ONKYO DX-30
COMPACT DISC PLAYER ¥150,000
1983年に,オンキョーが発売したCDプレーヤー。前年の1982年に,各オーディオメーカーからCD
プレーヤーの1号機が次々と発売され,CDがスタートしたCD元年,オンキョーは1号機DX-5を発売
しました。¥250,000という高価格もあり,ヒット作とはなりませんでしたが,ここでの経験や技術を
生かして,コストパフォーマンスを高めた2号機がDX-30でした。



CDプレーヤーの第1号機は,各社とも縦型ローディングのものがほとんどでした。これは,CDのオリ
ジネーターであったソニーの試作機が縦型であったことからそうなったともいわれています。そんな中
オンキョーのDX-5は,ソニーと同じく水平ローディングを採用し,内部のディスクが見える透明な前面
パネルが特徴的な凝ったデザインとなっていました。DX-30も同じくトレイ式の水平ローディングを採
用し,上半分が透明で,ディスク面が見え,緑に輝くDISC INインジケーターが付いたトレイデザイン
となっていました。立体的なフロントパネルのデザインイメージも継承され,オンキョーらしさとなってい
ました。

D/Aコンバーターは,16ビットの積分型で,ソニーの1号機CDP-101と同じCX-20017を搭載して
いました。ビート障害(折り返し雑音)を防ぐローパスフィルターは,アナログ11次タイプでモジュール
化されて搭載されていました。まだデジタルフィルターは採用されていませんでした。

DX-30の大きな特徴は,アンプ部や電源部等に,自社のアンプで開発・搭載された技術を積極的に
投入していたことでした。
アナログ系のアンプ部は,オンキョーの独自開発のサーボオペレーショナルアンプを搭載し,音質に
悪影響を与える信号経路のコンデンサー等を一切用いずに,混変調歪みの原因となる,有害な超低
域直流成分をカットするスーパーサーボ回路を採用していました。これにより,2Hzから20kHzまで
フラットな周波数特性を確保し,混変調歪みを抑えていました。



電源部には,スーパーターボ方式が採用されていました。これは,デルタターボ回路とターボフィルター
を組み合わせた方式の総称で,電源トランスと,増幅部分を電気的に完全分離し,トランス~発生す
るフラックスノイズや,ケミコン充電のためのパルス波による高調波スペクトルによる変調雑音を取り
除くことで音質の改善を図ろうとするものでした。デルタターボ回路は,ダイオードをデルタ結線した形
をしており,ダイオードのはたらきにより,電源トランスの両端
の電圧に対する電圧変動と信号回路の
アースポイントへの変調雑音の流れ込みを抑えるはたらきをするものでした。
ターボフィルター回路は
電源トランスのところにCRによる特殊フィルターを入れたもので,このCRとトランスのイン
ダクタンス
により,等価回路のフィルターを構成し,変調雑音成分を抑えた充電エネルギーをケミコンに送り込む
はた
らきをするとともに,外部のAC電源に乗っている種々の雑音等が入り込むのを防ぐはたらきを
するものでした。
さらに,電源部は,制御系(サーボ系),デジタル系,オーディオ系,ディスプレイと4
つの異なる機能のステージには,電源干渉を防ぐために,それぞれ独立したDC電源を設けて直接
給電することで,音の純度を高めていました。

メカニズム部は,上述のように水平ローディングで,ディスクトレイ移動用モーターと,ディスクをセン
タースピンドルへ固定するチャッキングモーターとは別に設けられ,安定したローディング,チャッキ
ングを実現していました。レーザーピックアップや,ピックアップ駆動用モーター,ディスク回転用モー
ター等の機構部分は,アルミダイキャストによる超精密仕上げの一体化構造を採用し,高い安定性
を確保していました。そして,このピックアップ部を含むブロックはシャーシから浮かせた防振構造と
なっており,外部からの振動,衝撃等の影響を低減していました。また,ディスク回転用モーターに
は,特にCDプレーヤー用に開発された小型DDブラシレスサーボモーターを採用し,耐久性も高め
ていました。



機能的には,まだ過渡期の部分も見受けられますが,当時のCDプレーヤーとしては標準的なもの
でした。選曲機能としては,前後へのジャンプ選曲,8曲までのランダムメモリー,2スピードの早送
り機能(正逆方向),インデックスサーチ,全曲リピート機能が搭載されていました。10キーが装備
されていましたが,これはメモリー,インデックスサーチ時のみに使用可能で,10キーによるダイレ
クト選曲はできませんでした。
表示部は,FL表示で,トラック番号,インデックス番号,演奏時間,メモリー曲番,ピックアップ位置
の表示が装備されていました。演奏時間は,リメインダーキーを押すと残量表示に切り替わるよう
になっていました。ピックアップ位置をLED等で表示する機能は,アナログプレーヤーから移行し
つつあったこの時期のCDプレーヤーでは多く見られた機能でした。

以上のように,DX-30は,オンキョーのCDプレーヤーの第2世代として,価格を下げつつ,同社の
アンプに搭載された技術を投入するなど。性能面,機能面の両面での向上が図られ,オンキョーら
しさも感じられるようになっていました。まだまだ初期のモデルだけに,今から見るとやや完成度が
低く見える部分もありますが,当時のオンキョーが新しいソースの機器にかける意欲が感じられる
1台でした。レンジの広さ,クリアさなどは後のCDプレーヤーに比べると劣りますが,逆に癖の少
ないナチュラルな,バランスがとれた音となっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



インテグラで培われたハイテクノロジーと
数々のノウハウを満載して
音創りひとすじのONKYOが贈る
本格派コンパクトディスクプレーヤー,
音と機能が光ります。

操作性の向上,それに多機能ぶりが
DX-30の大きな特徴のひとつです。

◎8曲ランダムメモリー演奏機能。
◎ジャンプ選曲機能(正逆方向)。
◎2スピードの早送り機能(正逆方向)。
◎インデックスサーチ機能。
◎リピート演奏機能。
◎ピックアップポジション表示。
◎残量時間表示。


驚異のスーパークオリティサウンドを
実現した最先端のデジタルテクニック。

◎スーパーターボ方式採用。
◎11次ローパスフィルター採用。
◎スーパーサーボ搭載。
◎機能別独立DC電源採用。


高信頼性を保証する精密機構部。
◎独立駆動水平オート・ローディング方式。
◎一体化構造のレーザーピックアップ駆動機構。





●主な仕様●

チャンネル数  2チャンネル 
回転数(CLV)  約500~200rpm 
線速度  1.2m/s~1.4m/s 
演奏可能時間  75分(最長) 
標本化周波数  44.1kHz 
複合化ビット数  16ビット直線 
周波数特性  2Hz~20kHz(±0.5dB) 
SN比  95dB以上 
チャンネルセパレーション  90dB以上(1kHz) 
高調波歪率  0.003%以下(1kHz) 
ワウ・フラッター  測定限界以下(水晶精度) 
出力レベル  ライン:2Vrms  ヘッドホン:30mW 
出力インピーダンス  ライン:560Ω  ヘッドホン32Ω 
ピックアップ  半導体レーザーピックアップ 
モーター  DCサーボモーター×2(ディスク,ピックアップ)
DCモーター×2(チャッキング,ローディング) 
電源  AC100V 50/60Hz 
消費電力  40W 
ACアウトレット  UNSWITCHED 容量400W 
寸法  435W×109H×380Dmm 
重量  9.3kg 
※本ページに掲載したDX-30の写真・仕様表等は,1984年
 8月のONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー株
 式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を
 無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられています
 ので,ご注意ください。

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