Accuphase DP-80L・DC-81L
              COMPACT DISC PLAYER ¥280,000
              DIGITAL PROCESSOR    ¥470,000
1988年に,アキュフェーズが発売したセパレート型CDプレーヤー。アキュフェーズは,1986年,同社初のCD
プレーヤーとしてDP-80,DC-81のペアを発売しました。1号機がセパレート型というのもアキュフェーズらしい
ところですが,ディスクリートでDACを組むなど,その時点で望みうる技術を投入し,高い完成度を実現し,何よ
りもその音質で高い評価を得ていました。そして,進歩の早いデジタルオーディオ分野ゆえ,その後の2年分の
進化を取り入れ,改良・強化し,発売されたのがDP-80L,DC-81Lのペアでした。

CDトランスポート部であるDP-80Lは,前モデルDP-80を基本的に踏襲し改良を加えたものでした。CDドラ
イブメカは,ソニー製のもので,レーザーピックアップの高速・静粛なトラッキングが可能なリニアモーター・メカニ
ズムが搭載されていました。専用に開発された8ビットマイクロプロセッサーでコントロールされ,約1秒のスピー
ディーでスムーズな選曲が可能となっていました。ディスクテーブルの開閉もスピーディーでソフトなフィーリング
を併せもつものとなっていました。
また,機器内の動作をコントロールする基準信号を作る水晶発振子によるクロックは,通常,デジタル信号処理
用とマイクロプロセッサー用の2種類が使用されますが,二つの発振周波数に少しでも誤差が生じるとビートの
発生により音質の劣化が起こる可能性があります。そこで,DP-80Lでは,一つのクロックですべてをコントロー
ルするシステムとなっていました。
外観は,前モデルDP-80から引き継いだシンプルなデザインで,フロントパネル上には,PLAY,TRACK SE-
ARCH(BACK/NEXT),PAUSEの4個のボタンと表示部のみで,その他のファンクションは,下部のサブパネ
ル内に収納された形になっていました。天然パーシモンのサイドウッドがアキュフェーズらしさを醸し出していまし
た。



メカニズム本体は,振動を抑え共振を防ぐため,アルミダイカストフレームにマウントされ,さらにシャーシからフロ
ーティングして振動の伝達を遮断する構造となっていました。そして,DP-80自体の重量も15kgあり,CDプレー
ヤーとしては重量級となっており,回転部分を厚手の金属フレームで支持し,全体を振動に対して徹底的に強化
していました。また,全体に堅牢なフレーム構造のため,共振に強く,外部からの振動の影響も最小限に抑えら
れるようになっていました。
出力は,いち早くアキュフェーズがDP-80,DC-81で提唱し,EIAJ規格として制定されたデジタルオーディオ・イ
ンターフェーズに基づく光ファイバー出力(いわゆるTOSリンク)2系統と,75Ω同軸出力が引き続き装備されてい
ました。
D/AコンバーターDC-81Lは,光入力3系統,同軸入力3系統を装備し,当時デジタル出力端子が装備されていた
BSチューナー,デジタル出力付きが将来常識化すると想定されたDAT等への対応も考えられ,48kHz,44.1kHz
32kHzの3サンプリング周波数に自動対応しており,デジタル・プロセッサーと称されていました。
DC-81Lの心臓部・D/Aコンバーターは,当時の最高位であった20ビット方式が採用されていました。DC-81で世
界で初めての16ビット・ディスクリート式のD/Aコンバーターを搭載し,すぐれた性能を実現したアキュフェーズがここ
でまた世界初の20ビット・ディスクリート方式D/Aコンバーターを開発・搭載していました。動作精度は,16ビットの
上または下にビットをプラスする通常の方法とは異なり,各ビットの精度を1/2020=9.54×10-7まで向上させて
の本当の意味での20ビットとなっていました。つまり,16ビットに対してさらに16倍の精度で変換する能力を備え,
その結果,実測ひずみ率(純ひずみ成分のみ:1kHz)0.0005%という,当時のCDプレーヤーの限界ともいえる
性能を実現していました。変換方式は,リニアリティの面で優位性がある電流加算型で,20ビットの理論限界値の
性能を実現するために,世界で初めて(唯一?)のディスクリート方式が採用されていました。電流スイッチ素子と
超精密抵抗器によって構成され,完全な動作を実現するために,1台1台を厳密に調整し,小出力時のひずみ(ゼロ
クロスひずみ)も完全に排除していました。
不要雑音成分を除去するフィルター部には,左右独立20ビット8倍オーバーサンプリング・デジタル・フィルターが
搭載されていました。DC-81では2倍オーバーサンプリングであったのに対して8倍オーバーサンプリングと大幅
に進化したもので,高度なデジタル演算手法を駆使して24.1〜328.7kHz間の減衰量を−110dBという驚異
的な値が実現され,音質劣化の原因となる通過帯域リップルは±0.00005%以内と,当時得られる中でも最高
水準のフィルターでした。
サンプリング周波数が8倍の352.8kHzと高くとれていることにより,D/Aコンバーターの出力信号の高周波雑音
成分は,352.8−20=332.8kHz以上に追いやることができており,これらの不要成分をカットするオーディオ・
ローパス・フィルターは,緩やかな特性のものでよくなり,素子を厳選し,位相特性等音質への悪影響の少ないディ
スクリートGIC3次バターワース・アクティブフィルターで構成されていました。
さらに,デジタルフィルターが発生するまるめ誤差を次のデータに帰還してノイズを低減するという手法により可聴
帯域成分内の雑音を減少させるノイズシェーパーが搭載されていました。20ビット・コンバージョンとあいまって,再
量子化ノイズは極限まで低減されていました。
高周波雑音のオーディオ信号への悪影響を防ぐために,DC-81Lでは,さらにD/Aコンバーターの直前で電気的
に完全に分離するために,各ビットごとにフォト・カプラー(伝送帯域7Mbit/sec)が配され,左右合計42個のフォト
カプラーによって,導体を通してのノイズ干渉が排除されていました。フォト・カプラーの出力は,リールド・フレームの
外にあるマザー・プリントボードを通って磁気的,電気的に遮断されたアナログ回路のコンバーターに入力されるよ
うになっていました。
デジタル経路を光ファイバーで分離し,アナログ部との間をフォト・カプラーで遮断しても高周波雑音は,電源を通り空
間を飛んで干渉する可能性があるため,DC-81Lでは,その対策として,デジタル回路とアナログ回路を金属でシー
ルドし,電源もそれぞれ専用トランスによって完全に分離されていました。さらに,オーディオ回路は,左右の回路を独
立したプリントボードにレイアウトし,左右2捲線のトランスとともにチャンネル間の干渉を抑えていました。
また,外部への不要輻射は,他のオーディオ機器にも悪影響を与えるため,アキュフェーズのチューナー技術,高周波
技術を生かして,内部のシールド等,対策がとられていました。そして,電源を通しての漏れは,本格的なラインフィル
ターでカットしていました。

当時,まだ一部販売されていた録音時に高域を上昇させ,再生時に下降させることでS/Nの改善を図るエンファシス
CDに対して,通常のCDプレーヤーでは,オーディオ回路の中で,CR素子により周波数特性を変えて対応されてい
ましたが,DC-81Lでは,デジタル信号の段階で特性を変えるデジタル・ディエンファシスが搭載され,所定の特性に
対して,偏差±0.001dB,位相差1.5度以内という高度な特性が確保されていました。
最終オーディオ段は,ここでの増幅の必要がないようにコンバーターの出力を設定することで,アンプ部はバッファー
のみの単純な構成となっていました。回路はディスクリート構成・プッシュプルDCサーボ直結方式で,S/N,歪み特
性など,極限ともいえる特性を実現していました。
出力端子は,通常のRCAジャックが2系統,さらにXLRタイプの平衡出力が1系統装備されていました。また,デジタ
ル方式の音量調整が可能となっていました。20ビットであることを生かして,4ビット分の余裕を生かした音質劣化の
無い音量調整が実現され,リモコンでの操作も可能となっていました。
以上のように,DP-80LとDC-81Lのペアは,アキュフェーズのセパレート型CDプレーヤーの第2世代として,前モデ
ルをベースに改良が加えられ,しっかりした作り,物量とあいまって,高い完成度を実現していました。バランスのとれ
たしっかりとした音とパーシモンのサイドウッドを装備した落ち着いたデザインなど,さすがに当時の最高級機で,アキュ
フェーズらしさを感じさせるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



伝統の光ファイバー伝送
ダイキャストフレーム・メカニズム
重量級高剛性構造

DP-80Lコンパクト・ディスク・プレーヤー

◎出力は広帯域光ファイバー2系統と75Ω同軸
 を装備。付属の本格的な石英光ファイバーで
 理想伝送を実現。
◎全ての動作のタイミングを一つのマスター・
 クロックでコントロール。ビート音を発生せず
 音質の劣化が皆無。
◎リニアモーター・レーザーピックアップと8
 ビット・マイクロプロセッサーにより1秒以下
 の選曲時間
◎メカニズム本体をアルミ・ダイカストフレーム
 にマウント。更にフローティングにより振動・
 共振対策を施したメカニズム
◎重量級シャーシによる無共振設計
◎アナログ・プレーヤー感覚の操作機能
◎一連のアキュフェーズ・ラインにマッチした
 シンプルで優美な外観



超高精度20ビット・ディスクリートD/Aコンバーター
20ビット8倍オーバーサンプリング
3サンプリング周波数に対応
DC-81L
ディジタル・プロセッサー

◎理論限界値の性能を実現した世界初の
 20ビット・ディスクリート方式D/Aコンバーター
◎左右独立20ビット8倍オーバーサンプリング・
 ディジタルフィルター
◎素子を厳選したGIC3次バターワース・アクティブ
 フィルター
◎左右合計42個の「オプト・カプラー」でディジタル
 フィルターとD/Aコンバーターを電気的に遮断。
 ディジタル部とアナログ部は完全に分離され干渉
 を防止
◎48kHz,44.1kHzそして32kHzの3サンプ
 リング周波数に対応。入力は光3系統,同軸
 3系統,計6系統を装備
◎量子化雑音を更に減少させるノイズ・シェーパー
◎ディジタル・ディエンファシスにより偏差0.001dB
 位相1.5度以内の理想特性を実現
◎ゲイン0dBバッファー・アンプのみのDC直結
 出力段
◎ディジタル方式レベルコントロール。リモート・
 コマンダーで自在に調整可能。出力端子は
 不平衡2,平衡1の合計3系統
◎徹底した干渉防止と不要輻射対策
◎一連のアキュフェーズ・ラインにマッチした
 シンプルで優美な外観
 




●保証特性●


●CDプレーヤ DP−80L●


形式 CD専用ディジタル信号再生器
フォーマット CD標準フォーマット 
 エラー訂正方式:CIRC 
 チャンネル数:2チャンネル 
 回転数:500〜200rpm(CLV) 
 演奏速度:1.2m/s〜1.4m/s 一定
読み取り方式 非接触光学読み取り(半導体レーザー使用)
レーザー GaAlAs(ダブルへテロ・ダイオード)
ディジタル出力フォーマット・レベル フォーマット:DIGITAL AUDIO INTERFACE 
OPTICAL:光出力:−21〜15dBm (EIAJ)
発光波長:660nm 
CAXIAL:0.5Vp-p75Ω
使用半導体 6Tr 21IC 20Di
電源・消費電力 100V・117V・220V・240V 50/60Hz 15W
寸法・重量 幅475mm×高さ135mm(脚含む)×奥行373mm 15.0kg



●ディジタル・プロセッサー DC−81L●


形式 ディジタル・プロセッサー
フォーマット EIA標準フォーマット
 量子化数:16ビット直線 
 サンプリング周波数:32.0kHz ±0.1%
              44.1kHz ±0.1%
              48.0kHz ±0.1%
周波数特性 4.0〜20,000Hz ±0.3dB
D/Aコンバーター ディスクリート20ビット
ディジタル・フィルター 20ビット8倍オーバーサンプリング
ノイズ・シェーパー機能
ディジタル・ディエンファシス機能 偏差0.001dB
全高調波ひずみ率+ノイズ 0.0016%(1000Hz) 
0.002%(20〜20,000Hz)
S/N 120dB
ダイナミックレンジ 98dB
チャンネル・セパレーション 112dB
定格出力・出力インピーダンス BALANCED   :2.5V 50Ω(25Ω/25Ω) 平衡XLRタイプ 
UNBALANCED:2.5V 50Ω  RCAフォノジャック 
ディジタル入力フォーマット・レベル フォーマット:DIGITAL AUDIO INTERFACE 
OPTICAL:受光電力:−15〜−27dBm 
COAXIAL:0.5Vp-p 75Ω
使用半導体 89Tr 5FET 98IC 54Di
電源・消費電力 100V・117V・220V・240V 50/60Hz 35W
寸法・重量 幅475mm×高さ135mm(脚含む)×奥行373mm 15.9kg
※本ページに掲載したDP−80L,DC−81Lの写真・仕様表等は1988年2月の
アキュフェーズ
のカタログより抜粋したもので,アキュフェーズ株式会社に著作権が
あります。したがってこれら
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