AU-8500の写真
SANSUI AU-8500
STEREO AMPLIFIER ¥118,000

1973年に,サンスイが発売したプリメインアンプ。前年の1972年に発売されたAU-9500の弟機で,
その技術を継承し,上級機同様,幅50cmの精悍なフロントパネルと,しっかりと投入された物量が,
その実力を物語る,質実剛健なプリメインアンプでした。

全体の回路構成は,プリ・ドライブ段に定電流駆動方式,出力段に大出力・低歪率のパラレル・プッシュ
プル回路を採用した,全段直結OCLピュアコンプリメンタリー方式となっいました。パラレルプッシュプル
回路を採用することで,パワートランジスターの電流特性のリニアリティが良い部分を選んで使え,大出
力と低歪率を実現していました。さらに,大型のヒートシンカーを採用し,すぐれた放熱効果により,安定
した動作が確保されていました。
パワートランジスターとプリ・ドライブ段は別電源とされ,さらにドライブ段を3段ダーリントン接続とするこ
とで,負荷変動に左右されない安定したスピーカー駆動が実現されていました。
パワー段を支える電源部は,レギュレーションの良い大型の電源トランスと,15,000μF×2の大容量
のコンデンサーが使用され,安定した+−電源を構成していました。

AU-8500の内部

イコライザー回路は,低雑音トランジスターのPNP−NPN−PNPの3段直結方式で,+,−2つの定電
圧電源から高電圧を供給することにより,最大許容入力300mV(入力感度2.5mVに対し120倍,約
42dB)というダイナミックマージンが確保されていました。RIAA偏差も,RIAA素子に,検討しつくされた<
低雑音トランジスター,誤差の少ない抵抗,コンデンサーにより,30Hz〜15kHzにおいて±0.5dBを
保証していました。また,スイッチ切換時に発生するクリックノイズは,+−電源を利用し,初段のベース
電位を0にすることにより解決していました。

保護回路として,過負荷になった場合に,出力段およびドライバー段のコレクター電流が,ある一定以上>
流れないように制限するカレントリミッター回路を内蔵し,電子回路組み合わせたリレーと4本の速断ヒ
ューズによって,パワートランジスターとスピーカーを保護するようになっていました。
また,プリアウトには,トランジェントキャンセラー回路が備えられ,さらに,リレー回路はオーディオミュー
ティングを兼ね,電源投入時のポップノイズが抑えられていました。

トーンコントロールとして,上級機のAU-9500と同じく,T.T.C.(トリプル・トーン・コントロール)を搭載して
いました。低音,高音は3dBステップで±15dB,中音は1dBステップで±5dBの調整ができるようになっ
T.T.C.アンプは,初段に高入力インピーダンスを確保するため,ローノイズFETを使用し,3
直結,2段直結回路のNF型で,低歪率,高S/N,周波数レスポンスの優れた回路となっていました。
また,トーンセレクター回路により,中音は,(750Hz,1.5kHz,3kHz)の3段階に調整できるように
中音のT.T.C.回路はディフィートもできるようになっていました。
フィルターは,12dB/octのNF型の専用アクティブ・フィルター回路を採用し,ハイフィルターは
12kHz・12dB/oct,ローフィルターは50Hz・12dB/octが備えられていました。
また,小音量時のためにラウドネススイッチ,一時的に音量をいっきに下げられる−20dBのミューティ
ングスイッチなども装備されていました。

テープモニター回路は2系統あり,相互コピーも可能となっていました。また, テープ2はピンジャック以外
にDIN端子も設けられていました。
PHONO端子は2系統あり,PHONO2は,カートリッジに応じて30kΩ,50kΩ,100kΩの3段階にイ
ンピーダンスが切り換えられるようになっていました。
スピーカー端子は3系統あり,A+B,A+Cが同時に鳴らせるようになっていました。また,ヘッドホン端子
は2つあり,1個はヘッドホンプラグを差し込むとスピーカーの音が切れる設計になっていました。DECK-1・2,
AUXにはレベルアジャスターが背面にあり,各入力レベルを揃えることができるようになって
いました。
その他,L・R独立のMIC端子も背面に装備されていました。また,プリアンプ部とパワーアンプ部はジャン
パーピンを外し,切り離して独立して使用可能になっていました。

また,4チャンネルでSQ方式によって先駆けていたサンスイらしく,4チャンネルアダプターを接続して4チャ
ンネルシステムを構成できる4chアダプター回路・端子が搭載されていました。この端子はテープデッキの録
音・再生モニターの端子としても使えるようになっていました。
さらに,変わったところでは,NR(ノイズリダクション)アダプターを接続することにより,接続した2台のテープ
デッキに同時に録音時のNRをきかせることができるNRアダプター接続回路・端子も装備されていました。再
生時には,テープモニタースイッチの切換で,どちらのテープデッキにもNRを動作させることができるようにな
っていました。

以上のように,AU-8500は,当時のサンスイのプリメインのトップモデルAU-9500にほぼ準じる内容をもっ
た弟機で,多機能で力強い音を持ったサンスイらしい1台でした。精悍なワイドブラックパネルとアルミ製の無
垢のツマミなど作りも高級プリメインとして仕上げられ,総重量も20kgを超える堂々たる1台となっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



パラレル・プッシュプル方式全段直結
OCLピュア・コン プリメンタリー回路
の大出力,低歪率設計
20〜20,000Hzで全高調波歪率,
混変調歪率とも0.1%以下を保証


◎全 高調波歪率,混変調歪率0.1%以下
 音のクオリティを追求し,豊かな音楽性を実現
◎パラレル・プッシュプル回路による
 低歪率・大出力のパワー段
◎超低域,超高域での安定性を重視
◎許容入力300mV(1kHz,THD0.5%以下)
 広ダイナミックレンジのイコライザー回路
◎高安定度,高出力を可能にした電源部
◎カレントリミッター,リレー,ヒューズによる
 大出力アンプにふさわしい完ぺきな保護回路
◎本格的なトリプルトーンコントロール(T.T.C.)
◎中音トーンセレクター
◎ロー/ハイフィルター
◎テープ・モニター,テープ・リプリント機能
◎4CHアダプター回路
◎ノイズ・リダクション(N.R.)アダプター接続回路
◎20dB減衰のミューティング・スイッチ
◎STEREO/REVERSE/NORMAL/
 MONO L+R/L/Rの5ポジション・モード
 セレクター
◎小音量時に威力を発揮する
 ラウドネス・スイッチ
◎ヘッドホン・ジャックは2系統
 1系統はスピーカーの音も切れます。
◎スピーカーシステムは3系統接続可能
◎PHONO2,入力インピーダンスが30kΩ
 50kΩ,100kΩに切換えられます。
◎DECK1,2,AUXには,各入力レベルが統
 一できるレベル・アジャスターがついています。
◎ハイ・インピーダンス型マイク入力端子
◎4個のACアウトレット
◎感触の良い,アルミ無垢の高級メタルツマミ



●規格

定格出力(定格歪率) 実効出力       :60W+60W
(両ch動作,定格歪率8Ω,20Hz〜20kHz)
実効出力(両ch動作)  :90W+90W(4Ω,1kHz)
                64W+64W(8Ω,1kHz)
実効出力(片ch動作)  :110/110W(4Ω,1kHz)
                 70/70W(8Ω,1kHz)
ミュージックパワー(IHF) 240W(4Ω,1kHz)
180W(8Ω,1kHz)
全高調波歪率(定格出力)
0.05%以下(プリアンプ部)
0.1%以下(メインアンプ部)
0.1%以下(総合)
混変調歪率(定格出力)
(70Hz:7kHz=4:1,SMPTE)
0.05%以下(プリアンプ部)
0.1%以下(メインアンプ部)
0.1%以下(総合)
パワーバンドウィズ(IHF,定格歪率)
5Hz〜40kHz
周波数特性(1W出力時)
3Hz〜50kHz+0dB,−1dB(メインアンプ部)
15Hz〜30kHz+0.2dB、−1dB(総合)
RIAA偏差
30Hz〜15kHz±0.5dB(PHONO-1,2)
負荷インピーダンス
4〜16Ω
ダンピングファクター
50(8Ω)
入力感度・入力インピーダンス(1kHz) PHONO-1:2.5mV(50kΩ)
PHONO-2:2.5mV(30,50,100kΩ)
(最大許容入力 300mV,全高調波歪率0.5%以下)
MIC:2.5mV(50kΩ)
TUNER:100mV(50kΩ)
AUX:100mV(50kΩ レベル調整可)
TAPE MONITOR-1(PIN):100mV(50kΩ レベル調整可)
TAPE MONITOR-2(PIN):100mV(50kΩ レベル調整可)
TAPE MONITOR-2(DIN):100mV(50kΩ)
4-CH .ADAPTOR:100mV(50kΩ)
N.R. ADAPTOR:100mV(50kΩ)
出力電圧・出力インピーダンス
TAPE REC-1(PIN):100mV(1.5kΩ)
TAPE REC-2(PIN):100mV(1.5kΩ)
TAPE REC-2(DIN):30mV(70kΩ)
4-CH ADAPTOR:100mV(1.5kΩ)
N.R. ADAPTOR:100mV(1.5kΩ)
プリアンプ:0.8V(1.5kΩ)
(最大出力,全高調波歪率0.5%以下)5V
クロストーク(定格出力1kHz)
PHONO-1,2、MIC:50dB以上
TUNER,AUX:50dB以上
MAIN AMP:60dB以上
ハム及びノイズ(IHF)
PHONO-1,2:75dB以上
MIC:65dB以上
TUNER,AUX:85dB以上
MAIN AMP:100dB以上
トーンコントロール
BASS(3dB STEP)±15dB(20Hz),
MIDRANGE(1dB STEP)±5dB(1.5kHz)
(トーンセレクター:DEFEAT,750Hz,1.5kHz,3kHz)
TREBLE(3dB STEP)±15dB(20kHz)            
ラウドネス (ボリューム位置、−30dB) +8dB(10kHz)
ロー・フィルター −3dB,50Hz(12dB/oct)
ハイ・フィルター −3dB,12kHz(12dB/oct)
使用トランジスター
トランジスター58,FET2,ダイオード33
ツェナーダイオード5
定格消費電力
140W(最大450VA)
寸法
500W×140H×347Dmm
重量
20.5kg

※本ページに掲載したAU-8500 の写真,仕様表等は,1974年1月の
SANSUIのカタログより抜粋したもので,山水電気株式会社に著作権が
あります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは
法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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