CP-900Fの写真
ONKYO CP-900F
QUARTZ LOCK DD PLAYER ¥63,000

1977年にオンキョーが発売したDDプレーヤー。アナログプレーヤーの分野ではあまりメジャーではない
オンキョーでしたが,自社開発のしっかりした内容を持つ中級機として実力を評価されていた1台でした。

モーターには新開発のCLハイトルクモーターが搭載されていました。CLハイトルクモーターは,基本的に
ローターマグネットと星形平坦コイルだけで構成された,フラットでシンプルな構造でした。回転原理は通
常の多極型DCモーターとは異なり,ローディーの「ユニトルクモーター」と非常によく似たもの(同一?)で
2つのコイルからの合成トルクが一定になるようになっていて,完全な円運動をめざしたものとなっていま
した。
ローターマグネットには,90φ×10mmDの精密8極着磁フェライトマグネットを採用し,駆動コイルには,
磁気効率の高い4層星形平坦捲きコイルを22.5°ずらせて,ペアで使用し,起動トルク1kg・cmという
ハイトルクを確保していました。駆動コイル裏面の円形平坦基板に印刷した60本の導体によって1回転あ
たり60回の信号を8極平均で検出するという,磁気全周積分方式で行い,検出速度とサーボ応答の直線
性を向上させていました。
以上のように,すぐれた回転精度,ハイトルクに加え,さらにスロット,コア&ブラシレスというシンプルな構
造により,高い信頼性も確保していました。

CP-900FのCLハイトルクモーター

回転制御には,クォーツロック方式が採用されていました。モーターと同軸に取り付けられたFG(周波数発
電機)によって正確に回転数を検出し,この検出信号を水晶発振の正確な基準信号と比較して,位相差と
して検出することによって精密・正確な回転を実現していました。このための多様で複雑な制御系の回路に
は,ワンチップLSIを採用し,安定度の極めて高いクォーツPLL回路を構成していました。

ターンテーブルは,アルミダイキャスト製,直径31cm,自重1.8kg,慣性モーメント260kg-cm2というもの
を搭載し,すぐれたモーター,クォーツロックと相まって,ワウ・フラッター0.03%以下(WRMS),S/N比
63dB以上(JIS)を実現していました。
ターンテーブルシートは,特殊ネオプレンゴム素材を十分な肉厚で成型したもので,レコードとターンテーブル
の密着性を高め,ゴミ付着を抑えるとともに,ターンテーブルの共振を抑えるはたらきをしました。
ターンテーブル外周部にはストロボパターンが付属し,水晶の正確な発振周波数(11.4048MHz)をワン
チップLSIで正確に120Hzの低周波へ分周し,波形整形回路でパルス点灯する高精度なストロボイルミネー
ターにより,電源周波数変動の影響を受けることなく,正確に回転数を監視することが可能となっていました。

トーンアームは,S字型スタティックバランス形で,垂直方向2点ピボット支持,水平方向ラジアル型ミニチュア
ベアリングと同等の回転精度を持つ2組のベアリングによる支持という,超精密仕上げの軸受け部をもった
もので,垂直方向,水平方向共に高感度と高い信頼性を確保していました。特に,水平方向スラスト軸受け部
のベアリングは,接触面にギャップレス球面を構成し,熱処理超仕上げを施したもので,正確でスムーズな動き
を実現していました。
パイプアームは,アルミ合金に比べてはるかに剛性の高い銅合金製の直径9mmのS型パイプアームで,パイ
プ支持部の質量を高めてガッチリとホールドされ,高精度軸受け部と相まって有害な共振を抑えていました。
ヘッドシェルは,軽量で剛性の高いアルミ合金をインパクト成型で仕上げた高精度なものが搭載されていました。

CP-900Fは,型番のFに示されるように,フルオートプレーヤーで,オートリードイン,オートリターン,オートカット
オートリピート機能が搭載され,基本的に,右側前面にあるPLAY,REJECT,REEATの3つのボタンだけで通
常の演奏ができるようになっていました。また,フルオート動作中でも,自然にマニュアル操作に移れる設計で,
アームを手で操作してもまったく無理のかからない動作が可能となっていました。

キャビネットは,ミクロファインチップを十分な肉厚に高密度成型して硬度を高めたもので,高い強度を確保してい
ました。キャビネットを支えるインシュレーターは,ショックアブソーバー方式のもので,外部振動をシャットアウトし
耐ハウリング特性を高めていました。キャビネット全体としての重量配分もしっかり検討され,共振や内部振動を
分散,吸収する設計となっていました。
キャビネット上には,スペアカートリッジをヘッドシェルごと立てておけるスペアカートリッジ用スタンドが設けられ
ていました。
ダストカバーは,前面→側面→天面→後面(取付部)の順序で厚みを増すように高速・高圧成型されたもので,
取付部に近づくほど質量が大きく,ダストカバーの支持強度が高く,全体として十分な重量も確保した設計とな
っていました。

以上のように,CP-900Fは中級機であり,フルオートプレーヤーながら,しっかりと正攻法で設計されたプレー
ヤーでした。使いやすく手頃な1台で,オンキョーというプレーヤーではあまりメジャーではないブランドから出て
いたため話題になることは少ない1台でしたが,実力はしっかりしたものを持つプレーヤーだったと思います。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


動作原理から,回転精度の完璧を
求めたCLハイトルクモータ搭載,
クォーツロック方式DDフルオート機。
ディスク再生のクオリティを高めました。
◎回転原理から,完全な円運動をめざして,
 トルクむらを追放!CLハイトルクモーター
◎構造的に秀れたハイトルクを実現
◎制御部に信頼性の高いLSI(超集積回路)
 を使用したクォーツロック方式
◎秀れた回転精度と耐負荷特性の
 CLハイトルクモーター+クォーツロック
◎特殊ネオプレンゴムのゴムシート
◎回転数とロック状態がひとめでわかる,
 波形整形回路と2段ストロボ
◎オートリピートを含むフルオート機構
◎使いやすいレイアウトの
 大型プッシュスイッチ付フルオート
◎クオリティに徹したS型トーンアーム
 追従性の秀れた高精度軸受部
◎剛性が高く,共振を防いだヘッドシェル
◎リアリティの高いVM型カートリッジ
◎ハウリングに極めて強いキャビネット
 ショックアブソーバー式のインシュレータ
◎重量配分を考えた高速・高圧成型,
 フリーストップ式重量級ダストカバー
◎便利な,スペアカートリッジ用スタンド付
 
●CP-900F定格●



 

型式 クォーツロック方式ダイレクトドライブプレーヤー
オートリードイン,オートリターン,オートカット,
オートリピートを含むフルオート機構,アームリフター付
ターンテーブル 直径31cmアルミダイキャスト・重量1.8kg(シート含む)
 駆動方式 クォーツロック・ダイレクトドライブ方式
 モーター スロット・コア&ブラシレスCLハイトルクモーター
 回転数 331/3,45rpm
 ワウフラッタ 0.03%以下(WRMS)
 S/N比 63dB以上(JIS)
トーンアーム スタティックバランスS型トーンアーム
 有効長 210mm
 オーバーハング 11mm
 オフセット角 19°
 トラッキングエラー +3°,−1°以内
 使用カートリッジ重量範囲 10.5〜16.5g(ヘッドシェル含む)
 付属機構 針圧直読印加,4Pコネクタ着脱ヘッドシェル
ダイヤル式アンチスケーティング
カートリッジ VM型
 周波数特性 20〜25,000Hz
 出力バランス 2dB以内(1kHz)
 セパレーション 25dB以上(1kHz)
 出力電圧 3.5mV(1kHz)
 コンプライアンス 8×10-6cm/dyne
 負荷インピーダンス 50kΩ
 適正針圧 2.0g
 カートリッジ自重 6g
 針先(交換針) 0.5mil円針(DN-38ST)
消費電力 5W
寸法 450W×142H×372Dmm
重量 9.5kg
※本ページに掲載したCP-900Fの写真・仕様表等は1977年11月の
ONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社に著作権が
あります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすること
は法律で禁じられていますので,ご注意ください。
 
★メニューにもどる             
  
   
★アナログプレーヤーPART3のページにもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。                     

メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system