Lo-D HT-500
PLAYER SYSTEM ¥49,800
1981年に,ローディー(日立)が発売したプレーヤーシステム。ローディーは,重電部門ももつ総合電機メーカー・日立
が1968年にスピーカーの名機HS-500とともに立ち上げたブランドで,素材をはじめとするその基礎技術の高さは当
然で,その技術を投入したまじめで高性能なオーディオ機器を作り出していました。その日立=ローディーが総合的な
技術力を生かし,アナログプレーヤーでも派手ではないものの,すぐれた製品を作り出していました。そんなローディー
が発売した当時の中級機の主力モデルがHT-500でした。
ターンテーブルは,直径310mmの「V.C.METALターンテーブル」が搭載されていました。Vibration Cutの名前のとお
り防振構造がとられていました。アルミダイカストのターンテーブルにステンレス製円板を組み合わせた構造で,異種金
属を組み合わせ,密着面の摩擦によって有害な振動を減衰させるようになっていました。実際に,この「V.C.METALター
ンテーブル」は,従来のターンテーブルに比べ,約3倍の振動減衰能力をもち,キャビネットからターンテーブルに伝わる
有害な振動を抑え,カートリッジへの影響を少なくすることができていました。
トーンアームは,「V.C.METALトーンアーム」が搭載されていました。特殊な防振構造のアームパイプで,ステンレス
パイプを化学処理によって粒界腐食させパイプ内部に微細な空隙を作り出し,この空隙に起きる摩擦を利用してアー
ム振動を減衰させるようになっていました。従来のアルミパイプ製のトーンアームに比べてはるかに高い振動減衰能
力をもつとともに,アルミより高い機械的強度をもつステンレスの採用とストレートアームとすることで,トーンアーム自
身の分割振動もより小さく抑えられていました。
HT-500は,フルオートプレーヤーで,新開発のワンチップICによりトーンアームの動作が前面ボタンのフェザータッチ
操作により安全にコントロールできるようになっていました。演奏終了時のオートリターンは,アームの感度に影響を
与えない光電子式検出機構が採用されていました。また,DM(デュアル・マグネット)型カートリッジMT-30が搭載さ
れていました。
ターンテーブルを駆動するモーターには,ローディー自慢の「ユニトルクモーター」が搭載されていました。「ユニトルクモー
ター」は,DCモーターの弱点コッキングを解消するために,固定子のスロット数を増加させるのではなく,モーターの回
転原理から完全な円運動を求めたモーターでした。8極に着磁されたドーナツ型のローターマグネットと,22.5度ずら
された2組の星形扁平コイルを組み合わせ,これらの2つのコイルとマグネットから発生するトルク量がどの瞬間をとっ
ても常に一定になるというもので,原理的にコッキングが発生しないモーターでした。構造的にもブラシレス,スロットレ
ス,コアレスというシンプルな構造で,耐久性と大きな起動トルク,温度上昇の少なさなどの特徴を持っていました。モー
ターにおいて優れた技術を持つ日立ならではのモーターでした。
さらに,HT-500では,電圧変動や経時温度変化の影響をほとんど受けない水晶制御をかけたクォーツロックとするこ
とで,ワウ・フラッター0.025%(WRMS)という高い回転精度を実現していました。
以上のように,HT-500は,手頃な価格の中級機ながら,しっかりした技術が投入された,使いやすく,すぐれた性能を
持つプレーヤーシステムでした。木目の美しいウッドキャビネットによるバランスのとれたデザインも含め,まさに総合メー
カーならではの総合バランスにすぐれた高いコストパフォーマンスの1台でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
V.C.METALトーンアーム&ターンテーブル。
いま,ディスクの音が生まれ変わる。
◎トーンアームから共振を消せ。
ローディーの新技術V.C.METALトーンアーム。
◎異種金属の組み合わせで共振を抑える。
V.C.METALターンテーブル。
◎ユニトルクモーターを水晶制御。
ワウ・フラッター0.025%(WRTMS)を実現。
●新開発1チップIC採用フルオート
●軽快なフェザータッチ操作
●光電子式オートリターン検出機構
●HT-500 SPECIFICATIONS●
●フォノモーター部●
駆動方式 | クォーツロックD.D.フルオート |
モーター | ユニトルクモーター |
ターンテーブル | V.C.メタル(直径310mm) |
ワウ・フラッター | 0.025%(WRMS) |
S/N比 | 78dB(DIN-B) |
回転数偏差 | 0.003% |
形式 |
スタティックバランス形ストレートパイプアーム(V.C.メタル) |
アーム有効長 |
220mm |
オーバーハング |
15mm |
トラッキングエラー |
2° |
針圧調整範囲 |
0〜3g/1回転 |
適用カートリッジ重量 |
4〜9g |
形式 |
DM形(MT-30) |
周波数特性 | 10Hz〜25kHz |
出力電圧 |
3mV(1kHz 50mm/sec) |
針圧 |
2g |
使用針 |
0.6ミル ダイヤモンド針(DS-ST30) |
電源電圧 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 6W |
外形寸法 | 456W×154H×402Dmm |
重量 | 7.5kg |
Lo-D HT-500MKU
PLAYER SYSTEM ¥53,000
1984年に,HT-500はHT-500MKUにモデルチェンジされました。基本的な構成やデザインは継承しながらも各
部に改良が行われていました。
大きく変わったのが,外観の色調で,ウッドキャビネットはシャインエボニー(黒檀)調の落ち着いた黒系の色合いに
なり,それに合わせてアームまわりも黒基調の色となり,デザインはほぼ同一ながら,大きくイメージが変わっていま
した。
V.C.METALトーンアーム,V.C.METALターンテーブルをはじめ基本的な部分は同一でしたが,駆動系のユニトルク
モーターは,超精密加工技術による真円度0.1μ級のセンターシャフト,軸受けの採用やサーボ回路の見直しなど
により回転精度が高められ,ワウ・フラッターは0.02%(WRMS)へと向上していました。
その他,カートリッジには新たに高出力型MCカートリッジMT-60MCが搭載されていました。
以上のように,HT-500MKUは,前モデルHT-500をベースに,改良が施され,コストパフォーマンスが高いプレー
ヤーとして仕上げられ,手頃ながら基本性能の高い使いやすい1台となっていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
基本性能をあくまでオーソドックスに
磨きあげたV.C.METALクォーツロック
DDフルオートプレーヤー。
◎トーンアーム,ターンテーブルの共振を抑えたV.C.METAL。
◎ワウ・フラッター0.02%,回転数偏差0.002%の
ユニトルクモーター搭載。
◎高出力MCカートリッジ採用。、
◎ひずみの少ない無接触オートリターン検出機構
◎正確なアーム動作を追求した2モーターメカニズム
◎モーター,アームベースのキャビネットへの直付方式
◎シャインエボニー調ウッドキャビネット
●HT-500MKU SPECIFICATIONS●
●フォノモーター部●
モーター | ユニトルクモーター |
ターンテーブル | V.C.メタル(直径310mm) |
ワウ・フラッター | 0.02%(WRMS) |
S/N比 | 78dB(DIN-B) |
回転数偏差 | 0.002% |
形式 |
スタティックバランス形ストレートパイプアーム(V.C.メタル) |
アーム有効長 |
220mm |
オーバーハング |
15mm |
トラッキングエラー |
2° |
針圧調整範囲 |
0〜3g/1回転 |
適用カートリッジ重量 |
4〜9g |
形式 |
MC形(MT-60MC) |
周波数特性 | 10Hz〜30,000Hz |
出力電圧 |
1.5mV(1kHz 50mm/sec水平) |
針圧 |
1.7g |
使用針 |
0.4×0.7ミル ダイヤモンド針(DS-ST60) |
電源電圧 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 5W |
外形寸法 | 456W×154H×402Dmm |
重量 | 7.5kg |
※ 本ページに掲載したHT-500,HT-500MKUの写真・仕様表等
は1981年11月,1984粘10月のLo-Dのカタログより抜粋したもの
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