LUXMAN M-12
DC STEREO POWER AMPLIFIER ¥150,000
1977年に,ラックスが発売したステレオパワーアンプ。セパレートアンプ,チューナーからなる
「12シリーズ」のパワーアンプで,「12シリーズ」に共通する薄型の筐体で,ブラックボックス風
の外観にヒートシンクとパワートランジスターを前面に見えるように出した独特のデザインが特
徴的な1台でした。

M-12は,同シリーズのプリアンプ同様に,DCアンプ構成となっていました。当時,カップリング
コンデンサーを排したDCアンプ構成が主流となりつつありました。歪み低減のためにNFBをか
けるとき,NFBループ内に含まれる大容量コンデンサーの影響で時間的なずれが生じ,歪み
低減効果が不十分になったり,トランジェント的な歪みの原因になったりするという問題がありま
した。この点に着目してNFBループ内の大容量コンデンサーを排除したDCアンプ構成がとられ
ていました。

回路構成は,デュアルFET採用の差動回路と,これを補助する回路をブロック化した独自の
DML-ICの性能を生かした設計となっていました。
DML-IC(Dual Monolithical Linear-IC)は,初段の差動増幅用FETとこれを補助するカ
スコード回路,カレントミラー回路,定電流回路などをそっくりそのままブロック化することにより
外部との遮断の完璧化を期して開発されたもので,温度など外部条件の変化に伴うDCドリフト
の発生に対処し,DCアンプの安定性をACアンプを凌ぐレベルまで引き上げたものとなってい
ました。



出力段には,パラレル・プッシュプル接続を採用し,8Ω負荷,両チャンネル同時動作,20Hz
~20kHzの条件で,80W+80Wの実効出力を余裕をもって実現していました。パラレルプッ
シュプル方式とすることで,トランジスター1石あたりの電流を小さく設定し,Pc(コレクター損失)
が大きくとれ,すぐれた高域特性を確保し,電流に対するリニアリティを高めていました。また,
出力段には,特にスイッチングスピードの速いトランジスターを厳選して使用するとともに,AB
クラス動作をさせるなど,回路的な工夫を施し,高域におけるノッチ歪みの追放を図っていまし
た。

また,プリドライブ段の高域の負荷条件を改善するために,定電流駆動付のエミッターフォロ
アー回路を設けるとともに,Aクラス動作のプリドライブ段がABクラス動作のピュアコンプリメン
タリー出力段の影響を受けないように交流的に絶縁する役目のエミッターフォロアー回路を設
けた,DCアンプ構成となっていました。

電源部は,2個の電源トランスと±2電源用の音質改良型大容量電解コンデンサー(10,000
μF×2)を組み合わせ,さらに,プリドライブ段の定電圧電源までも左右を完全に分離した左
右独立型電源としていました。これにより,電源部を介した左右チャンネル間の相互干渉を排
除していました。

ユニークなブラックボックス風の外観デザインは,通常と逆で,前面パネル部にはヒートシンク
とパワートランジスターが配置され,背面パネルに電源スイッチ,アッテネーター,入力コンデン
サーIN/OUTスイッチが設けられていました。これは,パワーアンプはプリアンプと異なり,いっ
たんセッティングしてしまえばレベルセットなどの機能を操作することはほとんどないという想定
でのデザインでした。

以上のように,M-12は,シンプルで薄型の筐体の中に,しっかりと技術を投入したパワーアン
プで磨かれたようなすっきりした音は,ラックスらしさをしっかりともつものでした。


LUXMAN B-12
DC MONAURAL POWER AMPLIFIER ¥125,000


M-12とほぼ同一の筐体と回路構成によるモノラルパワーアンプのB-12も発売されました。プ
リドライブ段までの回路構成は,ほぼ同一で,出力段はトリプルプッシュプル構成となっており,
8Ω負荷,20Hz~20kHzの条件で,150Wの大出力を実現していました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



◎一見,ブラックボックス風の
 ユニークなパワーアンプ
◎実効出力は80W+80W
 完璧なノッチ歪み対策
◎ラックス的発想による
 DCアンプ構成
◎完全な左右独立型電源
◎DCドリフと対策用のDML-IC
 と厳選された使用パーツ群




●SPECIFICATIONS●

   M-12  B-12
型式  ステレオパワーアンプ  モノラルパワーアンプ 
連続実効出力  80W+80W(8Ω負荷,両ch同時,20Hz~20kHz)  150W(8Ω負荷,20Hz~20kHz) 
全高調波歪率  0.006%以下(8Ω負荷,80W,20Hz~20kHz) 0.006%以下(8Ω負荷,150W,20Hz~20kHz) 
混変調歪率  0.006%以下(8Ω負荷,80W,60Hz:7kHz=4:1)   
出力帯域幅  5Hz~100,000Hz(8Ω,0.1%,-3dB)   
周波数特性  DC~100,000Hz(-1dB以内)  DC~100,000Hz(-1dB以内) 
入力感度  600mV  900mV 
入力インピーダンス  20kΩ   
SN比  110dB以上(IHF-Aカーブ補正,入力ショート)  110dB以上(IHF-Aカーブ補正,入力ショート) 
セパレーション  80dB以上(20Hz~20kHz)   
D・F  150以上(8Ω,1kHz)   
保護回路  DCドリフト検出によるスピーカー保護回路
過電流防止回路 
DCドリフト検出によるスピーカー保護回路
過電流防止回路 
付属装置 入力コンデンサーIN-OUT切替
左右独立型アッテネーター 
入力コンデンサーIN-OUT切替
アッテネーター 
電源電圧  AC100V(50Hz/60Hz)  AC100V(50Hz/60Hz)  
消費電力 200W(電気用品取締法の基準による)   
外形寸法 436W×95H×328Dmm  436W×95H×328Dmm  
重量  14.5kg  11.5kg 
※本ページに掲載したM-12,B-12の写真,仕様表等は
1978年2月のLUXMANのカタログより抜粋したもので,
ラックス株式会社に著作権があります。したがって,これら
の写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられ
ていますのでご注意ください。

  
 
 
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