CD-2000Wの写真
YAMAHA  CD-2000W
NATURAL SOUND COMPACT DISC PLAYER
                          ¥158,000


1985年に,ヤマハが発売したCDプレーヤー。CD-1aの後継機的存在で,当時のヤマハの
CDプレーヤーの中でリファレンスモデルと称されていました。

ヤマハは,CDプレーヤーに力を入れていたブランドで,第1号機のCD-1,改良型のCD-1a
と性能的にもデザイン的にも高い評価を得ていました。そして,1983年に,据え置き型CDプレー
ヤーで初めて10万円を切る価格を実現したCD-X1で,業界をアッといわせることとなりました。
CD-X1の価格の実現には,CD専用のLSIの開発が大きなキーとなっており,ここには,電子楽
器等で培った半導体技術が生きていたといわれ,ヤマハのCD第2世代ともいえるモデル群には
ヤマハオリジナルLSIが採用され,CDプレーヤーとしての完成度を高めていました。1985年に
は,第3世代のCDプレーヤー群を発売し,その中でのトップモデルが,CD-2000であり,シル
バーパネルでウッドサイドパネルをもった別バージョンとして発売されていたのがCD-2000Wで
した。

CD-2000の写真
YAMAHA CD-2000
NATURAL SOUND COMPACT DISC PLAYER
                          ¥150,000

ヤマハグループは,楽器メーカーとしてスタートし,シンセサイザー等のデジタル楽器も開発してい
たこともあり,デジタルオーディオの根幹を成す半導体・LSIの開発に注力していました。そして,
そのオリジナルLSIを「Musical Processing LSI」と称し,同社のCDプレーヤーの心臓部に搭
載していました。CD-2000W/CD-2000では,さらに性能向上をめざしてLSIの設計を従来より
微細化して2μmルールに改良し,集積度を上げて回路の高密度化を図り,小型化,性能・機能の
安定化,省電力化が達成されていました。また,この結果デジタルノイズ,不要輻射の発生も大きく
抑えられていました。

カスタムLSIオリジナルLSI

信号処理用LSIは,N-MOS(N型金属酸化膜半導体)タイプで,インターリーブ復調,誤り検出,誤
り訂正などを含むデジタル信号処理を1つにまとめたもので,デジタルフィルターも組み込まれていま
した。
サーボコントロール用LSIは,高速処理が可能で消費電力の少ないC-MOS(相補型金属酸化膜半
導体)タイプで,光ヘッドを含む各種サーボコントロール,EFM変調やサブコード復調といった信号処
理を行うもので,高信頼のディスク制御を可能としていました。
CD-2000W/CD-2000には,オリジナルLSIに組み込まれたデジタルフィルターをあえて用いずに
L・R独立の高精度デジタルフィルターを別途に設けていました。このデジタルフィルターは,リップルが
±0.00025dB以下,残留成分−90dB以下に抑えられた高性能なもので,パルス的な入力に対し
て音を濁すエコーの発生が少なく,クリアな音の立ち上がりが確保されていました。デジタルフィルター
に続くアナログローパスフィルターには,5次バターワース型アクティブフィルターが搭載されていました。
D/Aコンバーターには,レーザートリミングされた1ランク上のものが用いられていました。

光ヘッドには,±2ミクロンの高精度なトレース能力を持つ3ビーム方式が採用され,対物レンズには
解像力の高い球面レンズが搭載されていました。光ヘッド部のアクチュエーターは,フォーカス方向と
トラッキング方向のそれぞれのバネがクロス配置となる構造を採用したバネタイプのものを採用し,微
小振動をシャットアウトして高精度で安定したフォーカス,トラッキング制御が可能となっていました。

電源部は,大型の電源トランスと,ノイズの少ない高品質・オーディオ用大容量コンデンサを搭載して
いました。さらにバスバー,電源用ジャンパーコードを採用し,単体アンプ並の大容量の電源部が構
成され,回路の低インピーダンス化により,安定した電源供給が実現されていました。

CD-2000W/CD-2000は,振動が音質に与える影響を十分に考慮した設計がなされた走りともい
えるCDプレーヤーでした。1982年のCDスタート当時,「デジタルだから,アナログプレーヤーのよう
な音の差はない」,「ハウリングも起きず設置も簡単」などのような声も多く聞かれ,セッティングの工
夫や振動対策等もあまり言われていませんでした。しかし,実際には音への影響が無視できないほど
大きいことが分かってきたため,各社とも振動対策等のアナログ機器的な対策を施すようになってい
きました。当時,ヤマハは,D/Aコンバーター部を含むオーディオ回路基板の同じものを2枚用意し
差動アンプで同じ信号を加えて,片方の基板に様々なパターンの振動を加え,出力される信号の変
調を比較することで,振動に起因する変調を解析しようと,VMA(Vibrated Modulation Analysis
=振動変調解析)を繰り返し行い,振動の影響を解析しようとしていました。その成果として開発された
VMスタビライザを信号系路があらわになっているオーディオ基板の裏面をそっくり囲むように設置し
オーディオ回路を頑丈に固定,振動の影響を抑えるとともに,空間を伝播するノイズからのシールド効
果も併せ持つようになっていました。
さらに,筐体そのものの構造や剛性についても対策がとられ,底板のプレートに加え,基板部の下に
さらにもう1枚のプレートを重ね合わせたダブルボトムが採用され,4つの脚には重りを付加した大型
のインシュレーターが付けられるなど,筐体構造全体の剛性化が図られていました。

VMスタビライザー二重になっている底板

CD-2000WとCD-2000は,シルバーパネル・サイドウッド付き,ブラックパネル・サイドウッド無しと
いう違いの同一モデルで,スペックも全く同一でしたが,音の傾向がかなり異なることで,当時話題に
なりました。シルバーパネルのCD-2000Wは,優美なデザインイメージにも似て,上品で清雅なサウ
ンド,ブラックパネルのCD-2000は,力強く引き締まったサウンドで,「パネルの色が音にも影響ある
のか?」と話題になりました。実際には,オリジナルモデルであったCD-2000が天板が1mmの鉄板
側板も同じく鉄板であったのに対し,CD-2000Wでは,天板が2mmのアルミ板,側板には厚さ18mm
のウォルナット鏡面仕上げのサイドウッドが付くという構造上の違いが音質に影響を与えていたもので
CDプレーヤーにおける,振動対策,筐体の構造等の重要性がはっきりと示された事実でもありました。

以上のように,CD-2000W/CD-2000は,当時のヤマハのトップモデルとして,各部に高い技術が
投入され,音質的にも機能的にもバランスの取れたCDプレーヤーとなっていました。筐体の違いによ
る音の違いを明らかにしたという意味でも印象に残る名機といえると思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



VMA=振動変調解析法で
振動の音質に与える影響を徹底解明。
また,新たに設けられた
LR独立・高精度デジタルフィルタ搭載など,
デジタルサウンドの新次元を拓く,
ニューリファレンスCDプレーヤです。


◎VMA 法により基板内振動の影響を解明
 変調ノイズの発生を防ぐVMスタビライザ
◎LR独立の高精度デジタルフィルタをはじめ,
 極限の性能を追求したデジタル回路部
◎エネルギッシュな音を再現する
 低インピーダンス仕様の強力電源部
◎高性能アクチュエータ採用の光ヘッド部
◎高剛性ダブルボトム&ヘビーインシュレータ
◎リモコンで調整可能な可変出力
◎Vol.レベルインジケータ付き
 6桁FL管マルチファンクションディスプレイ
(多彩に楽しめる数々の機能)

 ●モニター可能な2スピードサーチ機能
 ●トラックサーチ機能
 ●12曲ランダムプログラム再生機能
 ●リピート再生機能(全曲・プログラム 曲・A−B)
 ●インデックスサーチ機能
 ●スペースインサート機能
 ●リメインニング時間表示
 ●リモコンボリューム付きヘッドフォン 端子
 ●サブコード端子装備
 ●タイマープレイ機能




●主な規格●

光ヘッド
3ビームレーザー・バネ型
フィルタ
LR独立デジタルフィルタ+5次バターワース型アクティブフィルタ
周波数特性
2Hz〜20kHz±0.3dB
高調波歪率
0.0025%・1kHz(EIAJ)
SN比
102dB(EIAJ)
ダイナミックレンジ
97dB(EIAJ)
チャンネルセパレーション
95dB(EIAJ)
ワウフラッタ
測定限界以下
出力電圧
2Vrms(固定),0〜5Vrms(可変)
寸法
473W×100H×290Dmm(CD-2000W)
435W×100H×290Dmm(CD-2000)
重量
8.0kg


※本ページに掲載したCD-2000W,CD-2000の写真
 仕様表等は1986年2月のYAMAHAのカタログより抜粋
 したもので,日本楽器製造株式会社に著作権があります。
 したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をする
 ことは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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