HT-860の写真
Lo-D HT-860BC
QUARTZ LOCK DD FULL AUTO PLAYER ¥129,000

1979年に,ローディーが発売したフルオートプレーヤー。ローディーは,カセットデッキの
分野で優れた技術を見せていましたが,アナログプレーヤーでは,それほど目立つ存在で
はありませんでした。しかし,総合メーカーとしてモーター等に高い技術を持つローディーな
らではの優れたプレーヤーを出していたのも事実でした。このHT-860は,フルオートタイ
プのプレーヤーとして同社の最上級機でした。

ターンテーブルは,直径330mm,重量2.0kg,慣性質量300kg・cmのアルミダイカスト製
のものを搭載し,ダイレクトドライブ方式で駆動されていました。ターンテーブルシートは振動
吸収性に優れたブチルゴム製でした。

モーターは,ローディー自慢の「ユニトルクモーター」が搭載されていました。「ユニトルクモー
ター」は,DCモーターの弱点コッキングを解消するために,固定子のスロット数を増加させる
のではなく,モーターの回転原理から完全な円運動を求めたモーターでした。8極に着磁され
たドーナツ型のローターマグネットと,22.5度ずらされた2組の星形扁平コイルを組み合わせ,
これらの2つのコイルとマグネットから発生するトルク量がどの瞬間をとっても常に一定になる
というもので,原理的にコッキングが発生しないモーターでした。構造的にもブラシレス,スロッ
トレス,コアレスというシンプルな構造で薄型の扁平な形を持ち,耐久性と大きな起動トルク,
温度上昇の少なさなどの特徴を持っていました。まさにモーターにおいて優れた技術を持つ日
立ならではのモーターでした。
回転数の制御は,水晶発振器によるクォーツロックで,±9.9%,0.1%ステップでの回転数
の可変が行え,可変時もクォーツロックされるようになっていました。

ユニトルクモーターユニトルクモーター構造図

HT-860の最大の特徴は,マイクロコンピュータを搭載したフルオートプレーヤーであることでし
た。通常のフルオートプレーヤーに対して,4ビット(!)のマイクロコンピュータを搭載することで
多彩で信頼性の高い機能性を実現していました。4ビットのマイクロコンピュータが,前面スイッチ
からの入力と,各種検出機構からの信号を検知し判断処理,プレーヤーのほぼすべての機能を
集中制御するようになっていました。また,前面には,作動状態を示すデジタル表示の表示窓が
設けられていました。

アームの駆動は,2つの独立したDCモーターで行われ,アームの動き等の検出は,アームの動
きに影響を与えないよう,光を使った無接触光電子式フルオート機構となっていました。これによ
り,前面のフェザータッチのスイッチ操作により,アームに触れずにアームの動きをコントロールで
きるようになっていました。レコードサイズの検出も光学式で行われ,レコードがターンテーブル上
にないときはアームが動作しない,レコード掛け忘れ時誤操作防止機構にもなっていました。回転
数もオートになっていました。1〜9回までの電子式メモリーリピート,タイマーを活用してレコード演
奏を開始できるタイマースタート機能なども搭載されていました。また,マニュアル操作も可能で,通
常のマニュアルプレーヤーとしての使用も可能でした。
アームは,有効長230mmのS字型で,スタティックバランス形,高さ調整が6mmの範囲で可能でし
た。また,ヘッドシェルは,軽量なマグネシウムダイカストのものでした。

キャビネットは,堅牢なアルミダイカスト製で,底板は板厚15mm,比重2.5のポリマールレジコン
による頑丈なもので,不要な共振を抑えたしっかりしたものでした。

以上のように,HT-860は,ローディー(日立)の総合力が生かされた,洗練された操作性と安定した
性能を持った使いやすいプレーヤーでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



コンピュータコントロール
クォーツロックDD


◎コンピュータによる集中コントロール
●可変回転もクォーツロックする新システム
●オートサイズ/オートスピードセレクター
●無接触光電子式フルオート機構採用
●1〜9回までの電子式メモリーリピート
●ノンタッチ方式のアームスイング機構
●2つのモーターでフルオートメカ独立駆動
●作動状態がひと目で分かるデジタル表示
●マニュアルプレーヤーとして使用が可能
●フェザータッチオペレーションスイッチ
●高品質,高技術で固めたトーンアーム
●電子ブレーキシステム
●コンピュータ制御レコード掛け忘れ時誤操作防止機構
●重量約2kg,慣性質量300kg・cmの重量級ターンテーブル>
●ブチルゴム使用ターンテーブルシート
●タイマースタート機能
●視認性に優れた前面操作パネル
●音響特性重視のダブルインシュレータを装備




●HT-860BC Specifications●


●フォノモーター部●

駆動方式 クォーツシンセサイザーピッチコントロールDDフルオート
モーター 扁平型無整流子DCサーボモーター(ユニトルクモーター)
ターンテーブル アルミダイカスト(直径330mm,重量6.0kg)
慣性モーメント 300kg・cm(シート含む)
定格回転数 33 1/3,45rpm
ワウ・フラッター 0.025%(WRMS)
回転数偏差 0.003%以内
起動特性 1/3回転以内(33 1/3rpm時)
ブレーキ 電子ブレーキシステム



●トーンアーム部●

型式
針圧直読式スタティックバランス形パイプアーム
アーム有効長
230mm
オーバーハング
15mm
トラッキングエラー
2°以内
針圧調整範囲
0〜3g/1回転(0.1gステップで直読)
適用カートリッジ重量
4〜10g
ヘッドシェル
マグネシュームダイカスト
ヘッドシェルコネクター
金メッキ処理チャッキングロック式
アーム高さ調整範囲
6mm




●キャビネット部●

キャビネット材質 アルミダイカスト
(底板:ポリマールレジコン・比重2.5・板厚15mm)
インシュレーター ダブルインシュレーター方式
付属機能 オートサイズ・オートスピードセレクター
無接触検出光電子式フルオート機構
電子式メモリーリピート
ノンタッチ方式アームスイング機構
アーム高さ調整機構
タイマースタート機能



●総合●

電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 14W
外形寸法 幅484×高さ151×奥行412mm
重量 14kg

※ 本ページに掲載したHT-860BCの写真・仕様表等は1980年
12月のLo-Dのカタログより抜粋したもので, 日立家電販売株式
会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転
載,引用等をすることは法律で禁じられてい ますので,ご注意くださ
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