ＤＩＡＴＯＮＥ　ＤＡ-Ｆ６５０
ＡＭ/ＦＭ　ＳＴＥＲＥＯ　ＴＵＮＥＲ　￥４８，０００

１９７４年に，ダイヤトーン（三菱電機）が発売したＦＭ/ＡＭチューナー。ダイヤトーンはスピーカーの
ブランドというイメージが強く，他のコンポ－ネントの分野でのイメージは強くありませんが，１９７０年
代には，アンプチューナー，テープデッキ，アナログプレーヤーなど，総合オーディオブランドとして製
品群を展開していました。そうした中，当時のチューナーの主力機であったのがＤＡ-Ｆ６５０でした。

ＦＭのフロントエンドは，４連バリコンが搭載され，高周波特性のすぐれた低雑音のデュアルゲート
ＭＯＳ　ＦＥＴが高周波増幅段に２石とミキサ段に１石使用されていました。新開発のＱ（共振周波数
の信号の鋭さ）の高いモールドタイプの高周波コイルとあいまって，妨害排除特性が高められていま
した。

ＩＦ段は，フェイズリニアセラミックフィルター，ピークセパレーションが１ＭＨｚ以上のディスクリトランス
（ＦＭ検波トランス）が搭載されていました。また，リミッター効果の高いモノリシックＩＣを多く搭載し，
位相特性のすぐれたＩＦ段を構成し，歪率特性，キャプチャーレシオ，選択度などの諸特性を高めて
いました。

ＭＰＸ段には，二重平衡差動復調方式のＩＣとＱが高く温度・湿度の環境特性のすぐれたモールドタ
イプのトランスを採用し，広帯域にわたってすぐれたセパレーション特性と低歪率を実現していまし
た。
モードセレクターには，ＦＭ　ＡＵＴＯ，ＦＭ　ＭＯＮＯに加えて，ＦＭ　ＳＴＥＲＥＯ　ＯＮＬＹが設定されて
いました。これは，当時，将来に想定されてたＦＭ多局化に向けて，確実にステレオ放送のみを選局
できるようにしようとする機能でした。

音質に悪影響を与えるＭＰＸ段からのキャリアリークを抑えるために，ＭＰＸフィルター（キャリアリー
クフィルター）が搭載されていました。オーディオ帯域の周波数特性にすぐれた急峻な特性を持つ
ＬＣによる本格的なチェビシェフ型フィルターを１９ｋＨｚと３８ｋＨｚに同調させ，音質劣化を避けつつ
キャリアリークを抑えていました。

ＦＭミューティングは，ミューティングレベル２０dBに設定され，動作のＯＮ-ＯＦＦにかかわらず，トラ
ンジスターのバイアス条件が変わらない一定の設計で，ポップノイズが極小に抑えられていました。
また，ＦＭ，ＡＭそれぞれ独立した出力レベル調整が設けられており，音量を他のソースと揃えるこ
とが可能となっていました。
裏面パネルには，ＦＭ検波出力が取り出せるＦＭ　ＤＥＴ　ＯＵＴ端子が設けられ，将来想定された
４ｃｈ放送に対応可能としていました。（実際には実用放送とはなりませんでしたが・・。）

ＡＭ部は，同調回路が３段になったトリプルチューンＩＦＴ（中間周波数変換）をＩＦ段に採用し，音質と
選択度を向上させていました。

以上のように，ＤＡ-Ｆ６５０は，当時のダイヤトーンのチューナーの中心的モデルとして，オーソドッ
クスに技術が投入された，正攻法の設計がなされた1台でした。当時のダイヤトーンに共通の「ダイ
ヤトーンゴールド」と称されたゴールドのパネル面にツマミがバランス良く配置されたデザインも落ち
着いた高級感を感じさせるものでした。

以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。

◎強入力に強いＦＭフロントエンド
◎すぐれた位相特性をもつＩＦ段
◎ＭＰＸ段に二重平衡差動復調回路を使用
◎ステレオ・オンリー回路
◎チェビシェフ型キャリアリークフィルター
◎７５Ω同軸ケーブル用Ｆ型コネクター
◎フィーリングのすぐれた操作機構
◎４ｃｈ化への対策も十分
◎ダイヤトーン・ゴールドの豪華パネル

●定格●


■ＦＭチューナー部■

■ＡＭチューナー部■

※本ページに掲載したＤＡ-Ｆ６５０の写真，仕様表等は
　１９７４年のＤＩＡＴＯＮＥのカタログより抜粋したもので，
　三菱電気株式会社に著作権があります。したがって，
　これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律
　で禁じられていますのでご注意ください。
 

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