ＳＡＮＳＵＩ　ＡＵ-９９９
ＳＯＬＩＤ　ＳＴＡＴＥ　ＳＴＥＲＥＯＰＨＯＮＩＣ　ＡＭＰＬＩＦＩＥＲ ￥８５，０００

１９７０年に，サンスイが発売したプリメインアンプ。ＡＵ３桁シリーズの最上級機で，当時展開されていた「ＰＢシリーズ」
のプリメインアンプ中の最上級機でもありました。サンスイらしさあふれる精悍なブラックパネルにしっかりと物量が投入
された力作でした。

メインアンプ部は，２段差動増幅回路で，プラスマイナス２電源方式による全段直結，コンデンサーレス方式のＤＣ構成
となっており，直流域までＮＦＢが均等にかかり，超低域まで出力，ダンピングファクターが一定に確保され，スピーカー
の制御が低域までしっかりと実現されていました。また，全段のプッシュプル・バランスも自動制御により，電源変動や
過大入力などに対する安定性もしっかりと確保されていました。出力は，ミュージックパワーで１８０Ｗ（４Ω），実効出力
で７０Ｗ/７０Ｗ（４Ω）の出力と，１０〜３０，０００Ｈｚ（８Ω）の出力帯域幅が実現されていました。

プリアンプ部は，本質的にＮＰＮシリコントランジスターよりノイズの少ないＰＮＰシリコントランジスターを３段Ｅ-Ｅ　ＮＦ型
で採用していました。動作点が合理的になり，ローノイズ，低歪率，広ダイナミックレンジ，高安定度など，すぐれたイコ
ライザー回路が構成されていました。

カップリングコンデンサー（増幅段間結合用コンデンサー）には，回路インピーダンスの低いトランジスターアンプでは
マイラーコンデンサーやオイルコンデンサーではなく，通常電解コンデンサーが用いられます。しかし，電解コンデンサー
は位相歪みが大きく伝送特性が悪いため音声信号を通す場所には不向きであることが言われていまし た。 ＡＵ-９９９
では，極力直結回路として，コンデンサーを少なくするとともに，必要な部分は回路インピーダンスを高くしてマイラーコ
ンデンサーを用いていました。また，電解コンデンサーがどうしても必要な部分には，マイラー型を並列に使い，高域特
性を改善していました。

ＰＨＯＮＯ入力は２系統装備され，ＰＨＯＮＯ-２は，負荷抵抗が３０ｋΩ，５０ｋΩ，１００ｋΩの３段階に切り替えられるよ
うになっていました。その他の入力としてＴＵＮＥＲ，ＡＵＸ端子が装備され，ＰＨＯＮＯ-１，２，ＡＵＸには，リアパネルにそ
れぞれレベルアジャスターが備えられ，各入力のレベルが揃えられるようになっていました。ＴＡＰＥ端子は２系統装備
され，相互のダビングもスイッチ切り替えでできるようになっていました。さらに，ＴＡＰＥ端子にはＤＩＮ端子も装備されて
いました。また，標準プラグのＭＩＣ端子が設けられ，入力セレクターにもＭＩＣのポジションがありました。フロントパネル
上部にある入力セレクターのポジ ションがひと目で分かるＬＥＤの赤色のインジケーターもブラックパネルに映えてカッコ
イイものでした。
スピーカー端子は，Ａ，Ｂ，Ｃの３系統装備され，ＡとＢはＡ＋Ｂでの使用ができるようになっていました。Ｃ端子では，プリ
アンプとメインアンプを切り離しての独立使用もできるようになっていました。

トーンコントロールは，ＢＡＳＳ，ＴＲＥＢＬＥ以外にＭＩＤＲＡＮＧＥを加えたＴＴＣ（ＴＲＩＰＬＥ　ＴＯＮＥ　ＣＯＮＴＲＯＬ）が採用さ
れていました。クリックストップ付のツマミにより，ＴＲＥＢＬＥ　ＢＡＳＳは２dBステップ， ＭＩＤＲＡＮＧＥは１dBステップで調整
が可能となっていました。また，それぞれにＤＥＦＥＡＴ及び２種類の上昇・下降点が切り替えられるトーンセレクターが装
備されていました。
その他，機能的には，ＮＦ型のローフィルター，ハイフィルター，２０dBのミューティングスイッチ，ＭＯＤＥセレクターなどが
搭載されていました。変わった機能として，モノーラルのシグナルを聴きながらスイッチを入れると正常にＬ・Ｒバランスが
とれているときは音がなくなるというステレオバランス・チェック回路が装備されていました。

以上のように，ＡＵ-９９９は，当時のサンスイのプリメインアンプの最上級機として，音質の面でも機能の面でもしっかり
と物量と技術が投入された力作で，精悍なデザイン同様に力強く厚みのある音を持ち，高い評価を受けました。そして，
このモデルはＡＵ-９５００へ とつながっていきました。

以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。

◎超低音域まで歪まない全段直結のメインアンプ部
◎小出力から大出力まで歪まないハイパワー
◎超低ノイズのプリアンプ部
◎カップリング・コンデンサー（増幅段間結合用コンデ
　ンサー）には電解コンデンサーを追放しました。
◎新しい構想による”ＴＴＣ”を採用
◎ＴＴＣにトーン・セレクターがつきました
◎プリ・メインアンプ共に単独使用が可能
◎スピーカー・システムは３系統，マルチチャンネル化
　しても全域用スピーカー・システムも切替えて使えます
◎２台のテープデッキをフルに活用できます
◎ステレオバランス・チェック回路
◎ＰＨＯＮＯ-１，２，ＡＵＸにはレベル・アジャスター
◎最高級アンプに必要なすべての回路
●テープデッキの接続を簡単にするＤＩＮコネクター
●切れのよいＮＦ型のローフィルターとハイフィルター
●プログラムソースのインジケーターつき（ＭＩＣ　ＰＨＯＮＯ-１，２
　ＡＵＸ，ＴＵＮＥＲ）
●レバースイッチ式チューナー入力セレクター
●標準型フォーン・プラグが使えるマイク入力ジャック
●ヘッドホーン・ジャック
●モードセレクターは，ＳＴＥＲＥＯ-ＲＥＶ，ＳＴＥＲＥＯ-ＮＯＲＭ
　ＭＯＮＯ-Ｌ＋Ｒ，ＭＯＮＯ-Ｌ．ＭＯＮＯ-Ｒ
●スピーカー出力端子はワンタッチ方式の簡単で絶対安全な端子
●ボリュームを使わなくとも音域のすべてを２０dB減衰できる
　ミューティング・スイッチ

●ＳＰＥＣＩＦＩＣＡＴＩＯＮＳ●
　　　　　　　　　　　　

■メインアンプ部■

定格出力	ミュージックパワー（ＩＨＦ）：１８０Ｗ（4Ω），１４０Ｗ（8Ω） 実効出力（左/右）　　　　：７０Ｗ/７０Ｗ（4Ω） 　　　　　　　　　　　　　　　  ５０Ｗ/５０Ｗ（8Ω）
全高調波歪率	０．４％以下（定格出力）
混変調歪率（ＳＭＰＴＥ） （６０Ｈｚ：７，０００Ｈｚ＝４：１）	０．４％以下（定格出力）
パワーバンドウィズ（ＩＨＦ）	１０〜３０，０００Ｈｚ（８Ω）
周波数特性	５〜１００，０００±１dB（常用出力にて）
チャンネル・セパレーション	５０dB以上（１，０００Ｈz，定格出力）
ハム及び雑音（ＩＨＦ）	１００dB以上
入力感度	１Ｖ（定格出力）
入力インピーダンス	４０kΩ以上
負荷インピーダンス	４〜１６Ω
ダンピング・ファクター	４５（８Ω負荷）

■プリアンプ部■

出力電圧	最大出力：５Ｖ 定格出力：１Ｖ
全高調波歪率	０．１％以下（定格出力電圧）
周波数特性	１５〜７０，０００Ｈz＋０．５dB−１．５dB
ハム及び雑音（ＩＨＦ）	ＰＨＯＮＯ−１,２：８０dB以上 ＭＩＣ　　　　　　 ：８０dB以上 ＴＵＮＥＲ，ＡＵＸ：８５dB以上
入力感度 （１，０００Ｈｚ，定格出力電圧）	ＰＨＯＮＯ−１　　　　：２ｍＶ（５０ｋΩ） ＰＨＯＮＯ−２　　　　：２ｍＶ（３０ｋΩ，５０ｋΩ，１００ｋΩ） ＭＩＣ　　　　　　　　　 ：３ｍＶ（５０ｋΩ） ＴＵＮＥＲ　　　　　　　：２００ｍＶ（５０ｋΩ） ＡＵＸ　　　　　　　　　 ：２００ｍＶ（５０ｋΩ） ＴＡＰＥ　ＰＬＡＹ（ｐｉｎ）：２００mV(５０kΩ） ＴＡＰＥ　ＲＥＣＯＲＤＥＲ（ＤＩＮ）：２００ｍＶ（５０ｋΩ）
録音出力	ＴＡＰＥ　ＲＥＣ（ｐｉｎ）：２００ｍＶ ＴＡＰＥ　ＲＥＣＯＲＤＥＲ（ＤＩＮ）：３０ｍＶ
イコライザー	ＰＨＯＮＯ：ＲＩＡＡ　ＮＦ型 ＭＩＣ　　　：Ｆｌａｔ　ＮＦ型
トーン・コントロール	ＢＡＳＳ　　　　：２０Ｈｚ＋１２dB，−８dB ＭＩＤＲＡＮＧＥ：１，０００Ｈｚ，２，０００Ｈｚ＋５dB，−５dB ＴＲＥＢＬＥ　　：２０，０００Ｈｚ＋１２dB，−８dB
トーン・セレクター	ＢＡＳＳ：　　　：ＤＥＦＥＡＴ，２００Ｈｚ，４００Ｈｚ ＭＩＤＲＡＮＧＥ：ＤＥＦＥＡＴ，１，０００Ｈｚ，２，０００Ｈｚ ＴＲＥＢＬＥ　　：ＤＥＦＥＡＴ，６，０００Ｈｚ，３，０００Ｈｚ
スイッチ	ロー・フィルター：２０Ｈz，−２０dB（１２dB/ｏｃｔ，ＮＦ型） ハイ・フィルター：２０，０００Ｈz，−１８dB（１２dB/ｏｃｔ，ＮＦ型） ミューティング：−２０dB
ＭＯＤＥ	ＳＴＥＲＥＯ-ＲＥＶ，ＳＴＥＲＥＯ-ＮＯＲＭ ＭＯＮＯ-Ｌ＋Ｒ，ＭＯＮＯ-Ｌ，ＭＯＮＯ-Ｒ
ＳＯＵＲＣＥ　ＳＥＬＥＣＴＯＲ	ＭＩＣ，ＰＨＯＮＯ-２，ＰＨＯＮＯ-１，ＡＵＸ
ＴＵＮＥＲ　ＳＥＬＥＣＴＯＲ	ＯＦＦ，ＯＮ
ＴＡＰＥ　ＭＯＮＩＴＯＲ	ＰＬＡＹＢＡＣＫ　ＤＥＣＫ-１，ＳＯＵＲＣＥ，ＰＬＡＹＢＡＣＫ　 ＤＥＣＫ-２
ＴＡＰＥ　ＴＯ　ＴＡＰＥ　ＲＥＰＲＩＮＴ	ＤＥＣＫ-１ ｔｏ ２，ＳＯＵＲＣＥ  ＲＥＣＯＲＤ，ＤＥＣＫ-２ ｔｏ １
ＳＰＥＡＫＥＲ　ＳＥＬＥＣＴＯＲ	ＯＦＦ，ＳＹＳＴＥＭ-Ａ，ＳＹＳＴＥＭ-Ｂ，ＳＹＳＴＥＭ-Ａ＋Ｂ ＳＹＳＴＥＭ-Ｃ（ＰＲＥ　ａｎｄ　ＭＡＩＮ　ＳＥＰＡＲＡＴＥＤ）
ＢＡＬＡＮＣＥ　ＣＨＥＣＫ	ＮＯＲＭＡＬ，ＴＥＳＴ
その他の付加装置	録音ＤＩＮコネクター，ヘッドホンジャック ＰＨＯＮＯ-１/ＰＨＯＮＯ-２/ＡＵＸ入力レベル調整 ワンタッチ・スピーカー・コネクター，ソース・セレクターインディケーター
シリコン・トランジスター	４１
ダイオード	８
電源電圧	１００Ｖ　５０/６０Ｈｚ
消費電力	３７０Ｗ
寸法	４６１．５Ｗ×１５５Ｈ×３１６Ｄmm
重量	１７．５ｋｇ