DIATONE DA-F15
FM STEREO TUNER ¥60,000
1977年に,ダイヤトーン(三菱電気)が発売したFM専用チューナー。前年に発売された「Feature Series」の後継
のセパレートアンプとしてプリアンプDA-P15,パワーアンプDA-F15DC,DA-F10DCとともに,同じシリーズの
チューナーとして発売されたのがDA-F15で,同社初のクォーツPLLシンセサイザー方式の採用など,新しい技術を
投入した1台でした。

DA-F15には,精度の高い水晶発振子(6.4MHz)を分周器により1/64とした100kHzの基準となる信号によっ
て局部発振周波数を制御するクォーツPLLシンセサイザー方式が新しく採用されていました。76~90MHzの間を
100kHzおきに的確にロックしていく方式で,-10~+60℃の範囲では,局部発振器の周波数精度は±3kHzと
いう高精度が実現され,最適な同調が可能となっていました。
そして,クォーツPLLシンセサイザー方式ながら,チューニングにはバリコン方式が採用されていました。クォーツPLL
シンセサイザー方式では,通常バリキャップ(可変容量ダイオード)を用いたものが多いですが,アナログ感覚の操
作性の良さを重視してバリコンが使われていました。また,メモリーチューニング等の機能は搭載されていませんで
した。クォーツPLLシンセサイザー方式で最適な同調が可能となっていましたが,より確実な同調をとりやすくするた
め,従来のバリコンチューナーに搭載されていたセンターチューニングメーターに似たロック・インジケーターが搭載
されていました。

フロントエンドは,厳選された雑音指数の低いデュアルゲート・MOS FETと5連バリコンにより構成され,実用感度
1.8μV(10.3dBf)という高感度設計となっていました。また,バランスドミキサーを採用することによって,10.7
MHz以外の不要なスプリアス周波数を抑えることができ,相互変調歪みも大きく改善されていました。クォーツPLL
シンセサイザー方式により,フロントエンドのドリフトは極少に抑えられており,さらに特に急激な温度変化なども考慮
して,温度収縮変化に強いガラスエポキシ基板が採用され,より安定度が高められていました。



IF段は,選択度がNARROWとWIDEに切換えられるようになっており,しかもそれぞれ独立したブロック構成となっ
ていました。NARROWは,2素子セラミックフィルター4個の構成で,検波回路はクオドラチュア検波となり,実効選
択度は75dBという高選択度が実現されていました。WIDEは,4極+6極位相直線型LCフィルターの構成で,検波
回路はレシオ検波となり,高S/N比・低歪み特性が実現されていました。この位相直線型フィルターは,ダイヤトーン
が新開発したもので,群遅延特性にすぐれた高性能フィルターでした。そして,DA-F15は,1台のチューナーで,2
種類の検波方式が切換えられるというある意味ユニークなチューナーでもあり,特に,WIDE時には高音質が実現さ
れており,妨害波の影響を避けるNARROWでもソフトな聴きやすい音質が実現されていました。
MPX回路は,新開発のPLL MPX-ICを採用し,高調波歪率,S/N,ステレオセパレーション,温度安定度等の改善
が図られていました。



機能的には,シンプルで,IF段の選択度切換えの他,局間ノイズを抑えるMUTING,440Hzの信号音を・50%変
調時と同じ出力で発振させるキャリブレータ(較正器)が装備されていました。
大型のダイヤルスケールは,PLLシンセサイザー方式を象徴するかのような200kHzごとに階段状の目盛りとなっ
たデザインで,LED表示のロックインジケーター,シグナルメーターと合わせ,新しさを感じさせるデザインとなってい
ました。

以上のように,DA-F15は,当時としてはかなり先進的な技術内容を持つ高性能なチューナーでした。シンセサイ
ザー方式の受信安定度をしっかりと性能につなげた実力派のチューナーでしたが,ダイヤトーンブランドのチュー
ナーにおけるイメージの弱さ故か,高評価を得るには至らなかったのが残念なモデルだったと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



クォーツPLLシンセサイザほしき採用。
100kHzごとに的確に同調・ロックします。

◎クォーツPLLシンセサイザ方式採用
◎ロック・インジケータ採用で,より確実な同調
◎使いやすさを十分に考慮したバリコン式
◎2ブロック構成によるNARROW・WIDE選択度切換
◎新しいパーツ・回路構成によって,
 低歪率・高S/Nの実現
◎高感度受信を約束するFM専用5連バリコン
◎FM放送録音時に威力を発揮する
 エアチェック発振器(キャリブレータ)内蔵
◎シャープな感覚のパネルデザイン




●DA-F15形の定格●

回路方式  クォーツPLLシンセサイザ方式
MOS型FET RF増巾,5連バリコン
バランスドミキサー
選択度切換付き
4極,6極位相直線型フィルター
PLL MPX
エア・チェック発振器内蔵 
実用感度  1.8μV 
イメージ妨害比  110dB 
IF妨害比  110dB 
スプリアス妨害比  100dB 
キャリアリーク抑圧比  65dB 
周波数特性  30Hz~15000Hz(+0.5dB) 
ミューティングレベル  15dBf 
S/N  選択度WIDE     選択度NARROW
 モノ   :82dB    モノ   :78dB
 ステレオ:77dB    ステレオ:73dB 
キャプチュアレシオ 選択度WIDE:0.8dB 選択度NARROW:1.3dB 
実効選択度  選択度WIDE:45dB 選択度NARROW:75dB 
AM抑圧比  選択度WIDE:65dB 選択度NARROW:55dB 
高調波歪率  選択度WIDE     選択度NARROW
 モノ   :0.05%   モノ   :0.15%
 ステレオ:0.08%   ステレオ:0.25% 
ステレオセパレーション 選択度WIDE     選択度NARROW
  1kHz:50dB     1kHz:45dB
 10kHz:35dB    10kHz:30dB 
出力/インピーダンス 0~500mV/5kΩmax(30%変調) 
使用半導体  3FET,44Tr,27Di,9IC 
消費電力  17.5W 
外形寸法  480W×108H×356Dmm 
重量  約6.8kg 
付属品  PIN-PINコード1本
T字型FMアンテナ 
※本ページに掲載したDA-F15の写真,仕様表等は1977年
 11月のDIATONEのカタログより抜粋したもので,三菱電気
 株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等
 を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますの
 でご注意ください。

 

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