CD-α907の写真
SANSUI CD-α907
COMPACT DISC PLAYER ¥150,000

サンスイが1986年に発売したCDプレーヤー。サンスイらしく電源部,シャーシをはじめ物量をしっかりと
投入して作られた最上級機でした。黒光りするそのデザインも同社の07シリーズのアンプとマッチングし,
高級感のあるものでした。

メカニズム部には,構造と素材により振動を抑制する「SF(ソリッド&フレックス)メカニズム」を搭載してい
ました。メカシャーシ(メカニズムを支えるシャーシ)はソリッドシャーシ(CD全体の内部シャーシ)にしっかり
と固定され,プレイシャーシ(回転部をのシャーシ)はオイルダンプ式NRダンパーとステンレス製コイルダン
パーの2重サスペンションで,メカシャーシからフローティングされていました。それぞれのシャーシには鋼
板に銅板を分子結合させた銅クラッド材を採用し,さらに耐振効果を高めていました。トレイには,BMC材
を用い,高剛性・高精度を実現していました。また,コイルスプリング内蔵センターガイドとマグネット・クラン
パーによるCDセンタリング機能を搭載し,回転時にCDをしっかりとホールドする高摩擦係数特殊素材を使
用したターンテーブルとともに安定したCD演奏を実現していました。

SFメカニズム SFメカニズムのサスペンション部

ピックアップには,3ビーム方式のオリジナル・ピックアップを搭載していました。3ビーム間のスポット間隔を
16μmに設定し,トレースの安定性を高めていました。トレース能力を高めるために,ピックアップ支持部も
強化され,ピックアップが移動するレール支持部はダイキャスト構造にし,ワイドスパン化して安定した動作を
可能にしていました。サーボ系は「NEWサンスイ・ダイナミック・サーボシステム」により滑らかにコントロール
され,再生の高い安定性を確保していました。さらに,CD駆動用にブラシレス&スロットレス・モーターを専用
開発し,直径3mmものモーターシャフト,ダイキャストハウジングとともに搭載して,安定したCD駆動を図って
いました。

D/A変換系には,4倍オーバーサンプリング・デジタルフィルターを搭載し,ゆるやかな特性の3次ローパスフ
ィルターとの組み合わせにより,すぐれた群遅延特性を実現していました。D/AコンバーターにはL・R独立型
16ビット・リニアタイプ・ツインD/Aコンバーターを採用し,すぐれた位相特性を実現していました。
D/AコンバーターやLSIのクロックの非同期によるビート発生を抑えるために,高精度クォーツを使用した「マス
ター・クロック・システム」を採用し,アナログ回路へのビートの影響を断っていました。さらに,4倍オーバーサン
プリングデジタルフィルターとD/Aコンバーターの間に,ハイスピード・フォトカプラーによるフォトアイソレーション
を採用し,電気的に回路を分離することで,デジタル系の高周波ノイズのアナログ系への進入を抑えていました。

CD-α907の内部

電源系は,デジタル部とアナログ部,そして駆動部の相互干渉を避けるために,サーボ系,デジタル系とオーディ
オ系を独立させた2トランス,4電源構成を採用し,電源回りからのノイズの混入を防止していました。さらに,AC
ラインノイズフィルターも内蔵していました。
アナログ部は,サンスイのアンプ技術を生かした,厳選したパーツを使用したディスクリート構成でした。サンスイら
しくα-Xバランス出力を装備し,同社の07シリーズのプリメインアンプなど,バランス入力のあるアンプとの接続で
ノイズの影響を抑えたピュアなα-Xバランス伝送が可能となっていました。

メカニズム部,アナログ部,デジタル部の各パート間に1.2mm厚もの銅メッキセパレーターを配して分離し,外来
振動とメカニズムから発生する微細な振動の悪影響を抑えた「銅メッキソリッド・シャーシ」を採用していました。
銅メッキセパレーターの高い導電率が,電磁波ノイズをシャットアウトし,外部からのノイズ,メカニズム部,デジタル
部のノイズのアナログ部への飛び込みを抑えていました。ソリッドシャーシ全体にも銅メッキが施されているため,
パーツ全体をシールドボックスに入れたかのようなシールド性を示し,外部および内部干渉による電磁波ノイズも
抑えていました。

銅メッキソリッドシャーシ CF-5インシュレーター

底部のインシュレーターには,新開発の「CF5(シャーシ・フィクスド・5点支持)インシュレーター」を採用していまし
た。従来の4つのインシュレーターに加え,重心付近に5つ目のインシュレーターを配することで,インシュレーター
にかかる荷重を均等化し,より安定した筐体の支え方ができ,外来振動に強い構造としていました。コーナーの
4つのインシュレーターには振動減衰特性にすぐれた無垢材のものを搭載し,5つ目のインシュレーターには,コン
プライアンスの高い特殊素材を用いていました。5つのインシュレーターとも,ソリッドシャーシに直接取り付けられ
高剛性のシャーシと一体化して,高剛性化の効果で,外来振動を寄せ付けないメカニカルアースを実現していま
した。

以上のように,CD-α907は,各部に贅を尽くした作りで,しっかりした筐体と中身を持つ高級機でした。低音の
しっかりした広がりのある自然な音はサンスイらしさを持った高級CDプレーヤーの音でした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。


デジタル・サウンドも質が問われる。
究極の音を聴いてから語り始めよう。
◎音質を大きく左右するメカニズム部は,
 剛性,柔軟性を兼ね備えるSFメカニズム。
◎CDのサウンド・クオリティを生かす
 α-Xバランス出力を装備。
◎いい音のための贅。
 アナログ部はディスクリート構成。
◎振動を強力に抑えるソリッド・シャーシ,
 CF-5インシュレーター。
◎サーボ系,デジタル系,オーディオ系を独立させた
 2トランス,電源の強力電源部。
◎デジタル・フィルターには4倍オーバーサンプリングの
 最新テクノロジーを採用。
◎CDプレーヤー自身のS/N感を向上する
 マスター・クロック・システム。
◎デジタル・ノイズをアナログ部に持ち込まない
 フォト・アイソレーション。
 
●CD-α907の定格●


読み取り方式 非接触光学式
ピックアップ型式 ハイプレシジョン・3ビーム半導体レーザー方式
回転数 200〜500rpm
チャンネル数 2チャンネル
サンプリング周波数 44.1kHz
量子化ビット数 16ビット・リニア
周波数特性 2Hz〜20kHz
高調波歪率 0.002%(1kHz)
ダイナミックレンジ 98dB
ワウ・フラッター 測定検知限以下
SN比 106dB
出力電圧 2V(NORMAL),2V(BALANCE)
定格消費電力 30W
寸法 448W×98H×405Dmm
重量 10.5kg
※本ページに掲載したCD-α907の写真・仕様表等は1986年
 11月のSANSUIのカタログより抜粋したもので,山水電気株式
 会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で
 転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意
 ください。                                      
 

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