D-07の写真
PIONEER D-07
DIGITAL AUDIO TAPE DECK ¥140,000
パイオニアが1992年に発売したDATデッキ。パイオニアもソニーと並んでDATに熱心なメーカーで,機種数も多く名機もい
ろいろとありました。その中でも,このD-07は,初めて96kHzのハイサンプリングに対応して,それまでのDATの枠を超え
て性能を追求した名機として忘れることのできない1台だと思います。

D-07の最大の特徴は言うまでもなく「96kHzハイサンプリング・ワイドモード」を搭載していたことでした。20kHzを超える
高域成分の録音・再生を実現するためにサンプリング周波数を標準の48kHzから2倍の96kHzまで高めたもので,これに
より,録音・再生周波数も従来の2倍の44kHzまでにも達していました。ハイサンプリング実現のために,テープスピードを
倍速化し,かつヘッドドラムの回転数も,従来の2,000rpmから4,000rpmまで高速化していました。さらに,ヘッドアン
プの帯域も従来の4.7MHzから9.4MHzと2倍にされていました。デジタル回路,オーディオ回路とも44kHzまで伸びた
広い帯域の録音・再生に余裕を持って対応できるように設計され,「ハイサンプリング・ワイドモード」時の音は,従来のCD
やDATを超えたすばらしいものでした。

従来の標準モードにおいては,同社のCDプレーヤに搭載され高い評価を得ていた,パイオニア自慢の「レガートリンク・コン
バージョン」を搭載し,オーバー20kHzの高域を含む自然な音楽再生を実現していました。これは,テープに記録された信
号をもとにデジタル信号処理を行い,記録前のオリジナル信号を推定してデータの間をなめらかな関数曲線で結ぶ技術で,
1/f減衰特性にしたがった20kHz以上の音の再現までも可能となるものでした。

A/D側には18ビットのマルチビット方式コンバーターが採用され,ディザ回路に搭載により,非直線性歪みやゼロクロス歪
みの発生を低く抑え,44kHzまでの広帯域にわたって,微少レベルまでの高精度な録音を実現していました。D/A側には
256fsと極めて高いオーバーサンプリングで動作する1ビットタイプのハイスピード・パルスフローD/Aコンバーターをツイン
で搭載していました。1ビット方式の中枢部システムクロックには,オーディオ系とデジタル系を分離して供給する「クリーンク
ロック回路」を採用ししていました。システムをコントロールするクロックの発振そのものをクリーンにし,独立して駆動するため
微少信号レベルでの再現性を高め,高SN比,低歪率を実現するものでした。

D−07のパーツ
D-07の内部

ハイサンプリング・ワイドモードでの高性能な録・再生性能をささえるヘッドは高出力AT(ALL TRACK)ヘッドを搭載していまし
た。これは,トラックのトレース方向に対して20μmの均一なトラック加工を施した構造で,ヘッド両側にガラスを溶着して高回転
に備えた高い耐摩耗性を実現し,ギャップには特殊なポリシング加工を施して,安定したテープタッチを実現した高性能ヘッドでし
た。

外部から受ける振動や内部のモーターの回転などから発生する振動などに対して,フロントパネル周辺の微振動を抑える防振ゴ
ムを併用したパネルスタビライザーやテープを確実にホールドするカセットスタビライザーを採用していました。また,メカニズムや
回路をささえるシャーシはハニカムシャーシとし,大型インシュレーターやボンネット防振構造などの振動対策も施されていました。

再生時には,記録されたTOC(TABLE OF CONTENTS)情報をもとにランダムに選曲ができる「ランダムプレイ」,現在位置か
ら希望する時間だけ前後にスキップして再生する「タイムスキップ」,ボタンを押した時点のテープ上のポイントをマイコンが記憶し,
そのポイントをワンタッチで再生する「ワンポイントメモリー」など多彩な機能が実現していました。
ディスプレイ部に,曲番や時間情報意外に,アルファベット60文字以内で曲名,演奏者など乃情報を文字で記録できる「キャラクタ
ーレコーディング機能も新たに搭載されていました。録音・再生モードは,標準モード,ワイドモード,長時間(LP)モードと3タイプに
対応したモードを搭載していました。

D-9601の写真

以上のように,性能面。機能面とも優れていたD-07はDATの歴史の中でも印象に残る名機だったと思います。そして,この基本
設計を引き継いだ業務用機D-9601がプロの現場でその性能を評価され使われていることからも,その高性能が伺い知れると思
います。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

 


広帯域化を実現した96kHz
ハイサンプリング対応。
レガートリンク・コンバージョンを搭載。
キャラクターレコーディング機能など
DATの潜在能力を引き出した新鋭機。

◎44kHzまでの広帯域 録音・再生を可能にした
  96kHzハイサンプリング・ワイドモードを新開発。
◎標準モード時でもオーバー20kHzの自然な音楽再生を
  実現するレガートリンク・コンバージョンを搭載。
◎微妙な音のニュアンスも繊細に描く
  ツイン搭載のハイスピード・パルスフローD/Aコンバーター
  &クリーンクロックを搭載。
◎広帯域化に余裕を持って対応した,高出力ATヘッド。
◎入念な振動対策とハニカムシャーシの採用で,
  振動による音質の劣化を排除。
◎曲名,タイトルなど好みの情報を記録できる
  キャラクターレコーディング(キャラクターパック)機能を搭載。
◎CDからの録音時にスタートIDを自動的に記録する
  CD-QコードシンクロスタートID記録機能。
◎テープの管理と手軽なプレイができる
  TOC記録/再生機能を搭載。
◎録音・再生を存分に楽しめるテープオペレーション機能も満載。
◎ワイドモードから長時間モードまで3タイプの録音・再生モード。
◎広帯域化を支える,厳選されたパーツ。

●主な仕様●



 

型式 回転ヘッド方式デジタルオーディオテープデッキ
テープスピード 8.15mm/s(標準)
4.075mm/s(LP)
16.3mm/s(WIDE)
録音時間
(標準120分テープ使用時)

SP:最大120分,LP:最大240分,WIDE:最大60分
量子化ビット数 16ビット・リニア,12ビット・ノンリニア
サンプリング周波数
(SCMS搭載)
48kHz(録音・再生)
44.1kHz(デジタル録音のみ・再生)
32kHz(SP:デジタル録音のみ・再生)
     (LP:録音・再生)
96kHz(アナログ録音のみ・再生)
録再周波数特性 WIDE:2Hz〜44kHz
SP:2Hz〜22kHz
LP:2Hz〜14.5kHz
S/N 92dB以上
ダイナミックレンジ 93dB以上
全高調波歪率 0.004%以下
ワウ・フラッター 測定限界(±0.001%W・PEAK)以下
アナログ入出力端子 ライン入力端子 RCA PIN×1 500mV
ライン出力端子 RCA PIN×1 500mV
デジタル入出力端子 同軸入力端子 RCA PIN×1 0.5Vp-p/75Ω
同軸出力端子 RCA PIN×1 0.5Vp-p/75Ω
光入力端子×1
光出力端子×1
寸法 440W×141H×375Dmm
重量 8kg
消費電力 32W
電源 AC100V 50/60Hz
※本ページに掲載したD-07の写真,仕様表等は1994年9月のPIONEERの
カタログより抜粋したもので,パイオニア株式会社に著作権があります。したが
ってこれらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますの
でご注意ください。        
  
 
 
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