出力段には,A-900以来の「ノンスイッチング回路」が搭載され,スイッチング歪みゼロを実現していました。
パイオニアの疑似A級動作アンプである「ノンスイッチングアンプ」は,ハイスピード・バイアスサーボ回路に
より入力信号の強弱に応じて,終段トランジスターのバイアス電流をコントロールし,トランジスターを常に動
作領域で動作させるもので,プッシュプル動作のアンプにつきもののトランジスターのスイッチング動作をし
ないというものでした。プッシュプル回路の+側,−側の両トランジスターが常にONの状態にあり,A級動
作と同じく原理的にスイッチング動作が行われず,また,入力信号に応じてバイアス電流が変化するため,
純A級動作のアンプに比べて電力効率が良く,比較的容易に大出力が得られるという特徴がありました。
この出力段により,歪み感が少なくしっかりした音が実現されていました。
出力段のヒートシンクは,上級のA-200がフィン型のものを搭載していたのに対し,強度が得られ共振が
抑えられるダイカスト製のチムニー型が採用され,フィンの高さもランダムに配置した形状で,共振モード
の分散が図られていました。
イコライザー部は,ハイゲインイコライザーにMCトランスを搭載するという変わった構成となっていました。
ハイゲインイコライザーには,回路がシンプルである利点があるが,MMに比較してMC使用時には,NF
が減るため,特性が劣化しやすいという欠点があります。MC昇圧トランスは,SN比もよく電源の影響を
受けないため特性も安定しているが,昇圧比を上げるとレンジが狭くなり,音が甘くなる恐れがあります。
それぞれに利点と欠点があるため,これを克服するには,通常,非常に高価なパーツを使う必要があるた
め,コストが上がってしまうことになってしまいます。
そこで,A-150では,標準的なトランスより巻き線比を小さくして昇圧比を減らした,高価でなくても特性の
すぐれたトランスを搭載し,昇圧比の足りない部分を,イコライザーのゲインを上げたハイゲインイコライザー
で補うという,ハイブリッド方式が取られていました。MCトランスの昇圧比を従来の半分に減らすことで巻き
線数が少ないため,インダクタンス及び線間容量が低減され,高域特性が改善され,低域においてもトラン
ス出力電圧が小さくてすみ,アンプの入力マージンが大きくなり過大入力にも強くなっていました。位相特性
も改善され,直流抵抗が少なくクセの少ない音質が実現されていました。
パーツの面でも,検討,厳選されたものが使用されていました。非磁性リード線使用の半導体,黄銅キャッ
プや銅リード品を採用した抵抗,銅リード線使用のコンデンサーなどが主要な部分に使用されていました。
ACプラグには,非磁性体のニッケリン無電解メッキが施され,主要配線材には無酸素銅線が使用されて
いました。ヒューズにも,銅キャップスズメッキのオーディオ用ヒューズが使用され,磁気歪みを抑える非磁
性化設計となっていました。基板には,プリメインアンプとしては通常の2倍の厚さになる70μmの銅箔プ
リント基板が使用され,アースや信号ラインのインピーダンスを下げ音質の向上が図られていました。
電源コードも0.26mmの無酸素銅線37本による極太のもので,誘電率の小さいポリエチレンの絶縁材が
使用され,線間容量と損失の低減が図られた二重被覆の高級なものが使用されていました。
実効出力 | 150W+150W(20Hz〜20kHz,両ch駆動,8Ω) |
高調波歪率 (20Hz〜20kHz) |
0.003%(実効出力時) |
混変調歪率 (50Hz:7kHz=4:1) |
0.003%(実効出力時) |
出力帯域幅 | 5Hz〜55kHz(IHF,両ch駆動,THD0.01%) |
出力端子 | TAPE REC:1,2:150mV SPEAKER(4〜16Ω):A,B,A+B |
ダンピングファクター | 80(20Hz〜20kHz,8Ω) |
入力端子 (感度/入力インピーダンス) |
PHONO(MM):2.5mV/50kΩ PHONO(MC):0.15mV,0.25mV/3Ω,40Ω TUNER,CD/AUX・TAPE PLAY1・2:150mV/50kΩ |
PHONO最大許容入力 | MM:300mV(1kHz,THD0.003%) MC:18mV(1kHz,THD0.003%) |
周波数特性 | PHONO(MM):20Hz〜100kHz±0.2dB TUNER・CD/AUX・TAPE PLAY1,2:5Hz〜100kHz +0,−3dB |
SN比 (IHF,Aネットワーク,ショートサーキット) |
PHONO(MM):90dB PHONO(MC):76dB TUNER・CD/AUX・TAPE PLAY1,2:110dB |
トーンコントロール | BASS:±10dB(100Hz) TREBLE:±10dB(10kHz) |
フィルター | LOW:15Hz(6dB/oct) |
電源電圧 | AC100V,50/60Hz |
消費電力 | 300W(電気用品取締法) |
外形寸法・重量 | 420W×150H×420Dmm・16.8kg |
実効出力 | 150W+150W(20Hz〜20kHz,両ch駆動,6Ω) 120W+120W(20Hz〜20kHz,両ch駆動,8Ω) 200W+200W(1kHz,両ch駆動,4Ω) 160W+160W(1kHz,両ch駆動,6Ω) 130W+130W(1kHz,両ch駆動,8Ω) |
高調波歪率 (20Hz〜20kHz) |
0.003%(実効出力時) |
混変調歪率 (50Hz:7kHz=4:1) |
0.003%(20Hz〜20kHz,120W,8Ω) |
出力帯域幅 | 5Hz〜60kHz(IHF,両ch駆動,THD0.01%) |
出力端子 | TAPE REC:150mV SPEAKER(4〜16Ω):A,B,A+B |
ダンピングファクター | 100(20Hz〜20kHz,8Ω) |
入力端子 (感度/入力インピーダンス) |
PHONO(MM):2.5mV/50kΩ PHONO(MC):0.15mV/3Ω,0.25mV/40Ω CD・TUNER・AUX・TAPE PLAY1・2:150mV/30kΩ |
PHONO最大許容入力 | MM:250mV(1kHz,THD0.003%) MC:18mV(1kHz,THD0.003%) |
周波数特性 | PHONO(MM):20Hz〜20kHz±0.2dB CD・TUNER・AUX・TAPE PLAY1,2:2Hz〜100kHz +0,−3dB |
SN比 (IHF,Aネットワーク,ショートサーキット) |
PHONO(MM):90dB PHONO(MC):76dB CD・TUNER・AUX・TAPE PLAY1,2:110dB |
ステレオセパレーション |
90dB(1kHz) |
トーンコントロール | BASS:±8dB(100Hz) TREBLE:±8dB(10kHz) |
フィルター | LOW:15Hz(6dB/oct) |
電源電圧 | AC100V,50/60Hz |
消費電力 | 350W(電気用品取締法) |
外形寸法・重量 | 420W×151H×427Dmm・16.6kg |
※本ページに掲載したA-150,A-150Dの写真,仕様表等 は,1983年
3月,1985年12月のPIONEERのカタログより抜粋したもので,パイオ
ニア株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で
転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
★メニューにもどる
★プリメインアンプPART5のページにもどる
現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象の
ある方そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。