DIATONE DA-U850
INTEGRATED STEREO AMPLIFIER ¥150,000
1975年に,ダイヤトーン(三菱)が発売したプリメインアンプ。ダイヤトーンというとスピーカーのメーカーという
イメージが強いですが,1968年にブラックフェイスのDA55Uというプリメインアンプをスタートに,1970年代
にはかなりアンプにも力を入れ,セパレートアンプでは,DA-P100,DA-A100といった本格的な高級機も発
売していました。そうした中,発売された同社のプリメインアンプの最上級機がDA-U850でした。

構造上の特徴として,サイドパネルを見て分かるとおり,プリアンプ部とパワーアンプ部がシャーシの前後に分
かれて配置されていることがありました。パワーアンプブロックがきちんと独立しており,きちんとシールドされ
ていました。つまり,セパレートアンプ的なコンストラクションのブロックを前後に2つ集めたような2ブロック構成
になっていました。こうした構造により,パワーランジスターや電源部から発生する高熱及び磁気の影響がプリ
部に及びにくくなっていました。また,この形は,その後に発売されたセパレートアンプDA-P10,DA-A10の
シリーズに発展していったと考えられます。

もう一つ大きな特徴として,静特性のみならず,実使用時のダイナミックな特性を重視した設計とするために,
疑似カートリッジ,疑似スピーカーを接続して多くのデータをとり,設計がなされていることがありました。従来
PHONO入力端子に直接発振器を接続した状態でイコライザーの特性を評価していましたが,これでは実際
の使用に関してはRIAAカーブに対する偏差が大きくなるなどの問題が生じる可能性があるため,DA-U850
では,市販されている多くのカートリッジの回路定数を求めて作られた疑似カートリッジによって特性評価をし
ていました。そして,スピーカーを実際にドライブした際,周波数によってインピーダンス値および位相も変化す
るため,それを考慮した疑似スピーカーでデータをとることで,低インピーダンス時の特性改善,スピーカーを
生かす設計が図られていました。

イコライザーアンプは,初段増幅段に自社開発のローノイズトランジスターを採用していました。このトランジス
ターは,三菱の低濃度拡散技術により開発されたもので,従来のローノイズトランジスターに比べ,1/fノイズ
(周波数に反比例=周波数が低くなるほど増加する雑音)が約2dB改善されたものでした。この2石を含む4石
構成の差動増幅アンプとなっていました。こうした構成により,入力換算雑音-120dB(V),許容入力320mV
を実現していました。

パワーアンプは,全段直結ピュアコンプリメンタリーOCL回路で,ドライバー段,パワー段とも裸特性のよく揃っ
たペアトランジスターを使用してオープンループ時の低歪みを実現していました。出力段のパワートランジスター
には,高域特性の劣化を防ぐために,遮断周波数特性(fT)が高く,コレクターベース間容量(Cob)の少ないト
ランジスターを選別して使い,パラレルプッシュプル構成で,90W+90W(8Ω)の高出力を実現していました。

音質と機能に関わる段間アンプにもきちんと配慮がなされていました。トーンコントロール回路は,CR型です
が,スイッチ機構付の可変抵抗器を開発して搭載し,トーンコントロールのフラットポジションでは,CR時定数
回路が完全に分離されるようになっていました。トーンディフィート時には,トーンアンプをバイパスするのではな
く,CR時定数回路のみスルーする方式となっており,トーンフラット時にも周波数特性をフラットにするという設
計でした。トーンコントロールは,BASS,TREBLEに加え,中音域のコントロールをするプレゼンスコントロー
ルも装備され,それぞれ2段階のターンオーバー周波数の切替がついていました。トーンアンプには,トランジ
スターのリニアな動作範囲が広く,安定度のすぐれた直流負帰還100%のトーンアンプが搭載されていました。
ボリュームには,減衰度偏差,ギャングエラーとも,減衰度28dBまでは1dB以内,減衰度30dB以上では1.5
dB以内という,正確な22接点のディテント型アッテネーターが搭載されていました。

その他,機能的には,-10dB/-20dBのミューティング,15Hz/40Hzの2段切替のローカット,9kHz/15kHz
の2段切替のハイカット,STEREO/REVERSE/MONO/L to L&R/R to L&Rのモード切替が装備されて
いました。
入力は,PHONOが2系統,TUNER,AUXが2系統装備され,TAPE端子も2系統で,相互ダビングも可能と
なっていました。

以上のように,DA-U850は,正攻法で設計されたオーソドックスなアンプでしたが,業務用アンプでは定評を
得ていたダイヤトーンらしいまじめな設計と,ボリュームをはじめとするツマミ類もすべてムク削り出しのものが
搭載されているなど,まじめな作りがなされていました。そうしたことが音にもつながっていたのか,弱さのない
しっかりとした音を聴かせるアンプでした。


DIATONE DA-U750
INTEGRATED STEREO AMPLIFIER ¥98,000


また,DA-U850には,デザイン的には見分けがつかないほどそっくりなDA-U750がありました。内部も
ほぼ同一の設計で,出力段がパラレルプッシュプルではなくシングルプッシュプルになっており,出力規模
が小さくなっていましたが,機能等は同一で,コストパフォーマンスの高い弟機となっていました。当時のカ
タログでもDA-U750が中心に据えられており,価格で約1.5倍のDA-U850が弟機と見分けがつかな
いほどそっくりというのも,ダイヤトーンにとって商業的にどうであったのかと思ってしまいます。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



ダイナミックレンジの拡大を実現した
プリメインアンプ二機種

◎60W+60W(8Ω:20Hz~20kHz)のハイパワー(DA-U750)
  90W+90W(8Ω:20Hz~20kHz)のハイパワー(DA-U850)
◎超低雑音トランジスタ採用イコライザーアンプ
◎小出力時の低歪率化に,とくに留意して設計

コンストラクションの見直しから2ブロック構成採用
◎プリアンプブロックを独立させました
◎パワーアンプブロックを独立させました

ダイナミック特性を重視し,改めて見直しました
◎疑似カートリッジによる特性測定から
◎疑似スピーカーによる特性測定から

段間アンプを根本的に見直し,設計しました
◎プレゼンスコントロールを採用
◎フラット時,うねりのないトーンコントロール
◎直流負帰還100%のトーンアンプ
◎正確な22接点アッテネーターの採用
◎パワーレシオ2.8(DA-U750) 2.9(DA-U850)




●DA-U850/DA-U750定格●


(パワーアンプ部)

   DA-U850  DA-U750
出力 (20Hz~20kHz)
 両ch動作:130W+130W(4Ω),90W+90W(8Ω)
(1kHz)
 両ch動作:140W+140W(4Ω),95W+95W(8Ω) 
(20Hz~20kHz)
 両ch動作:85W+85W(4Ω),60W+60W(8Ω)
(1kHz)
 両ch動作:90W+90W(4Ω),65W+65W(8Ω)  
高調波歪率 0.1%(定格時),0.05%(1W時) 0.1%(定格時),0.05%(1W時)
混変調歪率 0.05%(1W時)  0.05%(1W時) 
パワーバンド幅  10Hz~30kHz  10Hz~30kHz
ダンピングファクター 80(8Ω)  80(8Ω) 
残留ノイズ  0.4mV  0.4mV 
入力感度/インピーダンス   1V/60kΩ 1V/60kΩ 



(プリアンプ部)

   DA-U850  DA-U750
入力感度/インピーダンス PHONO1:2.5mV/50kΩ
PHONO2:2.5mV/30,50,75kΩ
HIGH LEVEL INPUT:150mV/50kΩ
PHONO1:2.5mV/50kΩ
PHONO2:2.5mV/30,50,75kΩ
HIGH LEVEL INPUT:150mV/50kΩ 
出力レベル/インピーダンス PRE OUT:1V/1kΩ
REC1,2:150mV/1kΩ 
PRE OUT:1V/1kΩ
REC1,2:150mV/1kΩ  
高調波歪率 0.05%  0.05% 
周波数特性  PHONO(RIAA STD):20Hz~20kHz±0.3dB
HIGH LEVEL INPUT:20Hz~20kHz+0,-0.5dB 
PHONO(RIAA STD):20Hz~20kHz±0.3dB
HIGH LEVEL INPUT:20Hz~20kHz+0,-0.5dB 
プレゼンスコントロール ±3dB(800Hz,2kHz)  ±3dB(800Hz,2kHz) 
トーンコントロール BASS:±10dB(100Hz,50Hz)
          (TURNOVER 500Hz,250Hz) 
TREBLE:±10dB(10kHz,20kHz)
          (TIRNOVER 2.5kHz,5kHz)
BASS:±10dB(100Hz,50Hz)
          (TURNOVER 500Hz,250Hz) 
TREBLE:±10dB(10kHz,20kHz)
          (TIRNOVER 2.5kHz,5kHz) 
フィルター  LOW:15Hz,40Hz(12dB/oct)
HIGH:9kHz,15kHz(12dB/oct) 
LOW:15Hz,40Hz(12dB/oct)
HIGH:9kHz,15kHz(12dB/oct) 
PHONO許容入力  320mV(1kHz,0.1%歪)  300mV(1kHz,0.1%歪)  
入力換算雑音  PHONO:-120dB(V)
HIGH LEVEL INPUT:-100dB(V) 
PHONO:-120dB(V)
HIGH LEVEL INPUT:-100dB(V) 



(総合)

   DA-U850 DA-U850 
消費電力  200W  130W 
外形寸法  425W×148H×387Dmm  425W×148H×387Dmm
重量  17.5kg  17kg 
※本ページに掲載したDA-U850,DA-U750の写真,仕様表等は1975年9月
 のDIATONEのカタログより抜粋したもので,三菱電機株式会社に著作権があ
 ります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁
 じられていますのでご注意ください。

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