NIKKO C-201
ALL FET PREAMPLIFIER ¥180,000
1976年に,日幸電子が発売したプリアンプ。日幸電子は,1935年に創業した日幸電機製作所
のオーディオブランドで,1962年に,日本初のオールトランジスタステレオアンプをオーディオフェ
アで発売するなど,当時すぐれたオーディオ機器を発売していました。そんな日幸電子がNIKKO
ブランドで発売したプリアンプの最高級機がC-201でした。

C-201の最大の特徴は,本質的に歪が少なく,歪率その他あらゆる特性において,真空管,通常
のトランジスターに比べて有利とされるFETで信号系すべてを構成したオールFETプリアンプである
ことでした。

イコライザー回路は,初段ローノイズ2段差動3段増幅終段ソースフォロワー回路で,RIAA素子を
間にはさんだ2段増幅としていました。ここでNFB素子によってRIAAカーブを得るNF型は,低域で
NFBが浅くなり,高域ではNFBがかかりすぎ,音質的なデメリットも生じていました。そこで,C-201
では,CR型が採用されていました。CR型は,CR時定数によってRIAAカーブを得るため,ユニット
アンプの位相の回りがなく,音質面で有利でした。しかし,NF型に比べてSN比とダイナミックレンジ
において不利な面がありました。
C-201では,ローノイズFET及びノイズ成分の少ない金属皮膜抵抗等を使用するなど,使用部品
を厳選することですぐれたSN比を実現していました。
また,ダイナミックレンジについては,初段ユニットアンプに高域の大入力に耐えるためにVDS200V
の高耐圧FETを採用することで,大きなダイナミックレンジを確保していました。終段も高耐圧及び
初段差動ローノイズFETを使用して,SN比を向上させ,低歪率を実現していました。

PHONO入力は,3系統搭載され,PHONO1は,負荷抵抗及び入力容量を,PHONO2は,入力
容量を,PHONO3は,負荷抵抗を各々可変できるようになっていました。カートリッジの負荷抵抗
は,10kΩ,33kΩ,47kΩ,68kΩ,100kΩの5段階,入力容量は,0pF,47pF,150pFの
3段階に切り換えられるようになっていました。さらに,ディスクだけでなく,テープの再生を磁気ヘッ
ドからダイレクトに行えるようNAB補償回路を設け,さらにMIC用のFLAT回路も設けられていまし
た。(オーディオ用オープンリールデッキの時代には,録再アンプをもたないトランスポートのみのも
のをテープデッキと称していたことがありました。そうしたテープデッキのヘッドからの出力をそのま
ま接続できる機能は,1960年代のアンプには搭載される例が見られました。しかし,1970年代
には珍しい機能でした。)

フラットアンプ部は,イコライザーアンプと同様に,初段ローノイズ2段差動3段増幅終段ソースフォ
ロワーの回路構成となっていました。裸特性を重視した回路設計とFET素子自体の特性を十分に
生かして低歪率を実現していました。

ボリュームは,フラットアンプ部の入出力側をコントロールする精度の高い21点クリック式4連ボ
リュームが搭載されていました。これにより,イコライザーアンプ,フラットアンプのノイズは低減さ
れ,実使用時のSN比が向上していました。さらに,このボリューム使用時のインピーダンス変化
を抑え,送り出しインピーダンスを低くするため,FETによるソースフォロワーを追加していました。
また,±50Vの電圧をかけることでダイナミックレンジを拡大していました。

電源部は,イコライザーアンプとフラットアンプの電源を,トランスの巻線から別巻線とし,定電圧
電源としており,干渉歪みを抑えていました。これらの定電圧電源回路は誤差増幅トランジスター
からなり,安定した定電圧を各回路に供給していました。本格的な2組の安定化電源に加え,大
容量のコンデンサーを電源部各所に使用していました。こうした大容量の本格的安定化電源は
安定にも時間がかかるため,電源ON時は約10秒間,出力とアンプ回路を切り離し,電源OFF
時には瞬時に出力を切り離す保護回路を備え,インジケーターディスプレイ回路により,電子的
にパワーインジケーターが赤から緑に変わり,リレーの動作を知らせるようになっていました。



機能的には,信号経路の単純化のためにトーンコントロール回路が省略されている他は,プリア
ンプとしてオーソドックスにまとめられていました。
入力は,PHONOがCH1,CH2,CH3の3系統,TUNER,AUX,入出力はTAPE2系統が装
備され,TAPE2系統は相互ダビングが可能となっていました。PHONOのCH2は,TAPE入力
も考えレベル調整が装備されていました。その他,-20dBのミューティング,16Hzのサブソニッ
クフィルター,MONO,STEREO,REVのモード切換,バランス調整が装備されていました。

以上のように,C-201は,オーソドックスに作り上げられたプリアンプで,オールFET構成など,
パーツの面でもしっかりと煮詰められ高い完成度を実現していました。国産プリアンプ中最も薄い
といわれたスマートな筐体のイメージ通りの歪み感の少ないすっきりとした音も,すぐれた性能を
感じさせるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



オールFETプリアンプリファイアー
C-201

新製品C-201は本質的に高次歪がなく,歪率,そ
の他あらゆる特性の面で,従来の真空管,トラン
ジスター素子よりも非常に有利とされるFETで,
信号系を全て低歪率で構成したオールFETプロ
フェッショナルプリアンプです。




●C-201定格●

入力感度/インピーダンス  CH1,CH2:2mV/22,333,47,68,100kΩ
TUNER:100mV
AUX1,2:100mV 
入力容量  CH1,CH2:150,47PF 
出力レベル/インピーダンス  OUTPUT1,2:1V/600Ω
TAPE OUT1,2:100mV/600Ω 
周波数特性  PHONO1,2:20Hz~20kHz±0.2dB以内
TUNER,AUX:10Hz~20kHz±0.1dB以内 
SN比
(IHF-Aネットワークショートサーキット)
PHONO1,2:72dB
TUNER:100dB
AUX:100dB
TAPE1,2:100dB 
歪率  PHONO1,2:0.01%以下(定格出力時) 
残留ノイズ  20μV 
PHONO最大許容入力  400mV 
電源電圧  AC100V 50/60Hz 
消費電力  40W 
外形寸法  482W×50H×430Dmm 
重量  5.8kg 
使用半導体  FET38,トランジスター21,ダイオード22 
※本ページに掲載したC-201の写真,仕様表等は1976年の
 NOKKOのカタログより抜粋したもので,日幸電機製作所に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載
 ・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

  
 
 
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