ＣＴ-７００

ＹＡＭＡＨＡ　ＣＴ-７００
ＳＴＥＲＥＯ　ＴＵＮＥＲ　￥４３，０００

１９７２年に，ヤマハが発売したＦＭ/ＡＭチューナー。ヤマハは，当時の社名・「日本楽器製造」の名の通り，
１８８７年に楽器製造会社としてスタートしました。そして，世界最大の総合楽器メーカーとなったヤマハが
１９６７年にオーディオ部門を創業し，ポンせんべいと称された変形大面積振動板搭載のＮＳスピーカーか
らスタートしました。そのヤマハが１９７２年に，プリメインアンプＣＡ-７００，ＣＡ-５００とともに発売したチュー
ナーがＣＴ-７００でした。ヤマハブランド最初の本格的ステレオチューナーでした。

フロントエンドは，高周波２段増幅，高精度４連バリコンを使用した高性能なもので，１．７μＶ（ＩＨＦ）の高感
度と，イメージ妨害比９０dB、ＩＦ妨害比１００dBとすぐれた妨害排除特性を実現していました。
ＩＦ段は、６素子のセラミックフィルターとモノリシックＩＣによるリミッターを採用し，実効選択度８０dB（ＩＨＦ），キ
ャプチュアーレシオ１．５dBと隣接局とのシャープな分離と微弱な電波も安定して受信する性能を実現してい
ました。

高精度４連バリコン

ＭＰＸ回路には，ヤマハ独自のトランジスタースイッチングによる平均復調方式を採用し，ＬＣ使用のアクティ
ブローパスフィルターを組み合わせ，歪率０．２％（モノ），セパレーション４５dB（４００Ｈz)というすぐれた特性
を実現していました。

ＣＴ-７００では，回路構成と調整により，高い精度の同調機構が実現され，周波数直線目盛りのワイドなダイ
ヤルスケールとＳＩＧＮＡＬ，ＴＵＮＩＮＧの２メーター方式により，精度の高い選局・同調が可能となっていました。
また，選局動作時に，同調ツマミに手を触れると自動的にＡＦＣ回路がキャンセルされ，手をはなすと自動的
にＡＦＣ回路がＯＮとなるオートタッチ・チューニング機構が組み込まれ，安定した受信状態が確保されるよう
になっていました。

機能的にはオーソドックスなものですが，当時のチューナーとしては充実した機能をもつものとなっていました。
選局動作時の局間ノイズを除去するミューティング・スイッチ，ＦＭステレオ受信時にノイズが多い場合に高域
ノイズを打ち消すハイフィルタースイッチ，モノラルスイッチが搭載され，アンテナ端子も３００Ω平衡と７５Ω不
平衡２組の端子が設けられていました。また，強電界時の入力オーバーによる歪みを除去するアンテナ入力
のアッテネーター（－２０dB）スイッチが背面パネルに装備されていました。ＡＭ受信用には，水平１８０°の回
転式の高感度のバーアンテナが装備されていました。

ＣＴ-７００は，何といってもそのダイヤルスケールの美しさが特徴としてあげられます。大きなダイヤル窓に深
いブルーに浮かびあがる表示部が幻想的とも言える美しさで，他のチューナーとは一線を画すものでした。そ
して，シルバーのアルミ引き抜き材パネルとローズウッド材のキャビネットに包まれ，ＧＫデザインを取り入れる
前のヤマハのオーディオ機器では最も印象的な美しいデザインだと思います。

以上のように，ＣＴ-７００は，ヤマハのオーディオ機器として初の本格的ＦＭチューナーながら，性能，機能，デ
ザイン等高い完成度を示していたことには驚くほどのもので，後のヤマハのチューナーにおける活躍を予感さ
せるものがありました。

●ＣＴ-７００の規格●

●ＦＭ部●

アンテナ	平衡３００　不平衡７５Ω
受信感度	１．７μＶ（ＩＨＦ）
高調波歪率	０．２％（ＭＯＮＯ）　０．４％（ＳＴＥＲＥＯ）
ＳＮ比	７０dB
実効選択度	８０dB
キャプチュアレシオ	１．５dB
イメージ妨害比	９０dB
ＩＦ妨害比	１００dB
ＡＭ抑圧比	５５dB
周波数特性	２０Ｈz～１５ｋＨｚ　±１dB
ステレオセパレーション	４５dB（４００Ｈｚ）

●ＡＭ部●

受信感度	１５μＶ（外部アンテナ）４５dB/ｍ（バーアンテナ）
高調波歪率	０．８％
ＳＮ比	４５dB
実効選択度	３０dB
イメージ妨害比	７０dB

●その他●

使用半導体	トランジスター３８石，ダイオード３１石，ＦＥＴ１石セラミックフィルター３個，ＩＣ１個
最大消費電力	１５Ｗ　２３Ｗ（ＡＣ・１００Ｖ）
寸法	４００Ｗ×１４０Ｈ×３００Ｄmm
重量	７．５ｋｇ