YAMAHA YP-D71
NATURAL SOUND STEREO RECORD PLAYER SYSTEM
¥59,000
1979年に,ヤマハが発売したプレーヤーシステム。ヤマハは,1975年のYP-1000を皮切りにDD(ダイ
レクト・ドライブ)方式のプレーヤーシステムを発売し,1977年には,YP-D10,YP-D9,YP-D7,YP-D5
YP-D3といったDDプレーヤーを広く展開していきました。このシリーズの中の中級機・YP-D7の後継機と
考えられるのがYP-D71でした。
ターンテーブルは,直径31cm,重量1.8kgのアルミダイキャスト製の重量級で,鋳造の段階から精密にダ
イナミックバランスをとりつつ,質量を外周に寄せた形状とすることで,慣性質量230kg-cm2を実現し,負
荷変動に強い作りとなっていました。
駆動はダイレクトドライブ方式で,駆動するモーターには,起動トルク1kg・cmという強力なコアレス・スロット
レスDCホールモーターが搭載されていました。通常のDDモーターは,12極24スロットというようにステータ
コイルの巻線に鉄芯があり,鉄芯と鉄芯との間にスロットがあり,そのためミクロ的に見ると,磁器吸収力の
部分的なトルクムラ=コッキングが生じていました。このコッキングを抑えるために極数を増やしたり,ターン
テーブルの重量を非常に大きくして慣性質量を大きくとり回転の平滑化を図るなどの方法がとられていました。
YP-D71では,ステータのコイルから鉄芯を無くし,スロットのない新開発のコアレス・スロットレスDCホール
モーターの採用により,コッキングが非常に少なく,安定して強力なトルクを得ることが可能となっていました。
より正確な回転を実現するために,ダブルサーボと称して回転を制御する2つのサーボがかけられていました。
1つ目はFGサーボでした。(Frequency Generator=周波数発電機)からの周波数が一定となるように回
転速度を制御するもので,FGがモーターの外周全周に配置されているため,検出される波形は全周で平均
化され,偏心や検出器のピッチ誤差の影響を受けにくい高い精度を実現していました。
2つ目は,FGサーボで高められた回転精度をさらに高めるためのクォーツロックPLLサーボの採用でした。
FGからの周波数と水晶発振器で発生させた基準信号との位相のずれをなくすように制御する方式で,これ
により,ターンテーブルの回転精度は水晶の発振周波数精度まで高めることができ,負荷変動や電圧変動
温度変化などに対して非常に高い安定度を実現していました。
回転変動は,定常的な負荷だけでなく,ダイナミックに変動する負荷もあり,種々の外乱成分のうちゆるやか
な負荷変動に対してはクォーツサーボで改善し,急激な負荷変動に対してはターンテーブルの慣性質量で改
善するようになっており,この中間的な変動に対しては,ダブルサーボや慣性質量,モーターの裸特性を含
め,トータルに対応するバランスのとれた設計がなされていました。
トーンアームは,スタティックバランス・S字型アームが搭載されていました。アーム本体はアルミニウム製で
高剛性のものを使用し,S字型のうねりを少なくするとともに,トラッキングエラーを軽減しつつ,ローコンプラ
イアンスのカートリッジも性能を発揮できるように,実効長242mmのロングタイプアームを採用していました。
パイプアーム内部には,防振材をたっぷり充填し,不要な共振を抑えていました。
トーンアームの動きを決める可動部には,回転軸を垂直動のためと水平動のための二重構造としたジンバ
ルサポートが採用されており,水平・垂直とも動作点のブレが少ないロングスパンの完全4点ピボットジンバ
ルサポートとしていました。ピボットを支えるアンギュラーコンタクトベアリングは,ラバーブッシュで支えて,ガ
タの追放とキャビネットからの振動が伝わらない設計となっていました。こうした設計や作りにより,水平・垂
直とも7mgという初動感度を実現していました。
高感度なアームに対応したインサイドフォースキャンセラーは,糸吊り式という非常にシンプルでオーソドック
スな方式を採用していました。糸の摺動摩擦を低減するために,ローラー及びスラストベアリングを設け,ス
ムーズな働きを実現していました。
高精度で高感度なアームを支えるアームベースは,重量級亜鉛ダイキャストベースを採用していました。こ
のアームベースは,キャビネットとの接触面積が充分に広くとられ,4点で強固に固定されており,突き出た
直径27mmの強靱な円筒形のベースシャフトにジンバルサポート部を支える亜鉛製のダイキャストブラケッ
トがタイトスクリューで固着されていました。
円筒形のベースシャフトには4mm目盛付のハイトアジャストがあり,様々なカートリッジに対応するようになっ
ていました。このハイトアジャストは,3点支持による堅固なロック機構を持っており,自由な位置で確実に固
定できるようになっていました。
また,音質に影響の大きい信号ケーブルのインダクタンスやキャパシタを考慮し,NEGLEXローインピーダ
ンス二重円筒ケーブルを採用し,音質の改善を図っていました。
キャビネットは,Dシリーズのプレーヤーに共通のパーチクルボードによるソリッドボードでした。パーチクル
ボードは剛性や密度が高く,適度なダンピングで,ターンテーブル,アームをしっかり支えるベーストなってい
ました。ダストカバーも,ハウリングに強い1.1kgのアクリル製ダストカバーを採用していました。
YP-D71は,こうしたプレーヤーを構成する様々な部位の微振動をカートリッジの針先に届く届く以前に可
能な限りサプレス(抑圧)しコントロール(調音)しようとするオーバーオールなミクロ的な吟味がなされた作
りと設計になっており,ヤマハはこれらを「UR(Ultimate Refining)メソッド」と称していました。
機能的には,YP-D10で採用されていたオートストップ機構をさらに改良したオートストップメカニズムが搭
載されていました。これは,アームの終わりの導出溝にアームが導かれた時の送り速度をLEDとCdS(フォ
トセンサー)の組み合わせで非接触検出し,ソレノイドを動作させ同時に電源もOFFにするというものでした。
非接触のため,アームの感度の妨げにならず,また,アームベース下部にコンパクトにまとめられており,
キャビネットの構造の妨げにもならないというものでした。
以上のように,YP-D71は,中級機としてバランスのとれた設計と作りが特徴でした。「YP-Dシリーズ」で
ヤマハが培ってきたノウハウも投入され,すっきりしたデザインに音質と使いやすさが両立されたプレー
ヤーでした。
YAMAHA YP-D51
NATURAL SOUND STEREO RECORD PLAYER SYSTEM
¥49,000
YP-D71には,弟機としてYP-D51が発売されていました。基本的な構成はほぼ同じで,回転系はクォー
ツロックをかけていないFGサーボとされ,オートストップ機構が省かれいるというものでした。
実質本位のプレーヤーとして高いコストパフォーマンスを実現した1台でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
瞬間レスポンスを追求して<音の良さ>で
さらに飛躍したヤマハのプレーや
YP-D71
◎FGサーボ:第1のダブルサーボ
◎クォーツロックPLL:第2のダブルサーボ
◎バランスのとれた佐ブルサーボ
◎大型コアレス・スロットレス・DCサーボモータ
◎慣性質量230kg・cm2の重量級ターンテーブル
◎ワウフラッタ0.025%(WRMS),SN比62dB
◎初動感度7mgのジンバルサポート
◎S字型ロングタイプアーム
◎重量級亜鉛ダイキャストベース
◎NEGLEX低インピーダンスケーブル採用
◎種々のカートリッジに対応するハイトアジャスト
◎高精度インサイドフォースキャンセラ
◎ヤマハURメソッド
◎マニアライクなオートストップメカニズム
◎ソリッドボード
YP-D51
◎瞬間レスポンスの追求
◎起動トルク1kg・cmのコアレスDCモーター
◎高速応答のFGサーボ方式
◎慣性質量320kg・cm2の重量級ターンテーブル
◎完全ジンバルサポート方式高感度アーム
◎重量級亜鉛ダイキャストベース
◎軽量・小型の高剛性ヘッドシェル
◎音質重視のNEGLEX低インピーダンスケーブル
◎キャビネット
●主な規格●
■フォノモータ部■
YP-D71 | YP-D51 | |
駆動方式 | ダイレクトドライブ | ダイレクトドライブ |
モータ | コアレス・クォーツロックDCホールモータ | コアレス・FGサーボDCホールモータ |
起動トルク | 1kg・cm | 1kg・cm |
ロックイントルク | 500g・cm | |
サーボ型式 | FGサーボ+クォーツロックPLL | FGサーボ |
モータ電源 | DC24V・600mA | DC24V・600mA |
ターンテーブル | 31cmアルミダイキャスト1.8kg(含ゴムシート) | 31cmアルミダイキャスト1.8kg(含ゴムシート) |
ターンテーブル慣性質量 | 230kg・cm2(含ゴムシート) | 230kg・cm2(含ゴムシート) |
回転数 | 331/3・45rpm | 331/3・45rpm |
SN比(JIS) | 62dB以上 | 62dB以上 |
ワウフラッタ(WRMS) | 0.025% | 0.025% |
ピッチ精度 | ±20ppm以下 | |
回転数調整範囲(ピッチコントロール) | ±3% |
■トーンアーム部■
形式 | S字型スタティックバランスジンバルサポートアーム | S字型スタティックバランスジンバルサポートアーム |
アーム実効長 | 242mm(ロングアーム) | 242mm(ロングアーム) |
オフセット角 | 21°15′ | 21°15′ |
トラッキングエラー | -1°,+2°30′ | -1°,+2°30′ |
オーバーハング | 15mm | 15mm |
ハイトアジャスト | ±4mm | ±4mm |
インサイドフォースキャンセラ | ローラ付糸吊りタイプ | ローラ付糸吊りタイプ |
初動感度 | 垂直7mg,水平7mg | 垂直7mg,水平7mg |
アームベース | φ27真鍮ベースシャフト付亜鉛ダイキャスト製 | φ27真鍮ベースシャフト付亜鉛ダイキャスト製 |
アームリフタ | オイルダンプ方式 | オイルダンプ方式 |
取付カートリッジ自重 | 3~12g | 3~12g |
ヘッドシェル | 鍛造純アルミ製(重量9g) | 鍛造純アルミ製(重量9g) |
出力コード | NEGLEX2496・ローインピーダンス二重円筒コード | NEGLEX2496・ローインピーダンス二重円筒コード |
オート機構 | フォトセンサー式オートアップ,オートストップ |
■ボディ部■
ボディ材質 | パーティクルソリッドボード | パーティクルソリッドボード |
仕上げ | PVC黒檀化粧 | PVC黒檀化粧 |
ダストカバー | 1.1kgアクリル製 | 1.1kgアクリル製 |
ヒンジ | フリーストップ着脱可能 | フリーストップ着脱可能 |
インシュレータ | W型ゴムインシュレータ | W型ゴムインシュレータ |
■その他■
定格電圧・周波数 | 100V・50/60Hz | 100V・50/60Hz |
定格消費電力 | 9W | 5W |
外形寸法 | 470W×155H×378Dmm | 470W×155H×378Dmm |
総重量 | 11kg | 11kg |
※ 本ページに掲載したYP-D71,YP-D51の写真・仕様表等は,
1979年10月のYAMAHAのカタログより抜粋したもので,
ヤマハ株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真
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