HT-L70の写真
Lo-D HT-L70
QUARTZ LOCK DD FULL AUTO PLAYER  ¥70,000

1981年にローディーが発売したフルオートプレーヤーシステム。1979年にテクニクスが
LPレコードのジャケットとぴったり同じサイズ(31.5c×31.5cm)の「ジャケットサイズ」の
プレーヤーSL-10を発売し て世界中のプレーヤーメーカーをアッといわせました。その後
各メーカーからジャケットサイズよりわずかに大きいサイズのコンパクトなプレーヤーが次々
と発売され,アナログプレーヤーの1つのスタイルとして確立しました。そのような中で,すぐ
れたモーター技術をはじめとする基本技術をもつローディーが発売したジャケットサイズのプ
レーヤーがHT-L70でした。

HT-L70は,テクニクス以外では恐らく唯一ぴったりジャケットサイズを実現していたプレー
ヤーで,さらにテクニクスのSL-10,SL-7等よりもいっそうの薄型化(厚さ83mm)も実現
していました。
このコンパクトで薄型の筐体を実現するために,SL-10と同じくリニアトラッキングアームが
搭載され,アームをフタの部分に取り付けて一体化した構造となっていました。アームは有効
長95mmのローマス・ダイナミックバランス型のリニアトラッキングアームで,トラッキングエラー
インサイドフォースが大幅に低減され,特にトラッキングエラーは,通常のスイングアームに
比べて約1/20に低減されていました。
また,このアームには,ローディー独自の特殊防振構造が施された「V.C.METAL」が採用さ
れていました。「V.C.METAL」は,ステンレスパイプを化学処理によって粒界腐食(焼結の過
程において温度管理等で特殊な処理を行い,結晶と別の結晶との間に残された不連続な境
界面=結晶粒界に沿って腐食させること)させ,パイプ内側に微細な空隙を作りだしたもので
した。V.C.METALトーンアームは,この空隙に起きる摩擦を利用してアームの振動を減衰
させることがで,従来のアルミパイプに比べ,振動減衰能力ははるかにすぐれ,しかもステン
レスであるため,機械的強度の面でもアルミパイプを大きく上回り,分割振動も大幅に抑える
ことができていました。

カートリッジには,SL-10と同じくT4P規格のものが搭載されていました。T4P規格は,独自
のプラグイン方式が採用され,リード線を用いずに直接アームにカートリッジを差し込み,固
定ネジでロックするシンプルな構造で,がたつきが無く細かな調整が不要という便利なもの
でした。逆に専用のT4P規格のカートリッジしか使えませんが,当時各社からT4P規格のカー
トリッジは発売されていました。(現在でもネット上などで入手可能なようです。)HT-L70に
搭載されていたカートリッジはMT-70というもので,0.5milのダイヤモンド針DS-ST70を
搭載したMM形でした。

ターンテーブルは,直径300mmのアルミダイカスト製で,ダイレクトドライブ方式により駆動
されていました。ターンテーブルを駆動するモーターには,ローディー自慢の「ユニトルクモー
ター」が採用されていました。「ユニトルクモーター」は,DCモーターの弱点コッキングを解消
するために,固定子のスロット数を増加させるのではなく,モーターの回転原理から完全な円
運動を求めたモーターでした。8極に着磁されたドーナツ型のローターマグネットと,22.5度
ずらされた2組の星形扁平コイルを組み合わせ,これらの2つのコイルとマグネットから発生
するトルク量がどの瞬間をとっても常に一定になるというもので,原理的にコッキングが発生
しないモーターでした。構造的にもブラシレス,スロットレス,コアレスというシンプルな構造で
薄型の扁平な形を持ち,耐久性と大きな起動トルク,温度上昇の少なさなどの特徴を持って
いました。まさにモーターにおいて優れた技術を持つ日立ならではのモーターでした。HT-L70
に搭載された「ユニトルクモーター」は,コンパクトな筐体に搭載するために新開発された薄型
のもので,筐体全体の薄型化にも貢献していました。
このユニトルクモーターに,電圧変動や温度変化の影響を受けにくい水晶制御をかけたクォー
ツロック方式がとられ,ワウ・フラッター0.025%(WRMS),回転数偏差0.003%,SN比
78dBという高精度で静かな回転を実現していました。

薄型ユニトルクモーター

HT-L70はマイコン制御のフルオートプレーヤーで,ボタンの操作で,スタート,ストップ,アーム
送りなどが簡単に安全にできるようになっていました。そして,前後9曲の頭出しができるデジタ
ル表示の選曲機能も装備されていました。

以上のように,HT-L70はテクニクスSL-10追随機の中でも,サイズ的にも技術的にも最も接
近,あるいはある部分には独自の技術を投入し,超えていたところもあったともいえるモデルで
SL-10の弟機SL-7(¥70,000)と同価格ながら自動選曲機能も装備されているなど高いコ
ストパフォーマンスを誇る1台でした。SL-10よりも薄型の筐体ながら,どこか無骨なあたりは
何となくローディーらしく,ローディーのブランドの弱さもあり,あまり目立つこともないモデルでし
たが,しっかりした使い易いプレーヤーシステムでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



リニアトラッキング&
V.C.METALトーンアーム採用。
高さ83mmの
コンパクトサイズプレーヤー,
いま,ローディーから。


◎トラッキングエラーを大幅に低減した
 リニアトラッキングアーム採 用
◎新開発薄型ユニトルクモー ター採用。
 ワウ・フラッター0. 025%(WRMS)
 SN比78dB(DIN- B)を獲得
◎聴きたい曲をす早く頭出しす る
 デジタル選曲
◎マイコン制御フルオート機構
◎トーンアームの共振を抑えた
 V・C・METALトーン アーム採用




●HT-L70 SPECIFICATIONS●



●フォノモーター部●

駆動方式 クォーツロックDDフルオート
モーター ユニトルクモーター
ターンテーブル アルミダイカスト(直径300mm)
定格回転数 33 1/3,45rpm
ワウ・フラッター 0.025%(WRMS)
回転数偏差 0.003%



●トーンアーム部●

型式
針圧直読式ダイナミックバランス形
リニアトラッキングアーム(V・C・METAL)
アーム有効長
95mm
トラッキングエラー
±0.1°以内
針圧調整範囲
0〜2g/1回転
適用カートリッジ重量
6g



●カートリッジ部●

形式
MM形(MT-70)
周波数特性
10Hz〜25kHz
出力電圧
2.5mV(1kHz50mm/sec)
針圧
1.5g



●総合●

電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 17W
外形寸法 幅315×高さ83×奥行315mm
重量 5.0kg


※本ページに掲載したHT-L70の写真・仕様表等は1981年11月の
 Lo-Dのカタログより抜粋したもので,日立家電販売株式会社に著作
 権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等を
 することは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

 
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