DR-750の写真
DENON DR-750
CASSETTE TAPE DECK ¥230,000

1977年にデンオンが発売した高級カセットデッキ。水平型のカセットデッキを立てたようなスタイルで,同社の
オープンリールデッキのイメージのデザインを持っていました。2ヘッドデッキの究極をめざした高性能なデッキ
でした。

DR-750は,テープの走行安定性とヘッドタッチの面からあえて2ヘッドを採用し,2ヘッド方式のメリットを生か
して性能を追求したというカセットデッキでした。デンオンは1980年にDR-F3,F2,F1のシリーズで3ヘッド化
を行い,3ヘッドデッキに進んでいったので,デンオン最後の高級2ヘッドデッキともなったモデルでした。
オープンリールでは録音再生独立ヘッドを使用していたデンオンが,最高級機DR-750で,2ヘッドを選択した
理由として,(1) カセットハーフの小窓からヘッドタッチを行う録音ヘッドのヘッドタッチへの不安 (2) 録音ヘッド
と再生ヘッドとのアジマスズレ,の2点を上げていました。ナカミチなどがこれらの問題を独自の技術で解消して
いこうとしていましたが,デンオンは従来技術の練り上げで完成度を高めていくという方向を選んだと想像され
ます。

DR-750の走行系は,デュアルキャプスタン方式が採用され,テープテンションの安定と,テープ振動の抑制が
図られていました。DR-750のデュアルキャプスタンによる走行系は「ダイレクト検出サーボ・2キャプスタン方式」
と名付けれたもので,メインキャプスタン軸のフライホイールに,高精度に磁気記録された500個のパルスを磁気
ヘッドで検出することにより,キャプスタンの回転スピードをダイレクトに検出し,駆動モーターをコントロールする仕
組みでした。また,2つのキャプスタンの駆動には通常用いられていた弾性ベルトに代えて伸び縮みしない非弾性
ベルトを使用し,回転力を即座にフライホイールに伝え,回転ムラや共振現象を抑えていました。これにより,ワウ・
フラッター0.04%(WRMS)の安定した走行系を実現していました。
また。これらのメカニズムは高精度と高耐久性を兼ね備えたアルミ鋳物ベースに取り付けられていました。

DR-750のメカ部とアルミ鋳物ベース

2ヘッドで高い性能を実現するために,DR-750には,新開発の1ミクロン・ギャップのカセット用センダストヘッドが
搭載されていました。このヘッドは,飽和磁束密度が大きく,録音時の大入力信号にも磁気飽和を起こしにくいセン
ダスト・チップと,高域特性に優れたフェライト・コアで構成され,高精度な加工が施されたものでした。

テープセレクターは4段切換え式でした。メタルテープ出現以前のモデルですから,ポジションは,LH(ノーマル)
FeCr(フェリクローム),CrO(クローム),Co(コバルト)の4つで,クロームポジションがいわゆる酸化クロムを
使ったテープ用と,コバルト磁性体を使ったテープ用に分かれていました。これは,クロームテープとコバルト磁性
体を使用したテープの特性の差に細かく対応したものでした。さらに,バイアス可変つまみも備えていました。

カセット装着部DR-750のヘッド部

カセットの装着は,当時多く見られた直接カセットをメカ部に装着するダイレクト・ローディング式で,正常な装着状態で
のみテープ残量表示照明ランプが点灯し,かつ操作ボタンが操作できるセーフティ・スイッチ付きとなっていました。
また,録音・再生のスタート・ストップ時には,テープを痛めないよう,エアーダンパーによって静かに,かつ着実なタイ
ミングでヘッド及びピンチローラーがテープに接したり離れたりするようになっていました。操作ボタンは,当時最先端で
あったフェザータッチを採用し,軽く確実な操作感を実現していました。
さらに,ヘッド等のクリーニングが容易なように,ヘッド前のパネルを簡単に外せるようになっていました。

その他,REC MUTE機能や,TIMER START機能,ドルビーノイズリダクションなどが機能として搭載されていま
した。また,レベルメーターは,VU,PEAK切り換え式になっていました。録音レベルは,LINE,MIC別々に調整が
可能になっていて,LINEとMICのミキシングも可能でした。

以上のように,DR-750は,デンオン最後の2ヘッドの高級デッキとして,同社のオープンリールで培った技術を生か
し,また,オーソドックスに性能を追求した高性能デッキでした。2ヘッドで一つの頂点をめざした1台として名機の1つ
といえると思っています。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


それは「妥協」との訣別。
テープデッキとしての追求が
基本性能を飛躍させます。

カセットデッキの理想像を追求。
優れたテープ走行性と
高品質磁気ヘッドを実現

◎音とびやレベル変動の少ないクリアーな音質
◎カセットハーフの影響を受けにくい周波数特性と
 38/2トラの優秀機に匹敵するチャンネル間位相特性
◎非弾性ベルト駆動による,
 ダイレクト検出サーボ・2キャプスタン方式から生れる
 0.04%W.rms以下のワウ・フラッター
◎いつまでも維持される初期性能こそ
 完成度の高いメカニズム
◎広帯域,低ひずみ率の録音・再生を可能にした
 センダストヘッド
◎コバルト系テープも考慮した4段テープセレクター
◎テープにベスト・チューニングする
 連続可変バイアス調節
◎テープとヘッドの保護を考慮したメカニズム
◎容易なヘッド・クリーニングも,性能維持のポイント
◎オープン・デッキのフィーリング,
 フェザータッチの操作ボタン
◎新方式,クイックな録音スタート
◎ユニークなポーズ/ミュート録音
◎操作の容易な,タイマー録音
◎VU/PEAK切換えメーター搭載
◎ドルビー動作を乱す,エア・チェック時には
 MPX,FILTER-ON。そのほかは,
 MPX,FILTER-OFFで広帯域録音。
◎テープ・ノイズを抑える,
 ドルビー・ノイズ・リダクション回路内蔵。
◎ラインとマイクのミキシング可能。
 
 
●DR-750仕様●

 
形式 4トラック・2チャンネル・ステレオ・カセット・デッキ
使用半導体 トランジスター74個,IC8個,ダイオード93個,発光ダイオード2個
サーミスター2個,整流器2個
ヘッド 録音・再生兼用ヘッド:センダストチップ-フェライトコア
消去ヘッド:フェライト
使用モーター DCコアレス×1,DCガバナー×1
テープスピード 4.8cm/sec
スピード偏差 ±0.5%以内
早送り巻き戻し時間 約70秒(C-60)
使用カセットテープ C-60,C-90フィリップス形カセット
使用テープの種類 ローノイズ,フェリクローム,クローム,コバルト,ノーマル
録音バイアス 約100kHz
(バイアス量はクロームテープ位置に対して約+5%〜−35%調整可能)
総合SN比 65dB以上(CCIR,w.rms)
但しDOLBY NRスイッチON,コバルト系テープの1kHz THD3%レベルに対して
総合
第3次高調波歪率
0.9%以下
但しLHテープで1kHz,規準録音レベル(200pwb/mm)時
総合周波数特性 コバルト系テープ:30〜18,000Hz±3dB
LHテープ     :30〜16,000Hz±3dB
(−20dBMPXフィルタースイッチOUT,ドルビーNRスイッチOUT,にて)
チャンネルセパレーション 35dB以上(1kHz)
クロストーク 65dB以下(1kHz)
ワウ・フラッター 0.04%w.rms以下(JIS),0.1%rms以下
チャンネル間位相変動 10kHzにて,±10°(P-P)以内
入力 マイクロホン:−70dB(インピーダンス10kΩ不平衡)
ライン    :−20dB(インピーダンス50kΩ不平衡)
出力 ライン:+2dB(1Vrms,10kΩ負荷時,出力VR最大)
    適合負荷インピーダンス600Ω以上
ヘッドホン:1mW
    適合負荷インピーダンス
電源・消費電力 AC100V 50/60Hz・38W
外形寸法・重量 415W×303H×226Dmm・約12.5kg
※本ページに掲載したDR-750の写真,仕様表等は1977年12月
 のDENONのカタログより抜粋したもので,デノン株式会社に著作権
 があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等する
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