TRIO KA-7700D
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥110,000
1976年に,トリオ(現JVCケンウッド)が発売したプリメインアンプ。トリオは,プリメインアンプの分野で多くの名
機を生み出してきたブランドでした。1975年に,国産初の左右独立2電源方式のプリメインアンプKA-7300
発売し,独立電源論争を巻き起こしました。また,1976年には,国産初のDCパワーアンプ搭載のプリメインア
ンプKA-9300を発売し,DCアンプブームを巻き起こしました。こうした技術的特徴を継承し,KA-9300の弟
機として発売されたのがKA-7700Dでした。

KA-7700Dの第1の特徴は,型番のDが示すとおり,DCパワーアンプ部を搭載していたことでした。DCアンプ
は,その名の通り,直流領域まで増幅性能を持つアンプで,そのために,信号経路からカップリングコンデンサー
を排除したもので,当時,トリオではNFループ内にもコンデンサーを持たないことを売りにしていました。この当
時,OCL(アウトプット・コンデンサーレス),ICL(インプット・コンデンサーレス)というように,信号経路からコンデ
ンサーを追放しようとする発想が広まり,「DCアンプ」とともに「ダイレクトカップリング」と称されて,各社のアンプ
に一気に広まっていきました。 信号経路,NFループ内に時定数を形成するコンデンサーを持たないDCアンプと
することで,低域の位相特性の向上,過渡応答特性の改善,超低域の安定した再生など多くのメリットがあるた
め,現在でもオーディオアンプでは常識となっています。

パワーアンプ部は,初段にFET差動を使った差動3段+パワーダーリントンブロックのICL・OCL・DCアンプとい
う構成になっていました。上述のように,入出力コンデンサーだけでなく,NFループ内にも時定数を形成するコン
デンサーを持たないため,超低域まで位相回転がなく位相差歪や過渡歪などの動的歪みの発生が抑えられてい
ました。パワーダーリントンブロックは,アイドリング電流調整部とASO(Area of Safety Operation=安全動作
領域)検出型リミッタープロテクションを内蔵したトリオオリジナルのディバイスでした。

イコライザーアンプ部は,差動2段+定電流負荷A級増幅による3段直結ICL方式となっていました。ローノイズ回
路素子を使い,最適定数を選択することなどにより,PHONO SN比83dB(2.5mV入力),RIAA偏差±0.2dB
というすぐれた特性を実現していました。

トーンコントロールアンプは,初段FET差動±2電源2段直結フラットアンプ+TREBLEコントロール,BASSコン
トロールという構成で,BASS・TREBLEはそれぞれ独立したNFB型トーンコントロールとなっていました。トーン
ジャンプで,完全にジャンプできるようになっていました。
ボリュームは,32ステップのアッテネーター式で,レバー式3ステップ(+10dB,0,-10dB)のゲイン切換を組
み合わせるこ とで,広範囲の音量調整が可能となっていました。このゲイン切換は,+10dBのポジションの搭載
により,出力感度の低いカートリッジに対しても対応できるようになっていました。
フィルター類は,定電流負荷回路を持つ低歪率設計NF型アクティブフィルターで,サブソニックフィルター(18Hz
12dB/oct)とハイフィルター(8kHz 12dB/oct)を搭載していました。また,ラウドネスコントロールは,2ステップ
切り替え式となっていました。さらに,ターンオーバー150Hz/600Hzの2段切換のラウドネススイッチが装備さ
れていました。
フロントパネルには,パワーメーターが搭載され,ワット表示で0.01W~100Wまでのレンジをカバーしていまし
た。

イコライザー部,トーンコントロール部,パワーアンプ部すべての入力から,音質劣化の原因となっている入力コン
デンサーを追放したICL方式を採用していました。また,トーンジャンプを使い,ハイフィルターとサブソニックフィル
ターをOFFにすれば,ゲイン20dBのフラットアンプからダイレクトにパワーアンプにつながることとなり,シンプルな
信号経路,回路構成を実現していました。



KA-7700Dの第2の大きな特徴は,電源部でした。トリオは,「ダイナミッククロストークの理論」を展開し,電源
部を介して片チャンネルに大入力があった場合にそ
の電源変動がもう片方のチャンネルに動的歪みである「ダイ
ナミック・クロストーク歪み」を引き起こすということで,
1975年,KA-7300で電源トランスから左右を独立させた
「左右2電源方式」
を初採用しました。KA-7700Dは,左右独立で大型EIコアの電源トランスを搭載し,12,000
μFの大容量コンデンサーを4本使用した強力な電源部を搭載していました。さらに,プリアンプの電源もパワーア
ンプ部から独立させ,同一チャンネル内でのパワーアンプ部からのプリアンプ部への干渉も抑えていました。

以上のように,KA-7700Dは,当時のプリメインアンプの最上級機KA-9300に次ぐ高級プリメインアンプとして
同社の推進してきた技術的特徴を継承しつつ発展させた中身の濃い1台でした。しっかりと投入された物量に裏
付けられたクリアな音は機能的でシャープなデザインとも共通するトリオらしさを感じさせるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



静特性の充実をベースに,動特性の追求を推し進めた結論。
DC左右2電源
◎DC~100kHzまで
 +0dB,-1dB以内の周波数特性
 をもつDCパワーアンプ部
◎理論解明が生んだ左右2電源


◎DCパワーアンプ部
◎左右2電源とプリアンプ独立3電源方式
◎初段FET差動増幅ICL方式イコライザー
◎徹底したシンプルな回路構成
◎立上がり特性を改善したアッテネーターボリューム
◎ゲイン切換
◎パワーメーター
◎2段切換ラウドネス




●KA-7700D 定格●

(パワーアンプ部)

実効出力 90W+90W(20Hz~20kHz,両ch動作8Ω)
95W+95W(1kHz,両ch動作8Ω)
全高調波歪率 0.03%(定格出力時,8Ω)
0.01%(1W出力時,20Hz~20kHz,8Ω)
混変調歪率 0.03%(定格出力時,8Ω)
出力帯域特性 5Hz~60kH(IHF)
SN比 115dB(IHF-Aカーブ)
入力感度/インピーダンス 1.0V/50kΩ
ダンピングファクター 50
最適負荷インピーダンス 4Ω~16Ω
周波数特性 DC~100kHz+0dB-1dB

(プリアンプ部)

入力端子 
 感度/インピーダンス/SN比(IHF-Aカーブ)
PHONO1   2.5mV/50kΩ/83dB
PHONO2   2.5mV/50kΩ/83dB
TUNER    150mV/50kΩ/100dB
AUX       150mV/50kΩ/100dB
TAPE PLAY 150mV/50kΩ/100dB
出力端子
 出力レベル/出力インピーダンス
TAPE REC PIN 150mV/450Ω
プリアウト出力インピーダンス 330Ω
プリアンプ部 出力歪 0.01%(1V出力時)
許容最大入力 PHONO 250mV(1kHz,歪0.03%)
周波数特性 TUNER・AUX・TAPE PLAY 7Hz~50kHz+0,-1dB
PHONO RIAA偏差 ±0.2dB
トーンコントロール BASS   100Hz ±7.5dB
TREBLE  10kHz ±7.5dB
フィルター SUBSONIC  18Hz 12dB/oct
HIGH      8kHz 12dB/oct
ラウドネスコントロール(定格出力時-30dB) 100Hz +10dB
30Hz  +10dB
ゲインコントロール +10dB,0,-10dB

(電源部その他)

電源電圧・電源周波数 100V 50Hz/60Hz
定格消費電力 240W(電気用品取締法に基づく表示)
電源コンセント 電源スイッチ連動   2
        非連動 1
寸法 430W×149H×384Dmm
重量  16.7kg 

※本ページに掲載したKA-7700Dの写真,仕様表等は1976年11月のTRIOのカタログ
 より抜粋したもので,JVCケンウッド株式会社に著作権があります。したがって,これ
らの
 写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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