SANSUI P-M7
COMUPUTERIZED FULL AUTO D.D. PLAYER ¥57,000
1981年に,サンスイが発売したプレーヤーシステム。1979年に,テクニクスが30cmLPレコードのジャケットと
同サイズ(31.5cm×31.5cm)のジャケットサイズプレーヤーSL-10を発売し,大きな話題となりました。その
後各社から,ジャケットサイズ,あるいはそれに近いサイズの似た方式のプレーヤーが登場するようになりました。
そうした中,サンスイが発売したのがP-M7でした。
ターンテーブルは,直径306mmのアルミダイキャスト製で,P-M7専用に開発されたコアレスモーターでダイレク
トドライブ方式で駆動されるようになっていました。原理的にトルクムラの少ないコアレスモーターを,さらにクォー
ツPLL方式によるサーボで高精度に制御し,ワウ・フラッター0.028%という高精度な回転が実現されていまし
た。
トーンアームは,リニアトラッキングアームが搭載されていました。針先がレコード盤上を直線移動するリニアトラッ
キングアームは,歪発生の原因となるトラッキングエラー,チャンネルアンバランスの原因となるインサイドフォース
を微小にできるというメリット以外に,プレーヤーシステム全体を小型化することが可能になるというメリットもあり,
このP-M7においてもその点を大きく生かした設計になっていました。このタイプのプレーヤーの元祖であるSL-10
では,全体のコンパクト化のためにアーム部が蓋の部分に設けられていましたが,P-M7では,オーソドックスに
プレーヤーベース部にアーム部が設けられたスタティックバランス方式のアームになっていました。また,アーム自
体は軽くスリムなローマス・ショートアームが搭載され,低域共振にも強く,すぐれたトレーシング性能が確保されて
いました。そして,専用のデュアル・マグネット型カートリッジ・SV-S303が搭載されていました。
P-M7は,フルオートプレーヤーとして,マイクロコンピューターを搭載し,多彩な選曲機能の実現,積極的な自動
化が行われていることが大きな特徴となっていました。
選曲機構は,「ランダムプログラム自動選曲機構」と称し,1曲目→5曲目→2曲目・・・というように,プログラムさ
れた曲順通りに演奏できるもので,ディスク片面で7曲目までの選曲ができるようになっていました。また,リピー
トボタンをONにすると,プログラムされた曲順で反復演奏ができるようになっていました。
こうしたコンピュータープログラム選曲機構のために,トーンアーム先端部に2つのコンピューターの目=コンピュ・
センサーが搭載されていました。まず,第1のセンサーがレコード上をサーチし,めざす曲間を発見すると,コンピュ
ーターに静かにアームを降ろす指令を発し,次に,第2のセンサーが曲間に針先があることを感知し,ミューティン
グ解除を指令するという形で,針先とレコードの耳障りなタッチノイズをなくし,スムーズに演奏スタートができるよ
うになっていました。演奏が終了すると,第2のセンサーが曲間にあることを確認し,アームのリフトアップを指令し
確実にアームを上げるようになっていました。このようなデュアルセンサー方式により,正確な指定曲の選曲が可
能となっていました。また,3段階の感度セレクターを装備し,レコード盤の状態による誤動作の発生を抑えていま
した。
さらに,このプログラム自動選曲機能は.同社のカセットデッキ(D-M7,D-570,D-370,SC-A33等)と組み合
わせると,プレーヤーの演奏スタート/ストップとカセットデッキの録音スタート/ストップのタイミングをピッタリ合わせ
ることができる便利な機能・コンピュ・エディット機能をもっていました。この機能により,レコードの曲順を自由に入
れ替えてオリジナルの録音テープを作る作業も,自動的に行えるようになっていました。曲間の長さも適切なものに
自動的に設定されるというものでした。
コンピュ・センサーは,レコードサイズを検出する自動選盤機能も実現していました。レコードサイズを検知し,30cm
25cm,17cmのどのサイズのレコードもランダムプログラム選曲によって指定された曲間にトーンアームをリードイ
ン,また選曲を特に行わない場合も,フルオート動作によって,自動的にレコードの最外周にリードインし,しかも自
動選盤と同時に,30cm盤なら331/3rpm,17cm盤なら45rpmと回転数も自動的にセレクトされるようになって
いました。30cm盤45rpmのように特殊なレコードには,回転数を変えられるインバース・スイッチも装備されてい
ました。そして,この自動選盤機能は,レコードのかけ忘れによる針先の損傷を防ぐ安全機構としても機能するよう
になっていました。
操作系は,すべてフロントパネルに集中的にレイアウトされ,ダストカバーを閉じたままで全ての操作が行えるように
なっていました。マニュアルキーにより,トーンアーム左右移動もダストカバーを閉じたままで自由に行えるようになっ
ていました。
以上のように,P-M7は,ジャケットサイズに近い小型プレーヤーでしたが,各部にしっかりとした本格的な作りがな
され,機能的にも進んだ内容をもっていました。コストパフォーマンスの高い1台でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
このサイズ,この使いやすさがうれしい。
ランダムプログラム自動選曲,
コンピュ・エディット機能を
備えたリニアトラッキング・プレーヤー。
◎優れたトレーシング性能を生みだす
リニアトラッキング・アーム。
◎ワウ・フラッター0.028%の
高度なスペックを生み出す,クォーツ
PLLサーボ・コアレスモーター採用。
◎コンピューター感覚の精度あふれる
コンパクトでハイセンスなデザイン。
マイクロコンピューターの鮮やかな頭脳プレー
ランダム自動選曲機構搭載P-M7。
フルオート・プレーヤーの守備範囲は,
人間の手を超えてしまった。
◎聴きたい曲を聴きたい順序で
ランダムプログラム自動選曲機構。
◎レコードサイズも,回転数も,
すべてコンピューターがセレクトする
自動選盤/回転数オートセレクト機能。
◎レコードの編集録音に威力を発揮する
コンピュ・エディット機能。
◎ダストカバーを閉じたままでも操作できる。
フロントオペレーション。
●P-M7主要規格●
型式 | コンピューター制御フルオートD.D.プレーヤー |
駆動方式 | 電子制御ダイレクトドライブ |
モーター | クォーツPLLサーボ・コアレスモーター |
回転数 | 331/3,45rpm |
ターンテーブル | 306mmアルミダイキャスト製 |
ワウ・フラッター | 0.028%以下(WRMS) |
SN比 | 72dB以上(DIN-B) |
トーンアーム | リニアトラッキング方式スタティックバランス型 |
有効長 | 142mm |
トラッキングエラー | ±0.2° |
カートリッジ | デュアルマグネット型(SV-S303) |
周波数特性 | 10〜22,000Hz |
チャンネルセパレーション | 25dB(1,000Hz) |
出力電圧 | 2.4mV(1,000Hz,35.4mm/sec) |
負荷インピーダンス | 47kΩ |
適正針圧 | 1.75±0.25g |
針先 | 0.6mlダイア針(SN-S303) |
フルオート機構 | オートリードイン,オートリターン,リピート オートサイズセレクト(30,25,17cm) ランダムプログラム自動選曲 |
定格消費電力 | 11W |
寸法 | 345W×99H×360Dmm |
重量 | 5.8kg |
※本ページに掲載したP-M7写真・仕様表等は1981年9月の
SANSUIのカタログより抜粋したもので,山水電気株式会社に
著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,
引用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意くださ
い。
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