ＳＡＮＳＵＩ ＢＡ-３０００
ＳＴＥＲＥＯ ＰＯＷＥＲ ＡＭＰＬＩＦＩＥＲ ￥１９０，０００
ＳＡＮＳＵＩ ＢＡ-３０００
ＳＴＥＲＥＯ ＰＯＷＥＲ ＡＭＰＬＩＦＩＥＲ ￥１９０，０００
１９７５年に，サンスイが発売したパワーアンプ。同じ年，サンスイは，１７０Ｗ＋１７０Ｗも
の大出力を誇る超ド級ともいえる大型のプリメインアンプＡＵ-２００００を発売しました。こ
のＡＵ-２００００のパワー部をベースに強化させたともいえるパワーアンプがＢＡ-３０００でし
た。
ＢＡ-３０００の回路構成は，差動１段＋アクティブロード付Ａ級増幅＋ドライブ２段とトリプル
プッシュプル構成，全段直結ピュアコンプリメンタリーＯＣＬ回路の出力段となっていました。
スイッチングタイムや帰還容量リニアリティを検討した新開発の１５０Ｗ級のパワートランジ
スタをチャンネルあたり６個使用したトリプルプッシュプル構成で，１７０Ｗ＋１７０Ｗの大出
力と，特性の揃ったパワートランジスターにより，小出力時の歪みやＳＮ比が改善された
０．０５％以下の低歪率を実現していました。
また，リアパネルのＢＴＬ接続スイッチを切り替えることでＢＴＬ接続でのＭＯＮＯ動作が可能
で，３４０Ｗ（２０Ｈｚ～２０ｋＨｚ，歪率０．０５％以下）という大出力モノラルアンプとして使える
用になっていました。
大出力を支える電源部は，大容量のトランスと，大出力用に開発した２２，０００μＦ×２の
大容量電解コンデンサーを搭載した強力なものとなっていました。電源トランスには，漏洩
磁束が少なく，レギュレーションがすぐれ，ＥＩトランスなどに比べて大幅に小型化が可能な
高効率のトロイダルトランスが採用され，すぐれた低域特性や過渡特性が実現されていま
した。また，ドライバー段とバッファー段には安定した±２電源を採用し，負荷変動や電源
電圧変動の影響を抑えていました。
パワートランジスターの発熱を効果的に放散し，大出力を連続的に安定して駆動するため
に，煙突効果を利用したヒートシンカーを採用していました。このヒートシンカーは，包絡体
積１，２００ｃｃの新開発対流放熱器を４個搭載したもので，常に下部から冷たい空気を吸
収するという一種の強制空冷作用を持つ煙突効果を最大限に利用し，大出力時の長時
間駆動にも十分余裕を持った性能を実現していました。
内部レイアウトは，ドライバー段，出力段，大型電源部をそれぞれ完全に分離したブロック
別構成の合理的な内部レイアウトがとられていました。これにより，各ブロック段での相互
干渉や影響を防止し，各ブロックを最短距離で機能的に結ぶことで，高域特性の劣化を招
くシールド線を極力排除していました。
ＯＣＬアンプであるＢＡ-３０００に不可欠な保護回路は３重の回路が採用されていました。
パワートランジスターの保護としては安全動作領域（ＡＳＯ）の検知によるカレントリミッター
回路とヒートシンカーに組み合わせた温度検出回路があり，スピーカー保護のためには
直流検出回路が装備されていました。
フロントパネル上には，出力レベルや左右バランスのチェックができる大型のパワーメー
ターが装備されていました。出力表示は０．０１Ｗ～１７０Ｗ，デシベル表示は－４０dB～
＋５dBと広範囲なものとなっており，ＩＣ使用の対数圧縮回路を採用した実効値表示型で
パルス的信号や小出力時の信号に対しても追従して，瞬時値を直読できるようになって
いました。
機能的には，超低域ノイズをカットする１５Ｈｚ・１２dB/octのシャープな特性をもつＮＦ型の
サブソニックフィルターが搭載されていました。その他，Ｌ・Ｒ独立のレベルコントロールが
装備され，スピーカー出力は，Ａ，Ｂ２系統装備され，フロントパネルのスイッチで，単独ま
たは同時使用が切り替えられるようになっていました。
以上のように，ＢＡ-３０００は，大電流を増幅できるトリプルプッシュプルの出力段，大型
の電源部など，正攻法で物量を投入したパワーアンプで，厚みのあるしっかりした音は
アンプのサンスイの実力を示したものでした。
以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。
大出力時の迫力，小出力時の繊細さを
ともに表現するハイパワーアンプ。
◎１７０Ｗ＋１７０Ｗ，０．０５％以下
回路技術が結実した特性
◎理想のトランス
トロイダルトランスを搭載
◎包絡体積１，２００ｃｃ×４
効率的ヒートシンカー
◎アンプ，スピーカーを守る
３重の保護回路
◎Ｗ，ｄＢ表示
正確な大型パワーメーター
◎可聴帯域外の低域をカット
サブソニックフィルター
◎合理的な内部レイアウト
ブロック別構成
●フロントパネルで２組のスピーカーシステムを
単独もしくは同時使用の切り替えができます。
●１台ごとに実測データを添付しています。
●ＴＥＣＨＮＩＣＡＬ ＳＰＥＣＩＦＩＣＡＴＩＯＮＳ●
| 定格出力 | 実効出力（両ＣＨ動作，２０Ｈｚ～２０ｋＨｚ，Ｔ.Ｈ.Ｄ.０．０５％以下）１７０Ｗ＋１７０Ｗ（４，８Ω） 実効出力（両ＣＨ動作，１ｋＨｚ，Ｔ.Ｈ.Ｄ.０．０３％以下）１７０Ｗ＋１７０Ｗ（４，８Ω） 実効出力（ＢＴＬ接続，２０Ｈｚ～２０ｋＨｚ，Ｔ.Ｈ.Ｄ.０．０５％以下）３４０Ｗ（８，１６Ω） 実効出力（ＢＴＬ接続，１ｋＨｚ，Ｔ.Ｈ.Ｄ.０．０３％以下）３４０Ｗ（８，１６Ω） |
| 負荷インピーダンス | （Ａ，Ｂ ２チャンネル）４，８，１６Ω （Ａ，Ｂ ＭＯＮＯ）８，１６Ω （Ａ＋Ｂ ２チャンネル）８，１６Ω （Ａ＋Ｂ ＭＯＮＯ）１６Ω |
| パワーバンドウィズ（ＩＨＦ） | ５Ｈｚ～３０ｋＨｚ（８Ω） |
| 全高調波歪率 | （定格出力）０．０５％以下 （１／２定格出力）０．０３％以下 |
| 混変調歪率 （７０Ｈｚ：７ｋＨｚ＝４：１ＳＭＰＴＥ） |
０．０５％以下 |
| 周波数特性（１Ｗ時） | ５Ｈｚ～１００ｋＨｚ，＋０dB，－１dB |
| ダンピングファクター | １００（８Ω） |
| チャンネルセパレーション （定格出力，１ｋＨｚ） |
６０dB以上 |
| ハム及びノイズ（ＩＨＦ） | １００dB以上 |
| 入力感度及びインピーダンス（１ｋＨｚ） | ７００ｍＶ（５０ｋΩ） |
| サブソニック・フィルター | －３dB（１５Ｈz・１２dB/ｏｃｔ） |
| 定格消費電力 | ３５０Ｗ |
| 最大消費電力 | １，１００Ｗ |
| 寸法 | ４６０Ｗ×１７８Ｈ×４００Ｄmm |
| 重量 | ２２．６ｋｇ |
※本ページに掲載したＢＡ-３０００の写真，仕様表等は１９７５年７月
のＳＡＮＳＵＩのカタログより抜粋したもので，サンスイ電気株式会社
に著作権があります。したがって，これらの写真等を無断で転載・
引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
★メニューにもどる
★セパレートアンプ１０のページにもどる
現在もご使用中の方，また，かつて使っていた方。あるいは，思い出や
印象のある方，そのほか，ご意見ご感想などをお寄せください。
k-nisi@niji.or.jp