TRIO KT-7000
SOLID STATE AM-FM STEREO TUNER ¥59,800
1968年に,トリオ(現JVCケンウッド)が発売したAM/FMチューナー。トリオは,通信機のブランド
としても有名であったように,高周波関係の技術にすぐれたものをもち,1957年に,国産初のFM
チューナーFM-100(当時は,日本ではまだFM放送が行われておらず,アメリカ向けだったようで
すが・・。)を発売するなど,チューナーにおいても最も先進的なブランドでした。こうしたトリオが,日
本でのNHK-FM本放送の前年に発売した最高級FMステレオチューナーがKT-7000でした。

FMフロントエンドは,4連バリコンが搭載され,高周波2段増幅とミキサー段にそれぞれ合計3個の
FETを使用し,高いRFゲインと高感度,さらにイメージ比やクロスモジュレーション比の大幅な改善
を実現していました。このFETには特に低雑音のものを選別して使用し,SN比も高められていまし
た。発振回路は温度特性に重点を置いて設計され,ドリフトも-10℃~50℃までの間でわずかに
0.015%以内に抑えられており,安定した受信を可能としていました。

IF段は,シャープで理想的なIF特性が得られるクリスタルフィルターが搭載されていました。クリスタ
ルフィルターは,減衰特性が非常にすぐれており,混信が少なく,高級通信機には広く使用されてい
ましたが,FMのIFでは,10.7MHzの周波数で帯域を広くとる必要があり,帯域の狭い従来のクリ
スタルフィルターでは,対応させるのが難しい面がありました。そこで,トリオは,このチューナーのた
めに,新たにクリスタルフィルターを開発し搭載していました。このクリスタルフィルターは,入力の大
小に関わらず,シャープな減衰特性と広帯域にわたってフラットな特性を実現していました。そして,
クリスタルフィルターは,ドリフトが皆無で,調整の必要もなく正確に10.7MHzに同調し,経年変化
による特性の劣化もないという特徴をもっていました。IF増幅段には,このクリスタルフィルターが2
段搭載されていました。

また,IF増幅段では,クリスタルフィルターと4個の高利得ICが搭載されていました。IF増幅度も十分
にとれ,信号の小入力時からリミッターがきくため,70dB(100%変調100μV入力)という高SN比
が確保されていました。
こうしたクリスタルフィルターとICを採用したIF段は,世界初のもので,以下のようなすぐれた性能を
実現していました。
(1)小入力時の歪がきわめて少なく,大入力になってもステレオセパレーションが悪化せず,そのう
え,周波数の広帯域にわたってすぐれたセパレーション特性を示していました。
(2)選択度が大幅に改善されていました。
(3)低歪率になっていました。
(4)IFのドリフトがなくなり,長期にわたって安定しています。
(5)AMの抑圧比が改善されていました。
(6)キャプチャーレシオ(同一周波数局の混信除去能力)が改善されていました。

パネル面は,200mmのロングスケールの横行ダイヤルで,数字が浮かび上がるルミナス・ダイヤ
ルとなっていました。ダイヤルスケールの左には電波強度を示すSIGNALメーター,右にはセンター
チューニングメーターが装備されていました。
機能的には,局間雑音を抑えるFMミューティング,FMの受信セレクターとしてFM AUTO,MPX
FILTER,MONOが装備されていました。出力レベルのアッテネーターは3dBステップのものが搭
載されていました。
音声出力は,可変のOUTPUT,固定のTAPE REC,MONO OUTが搭載され,FMアンテナ端
子は,300Ω平衡,75Ω不平衡端子が装備されていました。
AM部は,3連バリコンが搭載され,通常の外部アンテナ端子に加え,バーアンテナが搭載され,高
感度の受信が可能となっていました。

以上のように,KT-7000は,世界初のクリスタルフィルター+ICという構成のIF段をはじめ,各部
に高度な技術が投入されたチューナーで,通信機の高い技術を持つトリオならではの高性能な
チューナーでした。当時,国内のみならず世界に的に見ても最高レベルのチューナーであったと思
います。このチューナーがあるために同社のアンプも人気となったともいわれていたほどでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



<FMのトリオ>が
技術の限界に挑戦!
世界で初めて実現した
チューナーの理想像

◎クリスタルフィルターとICを使用
 した中間周波増幅段
◎3FETの超高感度フロントエンド
◎300Ω不平衡,75Ω平衡の
 アンテナ入力端子
◎精密な2メーター同調方式
◎使いやすさに重点を置いた
 機能的な設計




●KT-7000定格●

使用トランジスター  4IC,32トランジスター,(3FET),28ダイオード 
受信周波数  FM:76~90MHz
AM:520~1610kHz 
感度  FM:1.5μV/84MHz(IHF規格)
AM:100μV/m 1,000kHz(バーアンテナIHF)
   15μV/1,000kHz(IHF) 
イメージ比  FM:90dB以上/84MHz
AM:80dB以上/1,000kHz
IF妨害比 FM:100dB以上/84MHz
AM:70dB以上/1,000kHz 
SN比  FM:70dB(100%変調100μV入力)
AM:45dB(30%変調1mV入力) 
FM 
クロスモジュレーション  100dB以上 
2信号選択度  60dB以上
AM抑圧比  60dB以上 
キャプチャーレシオ  1.5dB以下 
歪率  0.3%以下 
周波数特性  20~20,000Hz±0.5dB以内 
周波数ドリフト  0.015%以下 
FMマルチセクション 
セパレーション  400Hz 40dB以上
40~8,000Hz 30dB以上
25~13,000Hz 25dB以上 
歪率  0.3%以下 
キャリアリーク  -50dB以下 
FM ANTインピーダンス  300Ω平衡型及び75Ω不平衡型 
定格出力 1.5V(400Hz100%変調)
0.4V(400Hz30%変調) 
出力インピーダンス  OUTPUT,TAPE,REC:7kΩ(出力最大時)
MONO OUT:7kΩ 
電源 AC100/117V 50/60Hz
消費電力 20W 
寸法  380W×134H×280Dmm(木枠なし)
408W×134H×280Dmm(木枠付) 
重量 8.2kg 
付属回路 FMモノ-ステレオ自動切替装置
FMステレオインジケーター
FMミューティング
FMステレオノイズフィルター
ローインピーダンス出力回路
テープ録音端子 モノ出力端子
AMバーアンテナ
シグナルメーター
FMセンターチューニングメーター
SCAフィルター
クリスタルIF2段 
※本ページに掲載したKT-7000の写真,仕様表等は1969年2月の
TRIOのカタログより抜粋したもので,ケンウッド株式会社に著作権が
あります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等すること
は法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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