TEAC ZD-7000
COMPACT DISC PLAYER ¥180,000
1988年に,ティアックが発売したCDプレーヤー。ティアックは前年の1987年,デジタルオーディオ時代
の高級機部門のブランドしてエソテリックを発足させ,CDプレーヤー,DAT等に高級機を投入していきま
した。そうした中,ティアックブランドのCDプレーヤーの最上級機がZD-7000でした。
ZD-7000の最大の特徴は「ZDサーキット」の搭載でした。ティアックは,1982年のCDスタート時には
OEMモデルを発売していましたが,1985年,初の自社開発モデル
ZD-5000,ZD-3000にディザ信
号を用いた「ZDサーキット」を搭載し,高い評価を得ることとなりました。ZD-7000に搭載された「ZDサ
ーキット」では,14bitのランダム・パルスからなるディザ信号の加減算を1秒間に176,400回ににもお
よび行うことで,D/Aコンバーターの非直線成分を平均化するもので,有害な量子化ノイズを従来のCD
プレーヤーの1/5以下にまで抑えることができるということでした。
フィルターには,新開発のフルタイム18bit・4倍オーバーサンプリング・デジタルフィルターが搭載されて
いました。16bitデジタルフィルターに比べて,より正確に演算された予測値を原信号間に4倍の高精度
で補間することで,高解像度変換の実現を可能とし,18bitの高精度階調でのアナログ変換が実現され
ていました。
D/Aコンバーターは,18bitのD/AコンバーターをL・R独立で搭載したツイン・モノ構成D/Aコンバーター
が搭載され,位相差”0”が実現されていました。
また,通常,CDプレーヤーでは,D/Aコンバーター,デコーダー,およびコントロールマイコン系にそれぞ
れ独立したクロック回路が備えられていましたが,ZD-7000では,D/Aコンバーター,ZDサーキット,信
号処理用LSIを,デジタル・フィルターと同じクロックタイムで作動する,16.934MHzの水晶発振器を用
いた1つのマスタークロックだけで制御する,ティアック独自の「パラレル・マスター・クロック方式」が採用さ
れていました。クロック相互間の干渉によるビートがないため,アナログ信号へのノイズ混入等が抑えられ
ていました。
これらのデジタル系の他,サーボ系,コントロール系,オーディオ系のすべての回路に,経年変化に強く,
絶縁度,耐熱性ともに高い両面ガラスエポキシ基板が採用されていました。この基板を採用することで,オ
ーディオ回路全体の接地面積を大幅に拡大させ,強固に固定することができ,振動,共振にきわめて強い
回路構成が実現されていました。
ピックアップ・メカニズム系には,新開発の高精度リニア・モーターメカニズムが搭載され,高速アクセスと
高い耐久性が実現されていました。ピックアップには,ディスクの音楽信号を読み取るメインビームの他に,
トラッキングエラー検出用のサブビームを左右に配した,軽量・高剛性の3ビーム・レーザー・ピックアップ
が搭載されていました。
ディスク駆動系は,安定したトルクと耐久性にすぐれた新開発のブラシレスD.D.ホールモーターが採用さ
れ,高い回転精度が実現されていました。ディスクをディスク・トレイに非接触の状態で中央でしっかりと支
えるマグネティック・クランピング・メカニズムには,センターキャップに異なる2つの角度をつけたWアング
ル・タイプが採用され,偏心に対する精度が一段と高められていました。また,重量級メカニズム全体を
特殊ゴムダンパーとコイルスプリングが併用された3点支持フローティングサスペンションで吊り下げ,耐
振・耐共振性を大幅に向上させ,ピックアップ部への不要振動が抑えられていました。
筐体全体も,共振・振動に強い設計が行われていました。シャーシ底を高剛性の二重構造とし,さらに
振動減衰特性にすぐれた焼結合金製のインシュレーター5個による5点支持として,高剛性・重量級の
ハイリジッドな筐体とされていました。また,天板も肉厚な作りになっており,そのうえ特殊ダンプシートが
装着され,スピーカーからの音圧や内部共振に強いシャーシ構造となっていました。
電源部は,新開発の大容量の電源トランスが搭載され,低歪率,低インピーダンスの常時安定した電源
供給が実現されていました。
以上のように,ZD-7000は,当時のティアックブランドの最上級機として,すぐれた性能と機能を実現し
ていました。自社生産の1号機ZD-5000をベースに強化・改良を重ねた内容は,高い完成度をもって
いました。