Ａ＆Ｄ
ＤＰ-９０００
ＣＯＭＰＡＣＴ ＤＩＳＣ ＰＬＡＹＥＲ ￥１５８，０００
１９８７年に，Ａ＆Ｄが発売したＣＤプレーヤー。Ａ＆Ｄは，１９８７年に赤井電機と三菱電機が提携
して発足させた新ブランドでした。ＤＰ-９０００はＡ＆ＤブランドのＣＤプレーヤーの１号機で，テープ
デッキ，ビデオデッキ等，伝統的にメカニズム系機器にすぐれた技術を持つ赤井電機がベースに
あるだけに，ＣＤトランスポート部をはじめ充実した内容を持つ１台になっていました。
ＤＰ-９０００の最大の特徴は，シャーシ，メカニズム等の剛性を高め，構造的強度がしっかりとった
設計となっていることでした。シャーシには，Ｕ型のアルミダイキャストシャーシが採用されていまし
た。このシャーシは底面がハニカム構造となっており，剛性がさらに高められていました。筐体全
体はこのＵ型の一体型アルミダイキャストシャーシの上から銅メッキをした３．２mm厚・重量３ｋｇの
鉄板の天板を重ね，１８mm厚スターウッド材の側板が取り付けられた構造となっており，トータル
に剛性と耐振性を高めていました。そして，セラミックの脚部により下からの振動もシャットアウト
するようになっていました。
メカニズムブロックは，剛性の高いシャーシにダイレクトにマウントする構造となっていました。そし
てメカニズムブロック自身も，リニアトラッキングメカから，シャーシ，トレイ，モーターに至るまでアル
ミダイキャスト製で剛性が高くとられていました。特に，トレイ部もアルミダイキャスト製というのは，
このクラスのＣＤデッキでは珍しいものでした。トレイの開閉は，電車の扉が閉まるときのようなダブ
ルアクションとなっており，開閉時のディスクへのショックを低減していました。
モーターはトルクムラの少ないブラシ＆スロットレスタイプのＤＣモーターが採用され，ディスクの回
転部には他に例を見ない大型のクランパーが搭載されていました。これは「垂直装着方式ディスク
サイズ・スタビライズドクランパー」と称され，通常のＣＤデッキがディスクのセンター部だけを支えて
回転させているのに対し，ディスク全体を確実に支えようとするもので，ターンテーブル方式に通じ
る方式で，ディスクの不要振動も大きく低減されていました。
ディスク面についた傷や埃による音飛びやトラック飛びといった問題が生じるのを防ぐためのサー
ボシステムとして，定常時，外部振動検出時，ディスク面傷検出時３つの状態に対応し，サーボ
ゲインを自動的にコントロールする独自の「Aサーボシステム」が搭載されていました。
Ｄ/Ａ変換部には，４倍オーバーサンプリング１８ビット精度２６６次デジタルフィルターが搭載され，後
段のフィルターの負担が軽減された結果，後段には音質面に有利な３次のＧＩＣアナログフィルターが
搭載されていました。Ｄ/Ａコンバーターは，１６ビットタイプのものがＬ・Ｒ独立で搭載されチャンネル間
の位相ズレを排除していました。
出力アンプには，カップリングコンデンサーが排除されたＤＣサーボ搭載のディスクリート構成のアン
プが搭載され，パーツの面でもオーディオ用高音質パーツが投入されていました。
デジタル系とアナログ系の分離も徹底され，電源部から回路基板までセパレートされていました。電源
部はデジタル系，アナログ系独立の２トランス構成で，アナログ用には磁束漏洩が少ないトロイダル型
トランスが搭載されていました。アナログ系基板は銅メッキ鋼板製のシールドケースに収められ，デジタ
ル系からの干渉を防ぎ，デジタル系は両面基板が採用され，不要輻射低減のためのシールドが施され
ていました。さらに，６系統のフォトカプラーが搭載され，光伝送による徹底したアイソレーションが行わ
れていました。
デジタル出力は，同軸，光，各１系統が備えられ，デジタル出力未使用時の不要輻射を抑えるため，
ＯＮ/ＯＦＦスイッチも備えられていました。
以上のように，ＤＰ-９０００は，外観上目立つ方ではありませんでしたが，デジタル時代を見据えた新生
ブランドＡ＆Ｄ初のＣＤプレーヤーとして，また最上級機として，メカニズムや筐体などしっかりとした作り
が光る１台でした。低域から高域まで滑らかでバランスの取れた音をもっていましたが，デザインも含め
逆に明確な個性のわかりにくさが，広い人気につながらなかった要因であったのかもしれません。
