D-2200MBの写真
−D D−2200MB
ATRS・3HEAD DD TAPE DECK ¥138,000
ローディー(日立)が1981年に発売した高級3ヘッドデッキ。日立はローディーブランドで数多くの
優れたカセットデッキを出していました。昭和48年に世界初のコンビネーション3ヘッド搭載の3ヘッ
ドカセットデッキを発表した優れた技術力は高く評価されていました。現在では,オーディオの分野
から撤退しており,かつての活躍が懐かしく感じられるのは残念なことです。カセットデッキの分野
では,ヘッドだけでなく,モーター,素材技術など各部に優れた基礎技術をもつ日立ならではの高い
技術が感じられたものです。このD−2200MBは,日立の優れた素材の技術,機械技術,電子技
術などが総合的に生かされた名機だったと思います。

D−2200MBのヘッドは,もちろんローディー自慢のコンビネーション3ヘッドですが,素材的にも
新技術を取り入れた新開発のヘッドでした。「ヒタセンライトヘッド」と称するこのヘッドは,技術的困
難を克服し,センダストとフェライトという異種の素材を同時加工するというもので,他社には見られ
ない高度な技術の賜物でした。録音ヘッドにセンダストコアを使用し,再生ヘッドにフェライトコアを
使用することにより,それぞれに適した特性を持たせることが可能になり,優れた録音性能と再生
性能を両立させるという優れものでした。

ローディーの3ヘッドの歴史

モーターには,ローディー自慢の「ユニトルクモーター」が使われていました。このユニトルクモーター
は,8極に着磁された駆動用ドーナツ型マグネットと電気的に120度ずつずらした6枚の8分割3相
コイルから発生するトルクが,相互に補完しあい,絶えず一定したトルクが発生し,安定した定速回
転をするもので,同社のアナログプレーヤーなどにも使われていた物です。D−2200MBでは,こ
のユニトルクモーターをキャプスタン駆動用にDDメカニズムで使用し,真円度,真直度0.1μを誇
る高精度キャプスタンと相まって,0.018%(WRMS)の優れたワウ・フラッター特性を実現してい
ました。メカニズムはもちろんデュアルキャプスタンでした。さらに,モーター保持部シャーシにVC(バ
イブレーションカット)METALという,2枚の鋼板の間に薄い粘弾性高分子材料をサンドイッチした特
殊な構造のパネルを採用し,フラッター成分を遮断していました。

テープの特性に合わせてバイアス,イコライザー,レベルなどをコンピュータで自動チューニングする
ATRSシステムを搭載しており,テープの性能を引き出すことができるようになっていました。この
ようなコンピュータによる全自動チューニングシステムを初めて実現したのがATRSシステムだった
ことはあまり知られていませんが,1979年にローディーが発表したD−5500M(¥220,000)
が最初でした。日立の優れたコンピュータ技術を生かしたものだったのでしょう。

機能的には,ノイズリダクションとしてドルビーB,Cを搭載,テープポジションが4ポジションで,ノーマ
ル,クローム,メタルに加え,フェリクロームポジションがあったことが今では珍しいことです。ヘッドの
清掃用に専用の窓が付いていたことも特徴でした。テープカウンターは,通常の電子カウンターと走行
経過時間表示式の2つが並んで付いていました。レベルメーターは電子式ですが,その横に高い周波
数域専用のHigh Frequencyレベルインジケーターが別に付いていたことも特徴的でした。      

このように見てくると,日立の総合技術が各所に生かされた優れたカセットデッキだったと思います。
素材技術をはじめ,機械技術,電子技術など他社がうらやましがるほどの高度な基礎技術をふんだ
んに使用していたローディーのデッキをはじめとするオーディオ機器が現在見られないことは非常に残
念なことに思われるのは私だけでしょうか。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




ローディーデッキの頂点に立つ
ATRS・3ヘッドDDデッキ。 
◎より余裕ある録音特性と,定評の再生特性を結合した
  ヒタセンライト(センダスト・フェライト複合)R&Pヘッド
  搭載による3ヘッドシステム。
◎初段FETアンプにより,SN比および周波数特性を向上
◎ユニトルクDDメカニズムおよび高精度キャプスタン
  シャフトにより,ワウ・フラッター0.018%(WRMS)の
  驚くべき性能を実現。
◎常に一定した走行を追求したデュアルキャプスタン方式
◎モーター保持部にVCMETALを採用して
  音のにごりの原因となるフラッター成分を追放。
◎テープヒスノイズを20dB低減するドルビーCタイプ内蔵
◎多彩な機能とフェザータッチオペレーションを実現した
  コンピューター・コントロールシステム
◎高域飽和レベルを表示する
  H・F(High Frequency)レベルインジケーター
◎電子カウンター
◎テープ走行経過時間分秒表示のELAPSED-TIME
◎2色デジタル表示ピークメーター
◎ヘッドメインテナンス専用ドア
 
                 

●D−2200MBの仕様


録音再生ヘッド ヒタセンライト(センダスト・フェライト複合) 
R&Pコンビネーションヘッド×1
消去ヘッド フェライトガードダブルギャップ 
メタル消去ヘッド×1
モーター ユニトルクDDモーター(キャプスタン用)×1 
DCモーター(リール用)×1
ワウ・フラッター(WRMS) 0.018%  ±0.045%W・Peak
周波数特性 メタル   20〜22,000Hz  25〜20,000Hz±3dB(新EIAJ) 
クロム   20〜22,000Hz  25〜20,000Hz±3dB(新EIAJ) 
ノーマル 20〜20,000Hz  25〜20,000Hz±3dB(新EIAJ) 
フェリクロム  20〜20,000Hz  25〜20,000Hz±3dB(新EIAJ)
S/N メタルテープ 
     3%ひずみ 
     レベル聴感補正 
DOLBY・C・NR・ON 75dB  71dB(新EIAJ) 
DOLBY・B・NR・ON 69dB  65dB(新EIAJ) 
DOLBY・NR・OFF   61dB  57dB(新EIAJ)
入力インピーダンス/感度 LINE IN  50kΩ以上/100mV 
MIC(適合)300Ω〜5kΩ/0.4mV
出力インピーダンス(負荷) LINE IN   50kΩ以上 
HEADPHONE 8Ω〜2kΩ
電源電圧 AC100V 50/60Hz(切換不要)
消費電力 30W
外形寸法 幅435×高さ150×奥行282mm
重量 7.3kg
※本ページに掲載したD−2200MBの写真,仕様表等は1981年11月のローディーの
カタログより抜粋したもので,日立家電販売株式会社に著作権があります。したがって,
これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意く 
ださい。
    
 
★メニューにもどる        
 
 

★テープデッキのページにもどる
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp


inserted by FC2 system