HA-1100の写真
Lo-D HA-1100
STEREO PREMAIN AMPLIFIER ¥130,000

1975年にローディー(日立)が発売したプリメインアンプ。日立は,Lo-D(Low Distortion
=低歪み:に由来)のブランドで,高い総合技術力を生かしたすぐれたコンポーネントを作って
いました。ブランド力ゆえ専業メーカーほど話題にはなりませんでしたが,アンプの分野でも高
い素子技術を背景に正攻法のすぐれたアンプを作っていました。このHA-1100は,当時の
ローディーブランドのプリメインアンプの最上級機でした。

パワー部は,差動2段定電流駆動エミッタ接地インバーテッドダーリントン純コンプリメンタリー
OCLという回路構成で,90W+90W(両ch駆動・8Ω・1kHz)の大出力と0.006%(高調波
歪率・1/2出力時・1kHz)という低歪みを実現していました。
差動増幅2段のドライバー段は,安定化電源によりドライブされ,定電流駆動化されることによ
り微少出力時のクロスオーバー歪みが抑えられていました。
エミッタ接地インバーテッドダーリントン回路は,電力増幅段で電力利得を得るだけでなく,電圧
利得が得られるため,裸利得が大きく安定にフィードバックがかけられ,ドライバー段のドライブ
電圧も小さくてすむなどのメリットを持ち,低歪み,高SNを実現していました。

イコライザー回路は,初段にFET差動アンプを用いた3段構成で,±2電源でドライブされ,280
mV(RMS・1kHz)のダイナミックマージンを低歪みで獲得していました。また,精度の高い素子
と十分なフィードバックによりRIAA偏差も±0.3dBと高精度な特性を実現していました。さらに
厳選した日立製LPTトランジスターにより,すぐれたSN比特性を実現していました。

トーンコントロール回路は,イコライザー回路と同じ差動入力型3段構成アンプで,終段は低電
流負荷によるエミッタフォロアとなっていました。このため,トーンの位置によるSN比の劣化や
周波数特性のうねりが抑えられていました。また,このトーンコントロールは,ターンオーバー周
波数がBASS,TREBLEともそれぞれ3段切替となっており,幅広い補正が可能となっていまし
た。さらにトーンディフィートスイッチも装備されていました。

ボリュームコントロールには,22接点スイッチ式アッテネーターが採用され,左右連動誤差の少
ない正確なレベルアッテネーションが行えるようになっていました。また,コントロールアンプの初
段に入力インピーダンスの高いFETを使用し,信号源インピーダンスの変動によるNFの変化が
少ないSN比の劣化の少ないコントロールが可能となっていました。
さらに,3段(−5dB,−10dB,−20dB)のゲインセレクターが装備され,各々独立はもとより加
算式ではたらく仕組みのため,−5dB〜−35dBの広範囲にゲインアッテネーションやミューティ
ングが行え,ボリュームとの組み合わせで,音量の正確な微調整が行えるようになっていました。

PHONO入力は2系統備えられ,PHONO-2は入力感度レベルが6dBの範囲で微調整できる
ようになっていました。カートリッジの出力に合わせて使用でき,2系統のアナログプレーヤーを
使用する場合,PHONO-1と出力レベルを合わせることも可能でした。
その他の機能として,2段切換ローフィルター,2段切換ハイフィルター,MODEスイッチ,ラウド
ネススイッチも装備されていました。

スピーカー端子は3組備えられ,3系統のスピーカーが接続可能であるとともに,B端子に接続
したスピーカーの音量レベルは−15dBコントロールできるようになっており,2組の能率の異な
るスピーカーの音量レベルを揃えられるようになっていました。
アンプ,スピーカー保護のための保護回路として,直流電圧検出回路,安全動作領域検出保護
回路など,信頼度の高い電子式保護回路が搭載されていました。

HA-1100の内部

以上のように,HA-1100は,当時のローディーブランドのプリメインアンプの最上級機として,オー
ソドックスながら,しっかりと物量を投入した安定性を重視した設計により,多機能で使い易く,安
定した再生能力をもった実力機でした。派手さはないものの端正な再生音は,もっと評価されても
よかったと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



90W+90Wの豊かな出力と
0.006%の低歪率を実現すると共に
多彩なコントロール機能を持つ
新プリメイン

◎90W+90Wの豊かな出力と
 0.006%の低歪率を実現したパワー部
◎低歪・高S/N設計ができる
 インバーテッドダーリントン接続
◎ピアニシモが美しい
 差動2段定電流駆動ドライバー段
◎プリアンプのイコライザー段は
 初段にFET差動アンプを用いた3段構成
◎多彩な音質調整ができる,初段にFETを
 使用したトーンコントロール回路
◎加算式3段ゲインセレクター装備
◎前面スピーカーBレベル調整
◎ボリュームコントロールには
 22接点スイッチ式アッテネーターを採用
◎PHONO-2レベル6dB可変
◎アンプ保護,ス ピーカー保護には
 信頼性の高い,安定な電子式回路を採用
◎テープ2系統,及び相互ダビング可能




●HA-1100 Specification●


■パワーアンプ部■

回路方式
差動2段全段直結エミッタ接地
インバーテッドダーリントン
純コンプリメンタリーOCL
ダイナミックパワー
220W(IHF 8Ω)
実効出力
20Hz〜20kHz(両ch駆動):80W+80W(8Ω),90W +90W(4Ω)
1kHz(両ch駆動):90W+90W(8Ω),100W+100W(4Ω)
1kHz(片ch駆動):100W/100W(8Ω),110W/110W(4Ω)
全高調波歪率
実効出力時:0.1%
1/2実効出力時:0.006%
混変調歪率
(70Hz:7kHz=4:1)
実効出力時:0.03%
1W出力時:0.03%
出力帯域幅
6〜50,000Hz
周波数特性
6〜60,000Hz(+0,−1dB)
入力感度/インピーダンス
0.8V(70kΩ)
出力端子
スピーカー端子:A・B(4〜16Ω)
          A+B(8〜16Ω)
ヘッドホン端子:4〜16Ω
ダンピングファクター
60以上(1kHz,8Ω)
S/N
(IHF,Aネットワーク,入力ショート)
100dB以上



■プリアンプ部■

回路方式
イコライザーアンプ:差動1段,3段直結 FET使用
コントロールアンプ:初段FET使用 NF形
入力端子
(感度/インピーダンス)
PHONO 1  :2mV/50kΩ
PHONO 2  :1.6〜6mV/50kΩ(連続可変)
TUNER   :100mV/50kΩ
AUX1    :100mV/50kΩ
AUX2    :100mV/50kΩ
TAPE PB1:100mV/50kΩ
TAPE PB2:100mV/50kΩ
PHONO最大許容入力
PHONO 1:280mV(RMS 1kHz)
PHONO 2:150〜800mV(RMS 1kHz)
出力端子
(レベル/インピーダンス)
TAPE REC 1・2:100mV/1kΩ
TAPE REC 2(DIN端子):30mV/80kΩ
PRE OUT:0.8V/2.2kΩ(定格)
        6V/2.2kΩ(最大)
周波数特性
PHONO(RIAA偏差):30〜15,000Hz(±0.3dB)
トーンコントロール
BASS  :±10dB(50Hz,100Hz,200Hz)
       ターンオーバー周波数
       150Hz,300Hz,600Hz
TREBLE:±10dB(5kHz,10kHz,20kHz)
       ターンオーバー周波数
       1.5kHz,3kHz,6kHz
フィルター
LOW:10,30Hz(12dB/oct)
HIGH:8k,16kHz(6dB/oct)
ラウドネスコントロール
(ボリューム−30dB時)
+13dB(100Hz),+7dB(10kHz)
S/N
(IHF,Aネットワーク,入力ショート)
PHONO:75dB
TUNER,AUX,TAPE PB:90dB
アッテネーター
−5,−10,−20dB(加算可能)



■使用半導体■

FET
8石
トランジスタ
67石
ダイオード
30個



■電源部・その他■

電源電圧
AC100V 50/60Hz
定格消費電力
180W(電気用品取締法)
ACアウトレット
1(電源スイッチ連動),2(非連動)
外形寸法
468W×188H×395Dmm
重量
13.5kg

※本ページに掲載したHA-1100の写真,仕様表等は,1975年
 11月のLo-Dのカタロ グより抜粋したもので,日立家電販売株式
 会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で
 転載・引用等することは法 律で禁じられていますのでご注意くださ
 い。

 

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