D-107uの写真
ALPINE/LUXMAN  D-107u
COMPACT DISC PLAYER ¥129,000

1989年にラックスが,アルパイン/ラックスマンブランドで発売したCDプレーヤー。1984年に
アルパイン/ラックスマンブランドは,真空管とMOS FETのハイブリッド構成というユニークな
プリメインアンプを発売していましたが,このD-107uは,アナログ出力回路に真空管を投入し
た,ラックスならではの個性的なCDプレーヤーでした。

D-107uの最大の特徴は,上記したように真空管を使用した出力回路にありました。D-107u
の出力回路には,双3極真空管6CG7をカソードフォロア回路として採用していました。3極真空
管は,リニアな特性を持ち,耳障りな奇数次高調波が少ないなど音楽再生に向いた特性を持つと
言われ現在でもファンが多いようです。また,アクティブ素子が最小単位(1ユニット)で構成される
カソードフォロア回路により,回路のシンプル化が実現されていました。そして,真空管を短時間で
安定した動作状態にするためにあらかじめ真空管を暖めておくプリ・ヒーティングスイッチも装備
されていました。
さらに,出力回路にはライントランスが搭載され,真空管の特性が生かされた無理のない出力系
が構成されていました。このライントランスは,トランス作りの長年のノウハウが注ぎこまれ,多く
の試作を繰り返して仕様が決定されたトランスで,真空管回路とスムーズなマッチングが確保され
ていました。また,トランス結合により,低インピーダンス負荷にも安定した出力を実現していまし
た。

D-107uの双3極真空管D-107uのライントランス

デジタルフィルターは,18ビット8倍オーバーサンプリングのものが搭載され,D/Aコンバーターは
16ビット直線抵抗ラダー型という基本に忠実ともいえるマルチビット型が搭載されていました。L・R
独立のツインD/Aコンバーターとなっており,チャンネルセパレーションやL・R信号の位相特性を高
めていました。
さらに,D-107uでは,デジタルフィルターによるオーバーサンプリングによって後段のアナログフィ
ルターへの依存度を軽減する設計をさらに一歩進め,ライントランスの自然な減衰特性を利用して
アナログフィルターを完全に除去していました。これにより,D/A変換以降の回路は,音質に悪影響
を与えやすいアナログフィルターを通らずに,アナログ信号がダイレクトに真空管に入り,出力トラン
スを経由して出力されるという画期的にシンプルなものとなっていました。

CDプレーヤーでは,電源投入時のパルス性出力を防止するために,一定時間は出力しないように
ミューティング回路が搭載されています。一般的にCDプレーヤーでは,出力回路とアースライン間に
半導体素子を挿入した設計になっていますが,D-107uでは,よりコストのかかるリレー接点を使用
した音質重視のミューティング回路が採用され,ミューティング解除時・音楽再生時には,アースライン
とDCラインとの関係が完全に絶たれるようになっていました。

トランスポート部には,しっかりとした防振対策がとられていました。光学ピックアップベースをアッセン
ブリーベースから分離し,その間を特殊ゴムダンパーとコイルスプリングの組み合わせで振動をシャッ
トアウトする「ハイリジッド・ロック・メカニズム」が採用され,さらにそれを中央に配置したセンターマウン
ト方式の低重心構造として外部振動に強い構造としていました。

D-107uには,テープ等への録音編集のための編集機能として,録音時間に合わせた選曲プログラ
ムができるエディット機能,曲途中で自然なフェードアウトができるフェードアウト機能が装備されてい
ました。さらに,分単位で99分までの時間を設定し,最後にはフェードアウトで自然にプログラムを終
わらせることができるタイムフェードアウト機能も装備されていました。
ディスプレイは,部屋の明るさに応じてFL表示管の輝度を調節できるほか,音質重視のために消すこ
ともできるようになっていました。
出力は,真空管出力回路の持ち味を生かすという思想で,デジタル入出力系が外され,リモコンでも
操作可能な電動ボリュームを備えたVARIABLE端子ととFIXED端子のアナログ出力2系統のみで,
出力端子は金メッキ端子が採用されていました。

以上のように,D-107uは,アナログ系に世界でも珍しい真空管出力回路を搭載したCDプレーヤー
で,ラックスらしさを全身に漂わせた1台でした。他のCDプレーヤーにはない温かみのある端正な音
は独自の魅力を持ったものと評価されていました。

また,D-107uには,弟機D-105uも発売されていました。基本的によく似た設計で,サイドウッド等
防振に関わる筐体設計の簡略化等が行われ,D-107uでは外されていたデジタル出力端子(光/同軸)
が備えられているなど,いくつか相違点がありましたが,D-107uに迫るコストパフォーマンスの高い1台
でした。

D-105uの写真
ALPINE/LUXMAN D-105u
COMPACT DISC PLAYER ¥82,400


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



音楽感性に満ちた3極真空管が,
CDに新たな表現領域を与える。

◎アナログ出力回路に3極管6CG7を投入し
 みずみずしく高品位なCD再生
◎新開発の出力用ライントランスを搭載
◎アナログフィルターを除去し,音の鮮度を向上
◎音質最優先のリレー式ミューティングパルス回路
◎音楽再生機に徹し,デジタル出力を積極的に省略
◎基本をきわめた抵抗ラダー型ツインDAC採用
◎振動に強いセンターマウントの低重心メカニズム
◎タイムフェードアウトを加えた多彩な編集機能





●SPECIFICATIONS●

 
D-107u
D-105u
方式
光学式コンパクトディスク
光学式コンパクトディスク
ピックアップ
半導体レーザーピックアップ
半導体レーザーピックアップ
量子化ビット数
16ビット直線式量子化
16ビット直線式量子化
サンプリング周波数
44.1kHz
44.1kHz
周波数特性
20Hz〜20kHz(±1dB)
5Hz〜20kHz(±1dB)
出力電圧
2.0V
2.0V
ダイナミックレンジ
89dB
89dB
SN比
105dB
105dB
チャンネルセパレーション
86dB
86dB
ワウフラッター
測定限界以下
測定限界以下
高調波歪率
0.09%(1kHz)
0.04%(1kHz)
デジタルダイレクト出力
×
0.5Vp-p/75Ω
消費電力
28W
25W
外形寸法
470W×147H×342Dmm
438W×147H×342Dmm
重量
10.3kg
7.5kg

※本ページに掲載したD-107u,D-105uの写 真・仕様表等
 は1990年1月のALPINE/LUXMANのカタログより抜粋し
 たもので,ラックス株 式会社に著作権があります。したがって
 これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁
 じられていますので,ご注意ください。

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