YAMAHA A-3
NATURAL SOUND STEREO AMPLIFIER ¥59,000
1978年に,ヤマハが発売したプリメインアンプ。ヤマハのプリメインアンプは,1977年にA-1を発
売し。CAシリーズから新たにA-1桁シリーズへと転換し,それまでのモデルとは一変したシンプルな
機能とデザイン,ディスク優先の思い切ったシンプルな回路構成などを特徴としていました。そして,
第1弾のA-1に続く第2弾として発売されたのがA-3でした。

回路構成は,パネル面にあるDISCスイッチをONにすると,ローノイズMCヘッドアンプ→イコライ
ザーアンプ→DC・ハイゲインパワーアンプというA-1直系のディスク・ダイレクト&DCというディスク
再生のクオリティを追求した構成になることが特徴でした。DISCスイッチをONにすると非常にシ
ンプルな信号経路となり,ゲインは6dB低下するものの,歪率,残留ノイズなどの諸特性が向上し
音質の向上が実現されるようになっていました。そして,DISCスイッチのOFF時には,パネル下
部の各種のファンクションが多様に使える多機能なプリメインアンプとして使えるようになっていま
した。

イコライザーアンプは,初段カレントミラーカスコードブートストラップ差動増幅回路,二段目は,エ
ミッタ設置増幅,終段はA級ピュアコンプリメンタリーSEPP-OCL回路という構成になっていました。
カレントミラー回路とすることにより十分なゲインを得るとともに,2つのトランジスターがプッシュプ
ル回路の働きをして,偶数次の高調波歪を打ち消す働きをするようになっていました。さらにカス
コードブートストラップ回路により,MM型カートリッジを接続した場合,周波数による信号インピー
ダンスの変化による歪率の劣化を抑えることができるようになっていました。こうしたイコライザー
アンプにより,SN比は2.5mV感度で86dB(IHF-A),歪率0.005%(PHONO→REC OUT
3V出力時,20Hz~20kHz)最大許容入力250mVrms(1kHz,0.01%)を実現し,誤差1%
の抵抗と2%のコンデンサーを使用することで,RIAA偏差±0.2dBの高精度を確保していまし
た。
また,MMカートリッジに対しては,47kΩ,68kΩ,100kΩの3種類の負荷抵抗を選べるよ
うになっており,ヘッドアンプを必要としない高出力タイプのMC型カートリッジにも対応するた
め,100Ωのポジションも搭載されていました。
MCヘッドアンプは,新開発のローノイズトランジスターでA-1と同一の構成として,定格入力60
μVに対してSN比70dB(IHF-A)という高SN比を実現していました。

パワーアンプ部は,A-1と同じ構成で,初段ローノイズDual FETカスコードブートストラップカ
レントミラー差動増幅→ダーリントン接続プリドライブ→ダーリントン接続SEPP-OCL出力段と
いう構成のDCパワーアンプとなっていました。入力感度を300mVと通常の設計によるアンプ
に比べて約3倍も高い感度に設定されていましたが,感度の高いDCアンプとして問題となりや
すい中点ドリフトに対しては,電気的温度的諸特性の良く揃ったFETをひとつのパッケージに収
めたDual FETを採用したことなどにより,ドリフトをきわめて少なく抑えていました。使用され
ているトランジスターも厳選されたリニアリティの良い素子としていました。こうした構成のハイ
ゲインのパワーアンプ部は,DCから超高域まで,周波数特性の低下,位相ズレダンピングファ
クターの劣化の少ないすぐれた性能を確保し,55W+55Wのパワーを0.05%(AUX→SP
OUT 20Hz~20kHz 8Ω)の低歪率,104dBという高SN比で実現していました。
パワーアンプ部を支える電源部は,容量の大きなトランスと10,000μF×2の大容量ケミコ
ンを搭載していました。さらに,電解コンデンサーの補うために,ケミコンとメタライズドポリエス
テルフィルムコンデンサーを接続して,電源インピーダンスの上昇を抑えていました。

トーンコントロールは,初段差動→プッシュプル構成というICを使用した回路で,ヤマハ独自の
NF型・CR型混合回路を採用していました。センターポジションでは時定数をもつ素子が信号
経路から外れ,正確にフラットになるセルフディフィート方式となっており,ディフィートスイッチ
も不要となっていました。BASS,TREBLE独立式で,BASSは125Hzと500Hz。TREBLE
は2.5kHzと5kHzとターンオーバー周波数切換も装備されていました。
入力は,PHONO,TUNER,AUXとTAPE2系統が装備され,TAPEは相互ダビングも可能と
なっていました。TAPEへの録音出力は,演奏ソースとは別のソースを選べるRECセレクター
も装備されていました。その他,15Hz・12dB/octのサブソニックフィルターも装備されていま
した。

以上のように,A-3は,A1桁シリーズの第2弾として,アナログディスク再生をよりよくすると
いう設計を前面に出し,DCアンプ,回路のシンプル化という方向を上級機から継承した,コ
ストパフォーマンスも高められたプリメインアンプでした。すっきりしたシャープなデザインに
電源,DISCなどの自照式ボタンなど,当時のヤマハアンプに見られる特徴が明確に見られ
これ以降のヤマハプリメインアンプの展開を予感させる1台でもありました。明るく爽やかさ
を感じる音は,まさにヤマハトーンといった感じでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




Disk straight
DC Amp A-3

DISC SWをONにすると,
シンプルなDISCストレートDCアンプ構成。
しかもMCヘッドアンプ内蔵。
ディスクを鮮やかに優先します




●A-3の規格●


実効出力 20Hz~20kHz・8Ω・0.05% 55W+55W
全高調波歪率 PHONO MM→REC OUT 8V 20Hz~20kHz 0.005%以下
PHONO MC→REC OUT 2V 20Hz~20kHz  0.05%以下
TUNER→SP OUT 27.5W・8Ω 20Hz~20kHz   0.02%以下
混変調歪率 TUNER→SP OUT ・8Ω・27.5W
       60Hz:7kHz=4:1  0.01%以下
パワーバンド幅 10Hz~40kHz(8Ω・27.5W・歪0.05%)
ダンピングファクター 50以上(8Ω,1kHz)
周波数特性 TUNER・AUX・TAPE→SP OUT・8Ω 10Hz~100kHz+0,-0.2dB
RIAA偏差 20Hz~20kHz ±0.2dB
入力感度 PHONO1(MM)   2.5mV(180pF)
PHONO2(MC)   60μV
TUNER・AUX・TAPE 50mV  
入力インピーダンス PHONO1(MM)   100Ω,47kΩ,68kΩ,100kΩ
PHONO2(MC)   10Ω
TUNER・AUX・TAPE  47kΩ
最大許容入力 PHONO1(MM)・1kHz・歪0.01%  250mV以上
PHONO2(MC)・1kHz・歪0.05%     5mV(感度60μV)
DISC ON時のレベル  -6dB 
トーンコントロール特性 ターンオーバー周波数
 BASS   500Hz・125Hz   
 TREBLE  2.5kHz・8kHz  
最大可変幅
 BASS   ±10dBat20Hz
 TREBLE ±10dBat20kHz
出力電圧/出力インピーダンス REC OUT  150mV/600Ω
SUBSONICフィルタ 15Hz 12dB/oct 
SN比 PHONO1(MM)(IHF-A net work)  86dB以上
PHONO2(MC)(IHF-A net work)  70dB以上
TUNER・AUX・TAPE 104dB以上  
残留ノイズレベル  (IHF-A net work)
 DISC ON   60μV以下
 DISC OFF 130μV以下 
チャンネルセパレーション(1kHz) TUNER→SP OUT 入力5.1kΩ             70dB以上
PHONO MM→SP OUT 入力5.1kΩ・Vol-30dB 75dB以上
PHONO MC→SP OUT 入力ショート・Vol-30dB 75dB以上
NDCR
(Noise & Distortion Clearance Range)
PHONO1(MM)→SP OUT 1kHz・歪0.1%・Vol-20dB
 DISC ON(IHF-A net work)  2mW~55W
 DISC OFF(IHF-A net work) 8mW~55W
ヘッドホン出力 68mW(8Ω定格出力時)
AC・OUTLET 3系統
 SWITCHED 2個 
 UNSWITCHED 1個 
定格電圧・周波数 AC100V・50/60Hz
定格消費電力 160W
外形寸法 435W×144H×362Dmm
重量 9.6kg
※本ページに掲載したA-3の写真,仕様表等は,1979年10月
のYAMAHAのカタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会社に
著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・
引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。                                         
 

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