DIATONE DP-103
COMPACT DISC PLAYER ¥110,000
1983年に,ダイヤトーン(三菱電機)が発売したCDプレーヤー。CD元年の1982年,各オーデイオメーカー
からCDプレーヤーが発売され,ダイヤトーンからも第1号機としてDP-101(¥248,000)が発売されました。
この頃ダイヤトーンはオーディオブランドとしてスピーカー専業といったイメージで,スピーカー以外の単品コン
ポーネントはしばらく発売していませんでしたが,CDプレーヤーを発売し,スピーカー以外の機器への再度の
熱意が感じられたものでした。そのDP-101に次いで発売された2号機がDP-103でした。
各メーカーのCDプレーヤーの第1号機はいづれも20万円前後の価格で発売されていました。しかし,2号機
以降は各メーカーとも価格を10万円台に下げ,価格競争が始まりました。各メーカーとも機能をシンプルに抑
えるなどコストダウンに苦心しつつも,この後順調に価格を下げ,やがて10万円を切る機種も登場してくるこ
ととなりました。DP-103も,そうした流れの中の1台で,10万円にあと一息と迫る¥110,000という価格も
価格競争の流れを物語っていました。そして,機能も徹底的にシンプルに抑えられ,リモコンも付属せず,しか
し,構造等の中身はしっかりしたものとなっているという質実剛健といった設計がDP-103の特徴でした。
ピックアップ部は,高精度で安定性の高い自社開発の3ビーム・レーザー・ピックアップを開発して搭載してい
ました。3ビーム方式は構造が複雑になりますが,音楽信号を読み取る信号検出用メインビームとトラックズレ
を制御するための2本のトラッキングサーボ用サブビームに完全分離されているため動作が確実で安定性に
すぐれているといわれています。トラッキングサーボには,ロータリーミラーを使用した独自のトラッキング機構
が採用され,正確なトラッキングが確保されていました。さらに,ミラーを支える支持材に特殊ゴム材を採用し,
高速サーチ時の振動音が除去されていました。フォーカスサーボには,収束レンズと円筒レンズの組み合わせ
によるフォトダイオード上に結ぶ像の真円度で判別する方式が採用され,対物レンズの制御が正確に行われ
るようになっていました。対物レンズは,十分な分解能と収差を得るために,レーザー光波長の2分の1以下の
高精度で仕上げられたものが搭載され,サーボ回路からのエラー信号に対しては,スピーカーのボイスコイル
のように磁束密度の変化により高速移動させる方式で,瞬時にして正確な焦点制御が実現されていました。さ
らに,サスペンションを除去することで駆動の際の共振音を排除していました。
以上のような三菱ダイヤトーンの総合技術が生かされた3ビーム・レーザーピックアップは,レーザー光路系を
横置き設計でまとめた薄型コンパクトサイズで,システム全体のコンパクト化を実現していました。
回転系サーボ回路には,AFC付クォーツロック位相制御回路が採用され,独自のサーボ技術も駆使されるなど
強力なサーボ回路が構成されていました。
D/A部は,基本的に上級機で1号機のDP-101と共通のものが搭載されていました。自社開発の独自の回路
構成をもつチェビシェフ型フィルターとオーソドックスな16ビットDACとが組み合わされていました。
信号回路には,リード線をいっさい使用せず,金メッキされた出力端子はプリント基板にダイレクト装着されてい
ました。これにより,信号の伝達ロスを防止し,シールド線による浮遊容量がないためノイズが抑えられ,高域
特性が改善されていました。
デジタルオーディオとしてフラットな周波数特性を確保するためのイコライザ回路は,素子そのものから検討され
コンデンサーには銅箔スチロールコンデンサーが採用されていました。また,イコライザ回路の時定数を決める
回路の抵抗は許容差±1%のパンタル抵抗が採用されていました。
電源部は,電源電圧変動や負荷変動に対して,常に安定に動作するよう,デジタル回路,アナログ回路,サー
ボ回路など,すべての回路のDC電源は安定化されていました。とくにアナログアンプ部では,安定化電源を独
立して別個に設けるにより,デジタル回路,サーボ回路で発生するパルス性ノイズが電源回路を通してアナログ
アンプに入りこむのを防いでいました。
電源回路のコンデンサーには,音質改善用に開発されたコンデンサーを採用していました。漏れ電流が通常の
2分の1と少なく,またリード線にはすべて直流抵抗の少ない無酸素銅線が使用されたものでした。また,同じよ
うに無酸素銅線を使用した極性表示付電源コードが採用されていました。
DP-103の大きな特徴として,非常にしっかりした筐体構造がとられていることがありました。アナログ回路にと
って雑音源となるデジタル回路部,電源回路部を完全分離し,各回路完全独立のIFL(Interference-Less)シャ
ーシ構造とし,さらに,マグネティックディストーション対策として,遮断壁に銅メッキ鋼板を採用していました。そし
て,アナログアンプを1カ所に集中させることでパルス信号によるS/N劣化も抑えていました。また,キャビネット
そのものも銅メッキ鋼板に黒色焼き付け塗装するという凝ったものを使用し,コンパクトな筐体ながら,丈夫でずっ
しりと重量のあるCDプレーヤーとなっていました。
機能的には,きわめてシンプルにまとめられていました。基本的な操作ボタンはPLAY,STOP,PAUSEとトレイ
のOPEN/CLOSEで,選曲操作系もFWD/REVの前後のSKIPボタンとFF/FRの早送り,早戻しボタンのみで
プログラム選曲は搭載されていませんでした。REPEATも全曲のみというシンプルなものとなっていました。前述
のようにリモコンもなく,基本的な操作,選曲機能のみというシンプルなものでした。FL表示部も,演奏の曲番表示
と曲内経過時間表示のみ(残時間表示,全曲経過時間表示等もない)というもので,まさに質実剛健ともいえるシ
ンプルなCDプレーヤーとなっていました。
以上のように,DP-103は,機能的にはシンプルの極みともいえるCDプレーヤーでしたが,基本的な部分やつくり
にしっかりとコストがかけられており,コンパクトな筐体ながら,しっかりとした音をもっていました。故長岡氏も著述
の中で「不遇の天才」と称していました。あまりに基本に忠実なシンプルな作り,地味さが災いしたためか,またダイ
ヤトーン自身もあまりPRに力を入れていなかったこともあり,人気モデルとは言えなかった実力派の1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



CDプレーヤー,ダイヤトーンは伝送純度。
徹底音質重視設計,DP-103形,デビュー。

歴史に培われた確かな技術力が
この1台に凝縮された。

新開発の3ビーム方式レーザーピックアップ。
IFLシャーシ構造の徹底音質重視設計。
シンプルな操作性を得て,
CDクオリティはより身近に。


ダイヤトーンの総合技術力を集約
●3ビーム方式レーザピックアップ採用
●ロータリー方式のトラッキング・ミラー
●常に正確なフォーカスを結ぶフォーカス・サーボ
●サスペンションを除去した独自の対物レンズ
●システム全体をコンパクトにした薄型高性能
各回路部を独立 IFLシャーシ構造
●シャーシ構造そのものから音質重視設計
信号回路部
●高性能チェビシェフ形フィルター採用のD/A部
●アナログアンプ専用安定化電源回路
●いっさいリード線を使用しない信号回路
●素子から検討したイコライザ回路
電源回路部
●音質優先を考えたコンデンサ
回転系サーボ回路部
●きわめて安定性の高い回転系サーボ回路
優れた操作性を実現
●電動スライドトレー・フェール・セーフ設計のオート・ローディング
●2つのキーに選曲操作を集中
●長時間繰り返し演奏が可能なリピート機構
わずかなスペースで多機能表示
@DISC SET
ATRACK NO.
BELAPSED TIME
CREPEAT





●定格●

方式 コンパクト・ディスク・プレーヤー
チャンネル数 2チャンネルステレオ
周波数特性 5〜20,000Hz
ダイナミックレンジ 90dB以上(1kHz)
チャンネルセパレーション 90dB以上(1kHz)
歪率 0.004%(1kHz,0dB)
ワウフラッター クォーツ精度(測定限界以下)
消費電力 22W
外形寸法 350W×100H×320Dmm
重量 7.2kg
※ 本ページに掲載したDP-103の写真・仕様表等は
 1983年10月のDIATONEのカタログよ り抜粋した
 もので,三菱電機株式会社に著作権があります。
 したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等を
 することは法律で禁じられていますので,ご注意くだ
 さい。

★メニューにもどる         
     
   
★CDプレーヤー4のページにもどる

 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。
                       
メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system