CS-955の写真
PIONEER  CS-955
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥185,000

1977年にパイオニアが発売したブックシェルフ型スピーカーシステム。パイオニアはもともとスピーカーから
スタートしたブランドで,多くのスピーカーシステムを作っていました。そして,1971年のCS-3000以来,か
なり大型のシステムでありながらブックシェルフ型のモデルも作るようになっていました。当時,国産では,他
のメーカーも大柄のブックシェルフ型を作り始めており,そうした中でも最も大きい外形を持つ1台でもありま
した。

CS-955は,前述したように,ブックシェルフ型としてはかなり大きなエンクロージャーを持ち,そこに,大口
径のウーファーとリボン型のトゥイーターを搭載するなど,よりワイドレンジ化を図ろうとした設計がうかがえる
意欲作でした。

ウーファーは36cm口径のパルプコーンユニットで,コルゲーション入りで適度な内部損失と強度のバランス
が取られたコーン紙でした。大口径コーンを支えるエッジ部はウレタンエッジが採用されていました。駆動する
ボイスコイルは28mmの巻き幅を持つロングトラベルボイスコイルが搭載され,重量2.8kgの強力なマグネッ
トとの組み合わせで強力な駆動系が形成されていました。

ミッドレンジは,6.5cm口径のドーム型で,前モデルCS-3000シリーズに搭載されていたユニットを元に改
良を加えられたもので,振動板には新たに軽く剛性の高いベリリウムを使用していました。この振動系を支え
るのは,パイオニア自慢のベリリウムカッパー線によるワイヤーサスペンションによる二重支持方式が採用さ
れていました。このサスペンションにより,サスペンションからの輻射が防止され,さらに支持位置の明確化が
確保されるため,大幅な歪みの減少と過渡特性の改善が図られ,立ち上がり良い繊細な音が実現されてい
ました。

トゥイーターは,PT-R7と同形式のリボン型ユニットが搭載されていました。パイオニアは,1974年,100kHz
までの超高域の再生を可能としたリボン型トゥイーターPT−R7を発表し,高い評価を得ていました。CS-955
にはそれと同等のユニットが搭載され,超高域再生を可能としていました。超軽量のリボン箔振動板で,超高域
までフラットな特性と空気そのものを駆動するかのような再生を実現していました。また,超薄アルミ製の振動箔
は,連続六角錘成形とされて剛体化が図られていました。縦,横,斜めのどの切断面を取っても直線とならない
形に成形されたもので,折れ曲がりの心配のない強固な構造となっており,リボン振動箔のピストン運動領域を
大幅に拡大し,すぐれたパワーリニアリティが確保されていました。

エンクロージャーは,高密度で内部損失の大きいアピトン合板が使用され,強固な構造となっていました。内部
の補強材も同じくアピトン合板が使用されていました。バスレフ型でユニット配置をL・R対称とした専用設計と
なっていました。内部配線には,低インダクタンスのLIコードが用いられ,マルチアンプ用の端子も備えられてい
ました。

以上のように,CS-955は,スピーカーユニット,エンクロージャーとも力の入った設計で,ブックシェルフとして
は大型の外観が示すとおり,ワイドレンジで堂々とした音を聴かせるモデルでした。3つのユニットが全て異なる
形式という設計は,当初,音のつながりやバランスがうまくとれず,当時のパイオニア技術陣を相当悩ませ,こ
のスピーカーの経験が同社を聴感を大切にする設計へと向かわせる契機となったというエピソードも聞いたこと
があります。そして,完成したCS-955は3つのユニットの違和感を感じさせることなくワイドレンジを実現した実
力機で,人気モデルとなりました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



時代を超えて,音楽の価値を伝える。
ここでは音楽そのものが生きている。


◎力強い低音の中にも微妙な表現の違
 いをとらえ,再現する36cmウーファー。
◎ベリリウムドームとワイヤーサスペンショ
 ンで,音の表情を豊かにとらえるミッドレンジ。
◎かすかなピアニシモを浮きぼりにする,
 リボン型トゥイーター(PT-R7タイプ)。



●仕様●

形式 位相反転型
使用スピーカー
低音用:36cmコーン型
中音用:6.5cmドーム型
高音用:リボン型
インピーダンス 8Ω
再生周波数帯域 28Hz〜100,000Hz
出力音圧レベル 91dB/W(1m)
最大入力 100W
クロスオーバー周波数 950Hz,8,000Hz
マルチアンプ使用時の
推奨クロスオーバーと
各ユニットの最大入力
・出力音圧レベル
低〜中音:800〜1,000Hz
中〜高音:6,000〜8,000Hz
ウーファー:100W・91dB/W(1m)(1kHz以下)
ミッドレンジ:100W・92dB/W(1m)(800〜8,000Hz)
トゥイーター:50W・95dB/W(1m)(6kHz以上)
外形寸法 465(W)×720(H)×440(D)mm
重量 47kg


S-955の写真
PIONEER  S-955
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥190,000

1979年に,CS-955はS-955へとモデルチェンジされました。基本的には同様のユニット構成と
設計ですが,エンクロージャー,ユニット他に手が加えられ改良が施されていました。

ウーファーは,CS-955と同一のユニットが搭載され,ネットワーク,ダクトのチューニング,吸音な
どの見直し,改良で,CS-955でやや重く引きずると言われていた低音が改善されていました。
ミッドレンジは,CS-955のミッドレンジを母体として改良されたもので,純ベリリウム振動板をベリ
リウムカッパー線によるワイヤーサスペンションとセンタータンジェンシャルエッジによって二重に支
持する構造により,ピストンモーション領域の拡大,トランジェント特性の向上が図られていました。
トゥイーターは,PT-R7の改良型PT-R7Aと同形式のものが搭載されていました。振動板そのもの
が駆動部でもあるリボン振動板はわずか9mgまで軽量化され,120kHzまでの超高域再生を可能
としていました。

エンクロージャーは,CS-955と同じアピトン合板使用で外形寸法も同一ながら,仕上げが天然木
マーブルエボニー仕上げとなり,イメージが大きく変わっていました。特に,フロントバッフル面も同
一の仕上げとなり,高級感が増していました。また,ダクトの形状・寸法なども検討・見直しが行わ
れ,中低域特性の改善が図られていました。
ネットワークには,高精度コンデンサーが用いられ,ウーファー用チョークコイルは別付けとするな
ど回路構成,素子,レイアウトなどもしっかり吟味が行われていました。また,CS-955同様に,マ
ルチアンプ端子も装備されていました。

以上のように,S-955は,CS-955をベースに改良が加えられ,より完成度の高いスピーカーと
なっていました。955シリーズの2世代目として人気モデルとなり,その後S-955Vへとつながっ
ていきました。ワイドレンジで明るい音はパイオニアらしさをしっかり持った1台だったと思います。


以下に,当時のカタログ一部をご紹介します。



深く聴き込むほどに,
音楽に込められた情感が伝わる。
感動のひとときが訪れる。

◎繊 細な音楽の流れが,まるで空気
 にしみわたるように自然に広がる
 リボン型トゥイーター。
◎ベリリウムドームとワイヤーサス
 ペンションで音の表情を豊かに
 とらえたミッドレンジ。
◎力強い低音の中にも微妙な表現
 の違いをとらえ,再現する36cm
 ウーファー。
◎相互干渉による歪みをおさえ,
 音の透明感を高めるため,素材
 やレイアウトを吟味したネット>
 ワーク。
◎音響特性にすぐれたアピトン合板
 を使用して,天然木マーブルエボ
 ニーで仕上げたキャビネット。



●仕様●

形式 位相反転式ブックシェルフ型
使用スピーカー
低音用:36cmコーン型
中音用:6.5cmベリリウムドーム型
高音用:リボン型
インピーダンス 8Ω
再生周波数帯域 28Hz〜120,000Hz
出力音圧レベル 91dB/W(1m)
最大入力 100W
クロスオーバー周波数 950Hz,8,000Hz
マルチアンプ使用時の
推奨クロスオーバー
低〜中音:800〜1,000Hz
中〜高音:6,000〜8,000Hz
外形寸法 465(W)×720(H)×440(D)mm
重量 47kg


※本ページに掲載したCS-955,S-955の写真,仕様表等は
 1978年11月,1979年11月のPIONEERのカタログより
 抜粋したもので,パイオニア株式会社に著作権があります。
 したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすること
 は法律で禁じられていますのでご注意ください。

                        
 

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