Aurex PC-6030
STEREO CASSETTE DECK ¥178,000(受注生産)

1976年にオーレックス(東芝)が発売した受注生産の高級カセットデッキ。水平型のカセットデッキがまだ
多かった時代に,垂直型のメカを搭載し,水平型のデッキをそのまま立てたようなオープンリールにも通じる
デザインで登場した高級機で,2ヘッドで性能を追及した高級機でした。

PC-6030の走行系は,まだ当時カセットデッキでは採用の少なかった「クローズドループ・デュアルキャプ
スタン方式」を採用していました。オーレックス自身もテープテンションの安定,ヘッドタッチの向上などのメリ
ットをうたっていました。

キャプスタン用モーターには,PLL(位相同期回路)制御のDCサーボモーターが搭載されていました。PLL
ICが搭載され,PLLならではの安定した発振周波数とモーターの回転周波数の差を瞬時に検出して駆動電
圧を一定にコントロールすることにより,高い回転精度を実現し,巻き始めと巻き終わりの回転数偏差を低く
抑えることができていました。また,リール駆動用にはリミッター付きのDCモーターが搭載され,PC-6030
はいわゆる2モーター構成となっていました。

操作系には,カセットデッキでは当時まだ珍しかった,ICロジックによるフェザータッチ操作が可能になって
いました。ICロジックの採用により,巻き戻し,早送り,再生等のお互いの操作をダイレクトにかつ安全に
できるようになるメリットは当時画期的なものでした。また,このICロジック方式を利用して,巻き戻し後自動
的に再生に入る「オートプレイ」,テープエンドで自動的に巻き戻しを行う「オートリワインド」,オートプレイを
繰り返しで行う「リピート」,リピート再生を希望の歌書から行う「カウンターリピート」など当時としては多彩な
再生機能を持っていました。

ヘッドには,フェライトコアを使用した高い加工精度の「ミクロン・ヘッドF」を録再ヘッドに搭載した2ヘッド構成
となっていました。ヘッドで誘電した電圧をそのまま増幅するダイレクトカップリング方式を採用し,ヘッドとア
ンプ間に音質劣化の要素がない構成でした。当時の技術で,オーレックスが2ヘッドで一つの究極をめざした
設計でした。

ノイズリダクションはドルビー(B TYPE)を搭載し,ドルビーの誤動作を防ぐON/OFF可能のMPXフィルター
(19kHz)も搭載されていました。テープセレクターはバイアス,イコライザー独立式で,それぞれNORMAL
CrOの2段切り換えでした。録音入力は,LINE,MICを装備し,それぞれ独立したレベル調整ができるよう
になっていて,両者のミキシング録音も可能でした。

PC-6030の写真

以上のように,PC-6030は,縦型正立透視型というボディーに当時の最先端のデッキ技術を投入し,オーレ
ックスが2ヘッドで徹底的に性能を追求した高級機でした。プロ機を思わせる精悍なデザインとしっかりした性
能を持つ2ヘッドの名機の一つだと思います。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 
 


速度偏差の少ない
PLL制御DCサーボモーターを採用。
ICロジック回路による
フェザータッチ・コントロール・デッキ。
◎音質で・機能で・操作で,ぜいたくとは余裕の別名です
◎テープ走行から問題を追放するPLL制御DCサーボ
◎駆動方式は,クローズドループ・デュアルキャプスタン
◎軽快で誤動作の少ないICロジック・フェザータッチ操作
◎留守録音からリピート再生まで盛りだくさんの機能
◎新開発《ミクロンヘッドF》をアンプにダイレクト接続
◎dB表示ピークレベルメーターを装備
◎ドルビー・ノイズリダクション・システム内蔵
◎ドルビーの誤動作を防ぐMPXフィルター付
◎キャプスタン駆動にPLL制御DCサーボ形,
 リール駆動用にリミッター回路付DCを使った
 2モーター駆動
◎バイアス,イコライザーとも独立で各2段階切換
◎マイク,ラインのミキシング録音も楽しめる設計
◎発光ダイオードを使ったテープ走行表示ランプを装備
 
 
 
●PC-6030の規格●

 
駆動方式 クローズドループ・デュアルキャプスタン方式
使用モーター DCサーボモーター(キャプスタン)
DCモーター(リール)
周波数特性 20〜15,000Hz(ローノイズテープ)
20〜17,500Hz(クロームテープ)
歪率 1.5%(0dB 1kHz)
SN比 55dB(ローノイズテープ)
57dB(クロームテープ,LINE,ピークレベル,NAB,A特性)
ワウ・フラッター 0.07%(WRMS)
チャンネルセパレーション 35dB(+10dB 1kHz)
クロストーク 70dB(+10dB 1kHz)
消去率 70dB(+10dB 1kHz)
早送り,巻戻し時間 約80秒(C-60)
バイアス周波数 85kHz
使用半導体 IC27,Tr71,Dio79
入力端子
(感度/インピーダンス)
MIC 0.3mV/50kΩ以下
LINE 100mV/100kΩ
出力端子
(出力/インピーダンス)
LINE 0.4V/50kΩ以上
ヘッドホーン 1mW/8Ω
供給電源 AC100V,50/60Hz
消費電力 35W
外形寸法 403W×252H×199Dmm
重量 10kg
※本ページに掲載したPC-6030の写真,仕様表等は1976年10月
 のAurexのカタログより抜粋したもので,東芝株式会社に著作権
 があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等する
 ことは法律で禁じられていますのでご注意ください。
   
 
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