,質量が軽減され,すぐれたトラッ
カビリティが実現されていました。アームベースは,亜鉛ダイキャスト製の質量集中型で,しっかりと
アームを支える構造になっていました。
XR-Q9は,フルオートプレーヤーとしてより滑らかで,正確で,スピーディーな動作をさせるために,
コンピュータで制御する方式を採用していました。コンピュータをプレーヤーの電子部に内蔵し,アー
ムの位置センサーから得た情報をもとにして,メカニズムコントロールがコンピュータに記憶させた
プログラムにより正確,的確に行われるようになっていました。また,コンピュータには基本動作の
他に異常動作のパターンも記憶されており,万が一の動作にもカートリッジやレコードを保護する方
向に働くようになっていました。コンピュータと連動したフルオート専用モーターが搭載されているた>
め,フェザータッチの操作ボタンに軽く触れるだけで,正確で迅速な動作が確保されていました。
ターンテーブルは,アルミ合金ダイキャスト製,直径350mm,重量1.7kg,,慣性質量315kg/cm2
の重量級で,負荷にも強い安定した回転を確保していました。
メインモーターは,正確な水晶による発振周波数に同調して回転するハイトルクの20極30スロットの
クオーツサーボDCモーターが搭載されていました。モーターの回転数を制御するサーボ系のスピード
検出には,ターンテーブル内周に960個のパルス信号を着磁させ,検出ヘッドでモーターの回転を検
出する磁気記録検出システムが採用されていました。また,検出ヘッドを2つ搭載した2ヘッド磁気記録
検出システムが採用され,2つのヘッドは位相を90°ずらして装着されスタート時のオーバーシュート,
アンダーシュート時に起こる位相ズレを検出して,その位相差を瞬時に制御するためスムーズなモー
ターの立ち上がりと回転数の移行やストップなどもハイスピードで行えるようになっていました。
キャビネットには,BMC(Bulk Molding Compound)材が採用されていました。このBMC材は
樹脂無機材とグラスファイバーを重合したもので,パーチクルボードの約2.5倍の密度,3倍以上の
ヤング率をもつ材質で,それ自体強固であるだけでなく,耐熱性,経年変化にも強く,アコースティック
フィードバックも受けにくいというものでした。XR-Q9では,このBMC材の表面を上品なピアノフィニッ
シュで仕上げ,高級感のあるキャビネットとしていました。
また,操作ボタン,LEDによる表示部などはフロント部に集中配置され,ダストカバーを閉じたままでも
操作しやすくなっていました。
XR-Q9では,3mm厚亜鉛ダイキャスト材のサブベースにメインモーターとトーンアームが装着され,本体
キャビネットからフローティングさせた2重構造キャビネットが採用されていました。サブベースは,3方向か
らスプリングで吊られると同時に,フローティング用インシュレーターで本体から分離された構造となってお
り,このため,外部振動に強く,横揺れに対しても独立懸架方式により,メインモーターやトーンアームが影
響を受けにくくなっていました。
以上のように,XR-Q9は,サンスイのフルオートプレーヤーの最上級機として,各部に優れた技術が投入
された力作でした。洗練されたデザイン同様に使いやすく音のよいフルオート機でした。