PIONEER CT−A1
STEREO CASSETE TAPE DECK ¥230,000
パイオニアが,1979年に発売した同社の最高級カセットデッキです。その美しいデザインが何
よりも印象的で,カセットデッキの歴史の中でも,最も美しいものの一つに数えられるのではない
でしょうか。もちろん美しいデザインだけでなく,優れた基本性能と先進的な機能と操作性を持っ
ていました。特徴の第一は,AUTO BLE SYSTEMと称する,コンピューターを使った自動調整システム
により,1本1本のテープの特性に合わせて,録音バイアス,録音レベル,録音イコライザーを
自動的に調整することができました。今では,このようなコンピューターを使った調整システム
は決して珍しくはありませんが,当時は,魔法のように思え,便利さを実感したものです。 自
動設定された特性は,9種類までメモリーしておくことができました。テープ駆動部も高精度が追求され,クォーツPLL制御のコアレスモーターによるダイレクトドラ
イブが採用され,回転ムラは0.03%(WRMS)という,当時としては超高精度なものでした。
もちろん,テープトランスポートは,クローズドループデュアルキャプスタンを採用していました。
左右のキャプスタンの回転数をわずかに変えてテープテンションを一定化させる工夫や2つのピ
ンチローラーの直径を変えて共振を抑える工夫なども,時代に先駆けて採用されていました。ダイレクトローディングといってカセットテープを入れるところにホルダー(ポケットのようになって
いるところ)が無く,直接取り付けるようになっていました。この方式は,当時けっこうはやって
いたように記憶しています。カセットハーフを上下からしっかり支持するようになっていたので,
ハーフのがたは抑えられたように思います。おそらく,メカニズムにほこりが入りそうなことと,
カセットを入れるところにフタがないことへの抵抗感があったため,はやらなくなったのかもしれ
ません。(このCT−A1は前面にフタがあったので良かったのかも)ヘッド系はコンビネーション3ヘッドを採用,20〜20,000Hz(METAL,FeCr)の優れた録再
周波数特性を誇っていました。(FeCrポジションがあるのも時代を感じさせますね。)当初,フェ
ライトヘッドでしたが,後に改良されて,リボンセンダストヘッドになりました。パイオニアが,当時持てるテープデッキ技術をフルに投入して完成させたデッキであったと思いま
す。性能的にも現在のカセットデッキに勝るとも劣らないもので,優れたデザインとともに心に残っ
ている1台です。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
カセットテープの性能を
タイプ別に引き出す時代から,
個別に引き出す時代へ。
◎マイクロプロセッサーの制御で,録音バイアス・録音レベル
(テープ感度)・録音イコライザーの調整を自動化したAuto
BLEシステムを採用。使用するテープ個々の特性を最適な
状態で引き出します。
◎ハイトルク・クォーツPLL D.Dコアレスモーターを登載した
クローズドループデュアルキャプスタン方式。精度の高いテ
ープトランスポートシステムを実現しています。
◎録音特性と再生特性をそれぞれの立場から追求したUNI
X’tal録音/再生コンビネーションヘッドによる3ヘッド方式
を採用。ひときわ高品位な音質を実現しています。
◎優れた回路構成と厳選した素子の採用による高性能アンプ
部。Auto BLEや,コンビネーション3ヘッドの実力をあま
すところなく引き出します。
◎応答特性に優れた2色FLレベルメーター,メモリーオートな
どの電子化機能,ICフルロジックコントロールを始め多彩な
機能性を網羅させました。
●CT−A1の仕様●
形式 | コンパクトカセットテープデッキ(ステレオ/モノ) |
録音ヘッド | UNI X’talフェライトヘッド×1 |
再生ヘッド | UNI X’talフェライトヘッド×1 |
消去ヘッド | 特殊合金ヘッド×1 |
定速ドライブ用モーター | クォーツPLL ダイレクトドライブ方式コアレスキャプスタン
モーター×1 |
リールドライブ用モーター | ハイトルクコアレスモーター |
早巻き時間 | 75秒以下(C−60にて) |
回転ムラ | 0.03%以下(WRMS) |
周波数特性
−20dB録音時 0dB録音時
Auto BLE使用時(−20dB録音時) |
(STD,LHテープ) 20〜19,000Hz
(25〜16,000Hz±3dB) (フェリクロームテープ) 20〜20,000Hz (25〜18,000Hz±3dB) (クロームテープ) 20〜20,000Hz (25〜18,000Hz±3dB) (メタルテープ) 20〜20,000Hz (25〜19,000Hz±3dB) (クロームテープ) 20〜13,000Hz
(メタルテープ) 35〜15,000Hz±1dB |
SN比 | (ドルビーOFF) 60dB以上
(ドルビーON) 70dB以上(5kHz以上) (第3次高調波歪率3% 聴感補正) |
歪率 | 1.0%以下(0dB) |
入力
(感度/最大許容入力/インピーダンス) |
マイク×2:0.3mV/100mV/10kΩ
6mm径ジャック (適合マイクインピーダンス250Ω〜10kΩ) ライン×4:65mV/15V/100kΩ ピンジャック(2chパラレル2系統) |
出力
(基準レベル/最大レベル/負荷インピーダンス) |
ライン×4:450mV/640mV/50kΩ
ピンジャック(2chパラレル2系統) ヘッドホン×1:63mV/90mV/8Ω 6mm径ステレオジャック |
使用半導体 | IC×42,トランジスタ×194,ダイオード×124
(内ツェナーダイオード×16 LED×19)フォトインタラプター×1 |
付属機能 | (1)Auto BLE(自照式Autoボタン,BLEインジケーター,9メモリー/コール機能付き)
(2)2色FLレベルメーター(−30〜+8dB) ピーク/ピークホールド/アベレージ切換え ディマー/ブライト切換機能付き (3)4桁電子テープカウンター (4)バイアス微調整ボリューム (5)オート機能(メモリーストップ/メモリープレイ/メモリーリピート/エンドリピート)表示付 (6)ドルビーシステム(ON/OFF)表示付 (7)MPXフィルター(ON/OFF) (8)モニター(TAPE/SOURCE) (9)ピッチコントロール(クォーツロック表示付) (10)テープセレクター(STD,CrO2,Fe-Cr,Metal)表示付 (11)RECミュート(点滅表示付) (12)マイク,ラインミキシング (13)バックアップバッテリー警告 (14)タイマースタンバイ機能 (15)カセット背面照明付 |
電源 | AC100V,50/60Hz(切換え不要) |
消費電力 | 45W |
外形寸法 | 420(W)×217(H)×390(D)mm |
重量 | 18kg |
※本ページに掲載したCT−A1の写真,仕様表等は1979年5月のパイオニアのカタログ
より抜粋したもので,パイオニア株式会社に著作権があります。したがって,これらの写
真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
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