ＰＩＯＮＥＥＲ　ＣＳ-Ｒ７０
３ＷＡＹ　ＳＰＥＡＫＥＲ　ＳＹＳＴＥＭ　￥４０，０００

１９７２年に，パイオニアが発売したスピーカーシステム。パイオニアはもともとスピーカーから
スタートしたブランドで，１９７０年代には，多くのスピーカーシステムを作っていました。そんな
中，この年発売されたのが「Ｒシリーズ」で，その最上級機がＣＳ-Ｒ７０でした。

「Ｒシリーズ」は，パイオニア自身が当時「歯切れの良さ，迫力を大切にして設計」と広告にうたっ
ていたシリーズで，ＣＳ-Ｒ７０，ＣＳ-Ｒ５０（￥３１，０００），ＣＳ-Ｒ３０（￥２１，５００），ＣＳ-Ｒ１０
（￥１２，０００）のラインナップで発売されていました。比較的手頃な価格帯で展開され，トゥイー
ター部にホーン型ユニットを採用したバスレフ型のブックシェルフスピーカーシステムであること
が共通した特徴となっていました。そして，ＣＳ-Ｒ７０は，ホーン型のトゥイーターとミッドレンジ
を搭載した３ウェイスピーカーシステムでした。

ウーファーは，３０ｃｍ口径のコーン型で，繊維を粉砕せず長いままの状態で成形され，特殊コー
ティング処理を施したＦＢコーンが採用されていました。エッジには，温度・湿度変化にも影響を受
けにくい安定したポリウレタン発泡体を使用し，低域の歪やエッジの共振を抑えていました。
ボイスコイルは，放熱効果のすぐれたアルミボビンに銅リボン線をエッジワイズ巻きにしたロング
ボイスコイルを採用しており，空隙利用率を高めたことで能率，耐入力とも向上していました。



センターポールには，純銅製キャップがかぶせられ，磁気回路に起因する非直線性歪，磁気歪
を抑えていました。磁気回路には，直径１４０mmの大型のフェライトマグネットを使用し，高い駆
動力を実現していました。そして，ウーファーとパラレル（並列）にインピーダンス補償回路（ＣＲ）
回路を挿入して，高域に向かって上昇していくインピーダンスの変化を抑え，ネットワークの減衰
特性を理想に近づけ，過渡応答を向上させていました。



ミッドレンジは，同社が市販していたＰＭ-４０と同等品のホーン型ユニットが搭載されていました。
ホーンには，精密仕上げの４mm厚のダイキャスト製のものが採用されていました。これは，この
クラスのホーンでは鋳造ホーンにもないほどのもので，ホーンの共振は完ぺきなまでに抑えられ
ていました。ホーンのカーブ及びフィン構造にも独自の改良が加えられ，ダイキャストホーンのた
め表面の仕上げ精度が高く，特性の均一性が得られ，１３ｋＨｚまで均一な指向特性を実現して
いました。
ドライバーユニットには，歪の原因となるエッジの輻射を避けるため，ダイアフラムパッキンに音
道を設け，リアから発生する逆位相音との打ち消し効果を生かして歪を低減し，フラットな特性を
確保していました。さらに，ヨーク内には吸音材を使用するなど，音質への配慮を徹底していまし
た。



トゥイーターにもホーン型ユニットが搭載されていました。すぐれた指向特性，クリアな高域再生
のために，マルチセルラホーンが採用されていました。また，新開発のクロスオーバーネットワー
クにより，ミッドレンジとに自然なつながりを実現していました。



エンクロージャーは，バスレフ型で，ウーファーと同時に一体設計が行われ，内部のほぼ中央に
吸音材による仕切りが設けられており，この部分がハイカットフィルターとして働くことで，ポートの
バスレフ効果をいっそう有効にするようになっていました。また，エンクロージャー内部の定在波
の発生も抑えていました。
ユニークな特徴として，ウーファー部のグリルネットは，標準で茶色のものが装備されていました
が，別売（￥２，５００ペア）で，赤色と青色の交換用グリルネットが販売されており，交換してイメー
ジを変えることが可能となっていました。

以上のように，ＣＳ-Ｒ７０は，比較的手頃（当時としては高価？）な価格帯ながら，ホーン型ならで
はの音のキレや迫力があり，レンジは広くないものの独自の魅力がある1台でした。

以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。

ダンピングのきいた
ダイナミックな再生音。
鮮やかな中音を生む
ホーン型ミッドレンジ

◎量感豊かな低音を鮮やかに再現する
　３０ｃｍウーファー
◎歯切れ良く，鮮やかな音色の
　ホーン型ミッドレンジ採用
◎過渡特性・指向性にすぐれた
　ホーン型トゥイーター
◎ユニークな構造のエンクロージャー

●ＣＳ-Ｒ７０の規格●

※本ページに掲載したＣＳ-Ｒ７０の写真，仕様表等は，１９７３年
６月のＰＩＯＥＥＲのカタログより抜粋したもの，パイオニア株式会
社に著作権があります。したがって，これらの写真等を無断で
転載，引用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意
ください。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
 

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