C-300の写真
LUXMAN C-300
STEREO CONTROL CENTER ¥220,000

1980年に,ラックスが発売したコントロールアンプ。前年に発売された高級プリアンプC-5000A
弟機といった存在で,コントロールアンプとしての機能と音質のバランスをとった設計で,比較的手の
届きやすい価格を実現しようとした中級機ながら,その中にラックスらしさが込められていました。

C-300の最大の特徴は,「デュオ・ベータplusX」の搭載にありました。これは,ラックス自慢の「デュオ
ベータ回路」に加え,新たに電源部制御に「plusX」を搭載したもので,基本的には,NFB等において過
剰な制御を避け,バランスのとれた適度な制御による音質向上を図ろうという設計になっていました。
「デュオ・ベータ回路」とは,2つのフィード バック回路(NFB回路とDCサーボ回路)を巧みに組み合わせ
高音質を実現しようというもので,電気用語で フィードバック回路を意味するギリシャ語「β(ベーター)」
と音楽用語でイタリア語で二重奏を意味する 「Duo」を組み合わせて名付けられていました。「デュオ・ベー
タ回路」は,大量のNFB(負帰)をかけて特性を改善を図ることをやめ,アンプの裸特性を向上させ,そこ
に適量のNFBをかけ,DCサーボにより,可聴帯域外からの制御でアンプの動作の安定性と高音質を確
保するという技術でした。
「plusX」は,電源部の制御に「デュオベータ」の適量フィードバックの考え方を取り入れたものでした。電
源部は電圧が安定で,低インピーダンスであることが理想で,通常のオーディオアンプの安定化電源で
は,出力端のズレを検出して強力にフィードバックをかけてインピーダンスを下げるという手法がとられて
いますが,音の面では抑圧感が感じられたりするなどのデメリットも指摘されていました。逆にフィードバッ
クをかけない電源では,音質的にメリットはありますが,低域にいくほどインピーダンスが上昇し,低域の
ダンピングが甘くなり,直流域での安定性が得られないなどの問題が出てきます。「plusX」では,裸特性
の状態で強力な低インピーダンスの電源とし,中高域には,この裸特性をいかした適度な制御をかけ,低
域からは,アンプ回路に応じた制御を設定し,安定かつ過度な制御に頼らない電源部としていました。

「plusX」のもととなる電源回路は,トランスの巻線から左右完全独立となっており,整流回路・定電圧回路
まで含めてツイン・モノラル構成で,電源部を介した左右チャンネル間の干渉を防いでいました。トランスの
1次側,2次側ともに巻線方向を揃えるなど,徹底して音質管理が行われ,電源トランスやコンデンサには
大型・大容量のものを採用して,強力かつ低インピーダンスの電源部としていました。

イコライザ回路は,初段に高GmのローノイズデュアルFETによるカスコードブートストラップ入力,カレント
ミラー負荷で低歪率と高SN比を実現し,2段目には動抵抗回路を配した高fT・PNPトランジスタによるカ
スコード定電流負荷増幅回路が構成されていました。出力段には,高fTトランジスタによるA級プッシュプ
ル構成として充分に電流を流し,ローインピーダンス化が図られ,NFB素子の負荷にも余力が確保され
ていました。
イコライザ回路は,MCカートリッジにも対応し,本格的なMCヘッドアンプが搭載されていました。MCヘッド
アンプもDC構成がとられ,初段がFETパラレル入力のダイレクトカップル型とされ,出力部はA級ピュアコ
ンプリメンタリー・プッシュプルとされ,専用の定電圧回路を近接に配置して,ノイズと電源インピーダンスを
低く抑えていました。
フラットアンプは,基本回路はイコライザ回路とほぼ同じ構成で,DCサーボ回路にはFET入力による高性
能オペアンプを搭載し,すぐれたDC安定度が確保され,出力コンデンサが排され,音質の面での向上が
図られていました。

C-300の主要パーツ
C-300の内部コンストラクション

パーツやコンストラクションの面でも音質重視の選択,設計がなされていました。各段のカップリングコンデ
ンサや電源のコンデンサには,良質のフィルムコンデンサを採用し,小容量のスチロールコンデンサをパラ
レル接続して使用し,極性を揃えて音質管理がなされていました。また,アルミダイキャストケース入り連続
可変型精密ディテントボリューム,無酸素銅500芯シールドケーブルなど,要所に高品質なパーツが採用さ
れていました。
シャーシ内部では,MC入力のピンジャックからINPUTセレクタを通らずダイレクトにMCヘッドアンプへ,TAPE
ダビングのスイッチはリモートスイッチが採用され,ピンジャックに近接してスイッチを配置など,単純化され
た信号経路に応じた端子,スイッチ,ボリュームなどの配置が行われていました。また,基板の対向面に磁性
体が近付かないようにして,磁性歪みが排除されていました。天然木のキャビネットの裏面にはアルミ箔が貼ら
れ,シールド効果を持たせるように配慮され,入出力端子にはすべて金メッキが施されていました。

機能的には,音質重視のコントロールアンプとして,音質に関わる機能をしっかりと搭載していました。トーンコ
ントロールは,TREBLEとBASSが搭載され,「ターンオーバーシフト型」という,変化量と変化し始める周波数
が連動して動作するもので,自然なトーンカーブが得られ,聴感的にも自然で効果的な音質調整が可能な,ラッ
クス独自の方式でした。その他,パッシブ素子のみで構成されたツインT型のサブソニック・フィルタ,PHONO
再生時などにTAPE系統を切り離して音質劣化を抑えるREC OUTスイッチ,ACコンセントの極性を表示する
ラインフェーズセンサーなどが装備されていました。

以上のように,C-300は,ラックスのセパレートアンプの主力となる中級機として,持ち前の技術が投入され,
しっかりとラックストーンを楽しめるコントロールアンプとなっていました。上級機C-5000Aよりもやや薄型なが
ら,これもラックスらしいウッドキャビネットに包まれた優美なデザインも魅力的でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



「脱過剰」の思想で,伸びやかな音質。
デュオ・ベータplusX搭載。


”適切制御”の思想デュオ・ベータplusX
「適量NFB」・「DCサーボ」のデュオ・ベータ回路と,
強化電源による余裕ある制御のplusXを搭載。

●アンプ回路のNFBを,音質向上のために適切に制御する,
 デュオ・ベータ回路。
●電源部の帰還回路にも”適切制御”の思想を導入した,
 デュオ・ベータplusX。


余裕ある制御を実現した優れた裸特性
動抵抗回路を組合わせたカスコード・アンプ。
出力段は,ピュア・コンプリメンタリP.P.回路を採用。

●イコライザ段,フラット段とも練上げた回路構成でオープン
 ループ特性を向上。
●左右独立電源による音質重視型MCヘッドアンプ。


強力な電源・厳選した素材
電源部は余裕をもたせ,素材は音質重視で吟味。

●余裕ある大容量で,ゆったりした制御力。
 ツイン・モノーラル構成の強化型電源部。
●ヒアリングを主体に,徹底して吟味したぜい沢な
 素材を,音質対策のうえ使用。


信号経路の単純化を徹底
必要充分な機能を搭載して,配線経路を単純化。

聴感重視の音質調整機能
●新開発トーン・コントロール
●ライン・フェーズ・センサ
●サブソニック・フィルタ




●SPECIFICATIONS●

出力電圧
pre.out:標準1V,最大20V
rec.out:標準140mV,最大20V
出力インピーダンス
pre.out:47Ω
rec.out:100Ω
全高調波歪率
phono(MC,MM):0.005%以下(rec.out;105mV,20〜20kHz)
tuner,aux:0.005%以下(pre.out;1V,20〜20kHz)
monitor-1,-2,:0.005%以下(pre.out;1V,20〜20kHz)
混変調歪率
phono(MC,MM):0.002%以下(rec.out;140mV,60Hz:7kHz=4:1)
tuner,aux:0.002%以下(pre.out;1V,60Hz:7kHz=4:1)
monitor-1,-2:0.002%以下(pre.out;1V,60Hz:7kHz=4:1)
周波数特性
phono:20〜20,000Hz(±0.2dB以内)
tuner,aux:0.5〜140,000Hz(−0.5dB以内)
monitor-1,-2:0.5〜140,000Hz(−0.5dB以内)
入力感度
(pre.out;1V)
phono(MC):0.09mV
phono(MM):2.0mV
tuner,aux:140mV
monitor-1,-2,:140mV
入力インピーダンス
phono(MC):high100Ω,low50Ω
phono(MM):MM50kΩ,MC100Ω
tuner,aux:55kΩ
monitor-1,-2:55kΩ
SN比
(IHF-A補正,入力ショート)
phono(MC):−148dB/V(入力換算雑音)
phono(MM):80dB
tuner,aux:100dB
monitor-1,-2:100dB
トーンコントロール
ターンオーバー周波数シフト式(高域用,低域用)
サブソニック・フィルター
7Hz(ツインT型)
付属装置
MCインピーダンス切替(higH,low)
MM,MC dirctインピーダンス切替(MM,MC)
テープモニタ2系統(1,2)
テープダビング(1→2,2→1)
ライン・フェーズ・センサ
ACアウトレット(SWITCHED2系統,total max450W
        UNSWITCHED1系統,total max500W)
消費電力
25W(電気用品取締法の規定による)
電源電圧
AC100V(50Hz/60Hz)
外形寸法
478W×163H×384Dmm
重量
9kg

※本ページに掲載したC-300の写真,仕様表等は1981年1月のLUXMAN
 のカタログより抜粋したもので,ラックス株式会社に著作権があります。した
 がって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられてい
 ますのでご注意ください。

  
 
 
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