KP-7700の写真
TRIO KP-7700
QUARTZ PLL DD TURNTABLE ¥80,000

1977年にトリオ(現ケンウッド)が発売したプレーヤーシステム。前年の1976年にKP-7300で大慣性質量
ターンテーブルの慣性モーメントで滑らかな回転を実現したケンウッドが,さらにクォーツロックを搭載して精度の
高い回転を実現しようとした1台でした。

KP-7700は,重量2.6kg,アルミダイカスト製の重量級ターンテーブルを搭載し,クォーツロック制御とのバラ
ンスを考慮して慣性質量は550kg・cmに設計されていました。クォーツでロックすると同時に550kg・cm
慣性モーメントによりトリオの称した「慣性ロック」が働き,周波数成分の低い外乱,あるいは時間ドリフトに対して
はクォーツPLLが,かつランダムなトランジェント負荷に対しては慣性モーメントが,それぞれの特性を生かして定
常回転をロックするというものでした。
重量級のターンテーブルを支えるセンターシャフトは直径10mmの超弩級のものを使用して偏芯やねじれを抑え
このセンターシャフトがそのままモーターの回転軸になる設計となっていました。モーターは,20極30スロットの
DCモーターで,1.5kg・cm以上の起動トルクを持っていました。

KP-7700のクォーツPLL回路は,サーボ検出部にダブル(マグネチック&メカニカル)積分方式の180スロット
3層ギヤを使用し,ターンテーブルの回転速度をそのまま電圧に変換するS・V(Speed-Volt)変換方式を採用し
ていました。これにより,サーボ応答をリニアにし,わずかな負荷変動に対してもクォーツPLL回路のレスポンス
を高めていました。

ターンテーブルシートには,ヘルツホルム共鳴箱の原理を応用した防振設計が施されていました。これは,ターン
テーブルシートおもて面に小さなポート,裏面に共鳴空間を設け,レコード盤で発生した分割振動を吸収するように
したものでした。

KP-7700の断面図

重量級ターンテーブルの回転を支えるキャビネットは振動を抑える設計で,丈夫な硬質チップボード製で,4kgの
MC材(石綿を加え高圧成型したコンクリートで,吸水率,含水率が非常に低く,剛性が高い素材)を配して重量
増が図られ,ターンテーブルの回転の反作用を抑え,外乱による振動も防いでいました。
プレーヤー全体を支えるインシュレーターには,デュアルサスペンション方式アブソーバーが搭載されていました。
このインシュレーターは,縦方向の剛性は低くし,横方向の剛性を高くした構造で,縦方向の振動をカットすると
ともに,慣性質量の大きなターンテーブルを駆動する際の横ぶれを抑えるようになっていました。

回転数切換スイッチ及びスタート・ストップスイッチは動作の確実なフリップフロップ回路を採用したデジタル制御
方式で,電源スイッチはスタート・ストップスイッチと独立し,パワーインジケーターと連動していました。クォーツロ
ックインジケーターは,ターンテーブルが正規回転し,PLLのシステムロック時に点灯するようになっていました。
また,ターンテーブルの停止及び回転変換に用いられるブレーキは,純電子式を搭載し,静かにしなやかに動作
するようになっていました。

トーンアームは,アームレゾナンスと1次分割共振という同時に制御することが難しい2つの外乱の影響を抑えよ
うとする「弾性カップリング質量分離型トーンアーム」TA-71が搭載されていました。これは,NHK技術研究所と
の共同開発から生まれたもので,アームレゾナンスと1次分割共振が逆相であることを利用して同時にキャンセ
ルしようとするもので,ハウリングマージンを上げるとともに,レベルの大きな低域共振を抑えて音質の改善を実
現していました。ヘッドシェルは,重さ11gのマグネシウム合金ダイキャスト製のものが付属していました。
アームベースには,機械インピーダンスの大きなコレクトチャック方式が採用され,トーンアームとベースの強固な
一体化が図られていました。
トーンアーム内線材には,直流インピーダンス,付加容量,付加インダクタンスの少ない,平組構造のペンタリッツ
線が採用されていました。

以上のように,各部に正攻法に気を配った設計のKP-7700は,大慣性質量ターンテーブルによる「慣性ロック」
と「クォーツロック」を組み合わせた高精度な再生機として優れた1台でした。後のKP-1100等につながっていく
ケンウッドの歩みが感じられると思います。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 
 
 


ディスクに刻まれた信号を,
ありのままにピックアップしたい。
ひとつのテーマを追求して,
ターンテーブルを慣性LOCKした!!

ダブル積分方式・S-V変換
クォーツPLL制御回路
慣性モーメント550kg・cm

◎定常回転はクォーツPLLで
 トランジェント負荷は慣性モーメントで
 回転精度をつきつめたTURNTABLE
◎過渡応答を追求したクォーツPLL
 検出機構が新しい
 変換方式が新しい
◎考えてみれば
 センターシャフトもターンテーブルの一部
◎ヘルツホルム共鳴箱の原理を応用した
 防振設計のテーブルシート
◎モータートルクの反作用と外乱を抑えた
 MC材ウェイトベース
◎タテ・ヨコ両方向の外乱を抑えた
 デュアルサスペンション・アブソーバー
◎デジタル制御のスタート/ストップ切換
 回転数切換
◎ディスク変換もスムースにできる
 純電子式ブレーキ
◎機械インピーダンスを上げ共振を抑えた
 コレクトチャック式アームベース
◎共振防止というより無共振と呼びたい
 トーンアーム
◎トーンアーム内線材に
 チャンネルセパレーションを改善する
 絹巻きペンタリッツ線を採用

KP-7600の写真
TRIO KP-7600
DIRECT DRIVE TURNTABLE ¥60,000

弟機として,KP-7600も発売されました。重量級ターンテーブル,キャビネット等,KP-7700とほぼ同じ仕様で
すが,クォーツロックではなくモーターも同じ20極30スロットのDCモーターながら,起動トルクはやや小さく1.3
kg・cmのものが搭載されていました。クォーツロックではないため,331/3rpm,45rpm独立の±3%のピッチコ
ントロールが付いていました。そのため,ターンテーブルシートの中央にストロボスコープが付いていました。アー
ムも,ほぼ似た構造の「質量分離型」ながら,弾性係数等少し異なるTA-51が搭載されていました。また,付属
しているヘッドシェルも12gのアルミ合金製のものとなっていました。トーンアームベースは,BSBM材ブロック削
り出しアームベースと4mmのダブルポイント固定ネジでしっかりと固定されていました。

以上のように,KP-7600はKP-7700の基本構造を受け継いだ弟機で,これもすぐれた性能を持っていました。
音の方は,クリアさが特徴のKP-7700に対してややソフトで滑らかな音で,独自の個性を持っていました。

 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 
 



起動トルク1.3kg・cm
20極30スロットDDモーター
慣性モーメント550kg・cm
◎慣性モーメント550kg・cmのターンテーブル
 20極30スロットDC・DDモーターが
 トランジェント負荷変動を抑止
◎マイクロスイッチ制御の
 スタート/ストップ/回転数切換
 そしてスピードコントロール
◎ヘルツホルム共鳴箱の原理を応用した
 防振設計テーブルシート
◎BSBMブロック削り出しアームベースと
 4mmダブルポイント・アーム固定ネジが
 トーンアームの振動を抑えた
◎共振防止というより無共振と呼びたい
 トーンアーム
◎ゼロポイント時完全無接点
 アンチスケーティング機構
 
 
●KP-7700/KP-7600定格●
 

■フォノモーター部■


 
 
KP-7700(PM-700)
KP-7600(PM-500)
駆動方式 ダイレクトドライブ ダイレクトドライブ
モーター型式 クォーツPLLサーボ20極30スロットDCモーター 20極30スロットDCモーター
起動トルク 1.5kg・cm以上 1.3kg・cm以上
ターンテーブル 330mm/2.6kgアルミ合金ダイキャスト 330mm/2.6kgアルミ合金ダイキャスト
慣性モーメント 550kg・cm2(ゴムシート含む) 550kg・cm2(ゴムシート含む)
回転数 331/3,45rpm 331/3,45rpm
ワウ・フラッター 0.022%(WRMS)以下 0.025%(WRMS)以下
SN比 62dB(JIS),74dB(DIN-B) 62dB(JIS),74dB(DIN-B)
トランジェント負荷特性
(400Hz331/3,20kg・cm負荷)
0.00030%以下 0.00030%以下
トランジェント負荷特性
(1000Hz331/3,20kg・cm負荷)
0.00015%以下 0.00015%以下
起動特性 1.8秒 2.2秒
回転数偏差 ±0.002%以内  
時間ドリフト 0.0002%/h以下  
温度ドリフト 0.00002%/℃以下  
電源電圧特性 0%(±10V)  

 

■トーンアーム部■


 
 
KP-7700(TA-71)
KP-7600(TA-51)
型式 スタティックバランスS字型パイプアーム スタティックバランスS字型パイプアーム
構造 弾性カップリング質量分離方式 質量分離方式
アーム実効長 245mm 245mm
オーバーハング 15mm 15mm
トラッキングエラー +1.8°〜−1.0° +1.8°〜−1.0°
針圧可変範囲 0〜3.0g(0.1gステップ) 0〜3.0g(0.1gステップ)
適用カートリッジ重量 4〜14g(付属シェル使用時) 3〜13g(付属シェル使用時)
付属シェル 11gマグネシウム合金ダイキャスト 12g一体整形アルミ合金ダイキャスト
アーム高さ調整 6mm 6mm

 
 

■総合特性■


 
 
KP-7700
KP-7600
電源 AC100V,50/60Hz AC100V,50/60Hz
消費電力 10W 10W
寸法 490W×160H×423Dmm 490W×160H×423Dmm
重量 17.5kg 17.2kg
付属機構 高さ可変アブソーバー,アームエレベーション
アンチスケーティング,純電子ブレーキ
金メッキオーディオコードetc
純電子ブレーキ,ピッチコントロール
アームエレベションetc
 
※本ページに掲載したKP−7700,KP-7600の写真・仕様表等は1977年
12月のTRIOのカタログより抜粋したもので,トリオ・ケンウッド株式会社に
著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をする
ことは法律で禁じられていますので,ご注意ください。
 
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