SANSUI PC-X1
TRICODE PCM AUDIO PROCESSOR ¥168,000サンスイが1983年に発売したPCMプロセッサー。当時の標準フォーマットである14ビット直線のPCMプロセッサーでした。
当時のデジタル録音はビデオレコーダーを使ってビデオテープに録音していましたが,VHSの長時間モード(3倍モード)でも
問題なく録音できるように技術を投入したサンスイの意欲作でした。PC-X1の最大の特徴は,デジタル信号の読み取り精度を大きく高めた「トライコードPCM回路」を開発し,搭載したことでした。
PCM録音・再生では,デジタルデータを読み取る際に,テープやVTRの状態によって正確なデータが読みとれない場合があり
ます。(実際にはほとんど読み取りエラーは起こっていますが・・・。)特に,当時PCMプロセッサーと組み合わされて主に使用さ
れていたVHS方式の3倍モードやベータフォーマットのβVモードでは,長時間記録が可能な代わりに,トラック幅が著しく狭く
なり,PCMデータの劣化が起こってしまいます。確かに,当時の多くのPCMプロセッサではこのようなデジタルデータに対する
弱さがありました。
「トライコードPCM回路」は,過去に読み取ったデータをもとに,これからのレベル変動や時間軸での変動を予測しながら正しい
データを読み取る予測技術を強化することで,レベル変動や時間軸での変動に対する追従性を大きく向上させたもので,トータ
ルとしてデジタル信号の読み取り精度を大きく高めたものでした。具体的には,信号の波形のピークを読み取るレベルを信号レ
ベルによって変動させてレベル変動への追従性を高めたり,サンプリングのポイントを複数にして時間軸上の追従性を高めると
いう方式だったようです。PC-X1では,この回路をIC化して搭載し,長時間モードでもクオリティをあまり落とさずに記録・再生
できるという特徴をPC-X1にもたらしていました。ICやLSIなどの回路をマウントするプリント基板には,性能と耐久性に優れた高品質のガラスエポキシ基板を使用し,銅箔電解
コンデンサー,高級カーボン抵抗などの厳選されたパーツを使用するなど,サンスイのアンプ技術も生かされた設計になっていま
した。電源部も,全ての信号アンプを±2電源のDCアンプ構成としていました。PC-X1は,AC電源以外に,充電式バッテリー,カー電源が使える3電源方式になっていました。充電式バッテリーは,録音で
連続90分,再生で連続60分使用でき,付属のAC電源アダプターで約7時間で充電できるようになっていました。本体の重量
は2.5kgと軽量化され,野外での録音にも対応した設計でした。以上のように,PC-X1は,ソニーのPCM-F1など他社のPCMプロセッサーに負けない優れた性能と機能を備えていました。長
時間モードでの安定再生機能など先進的な技術も搭載され,サンスイらしいしっかりした音を聴かせてくれるPCMプロセッサー
でした。広く人気を得るまでには至りませんでしたが,すぐれたPCMプロセッサーではなかったかと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
プロのクオリティで
連続8時間のデジタル録音/再生
サンスイのデジタルマスター,PC-X1
狂的なデジタル信号読み取り精度−
デジタル・オーディオの中核を成す
オリジナルテクノロジー
サンスイ(トライコードPCM回路)
◎長時間番組もラクラクカバーする
連続8時間のデジタルエアチェック。
◎超Hi-Fi,長時間録音,小型軽量,3電源。
すべてが武器になる,アウトドア生録音。
◎生きたミュージックもライブもそのままに
しかも,マラソンコンサートもフルカバー。
◎オープン,メタルカセット・・・・・・
高級テープと比べてもエコノミーな
ランニングコスト。
◎テープのタイプ,クオリティ,
コンディションを問わず
すべてのビデオテープに対応。
◎標準モードと同じクオリティで長時間モードに
対応する「トライコードPCM回路」搭載。
◎電源,アンプ回路の設計,パーツの厳選・・・・・・
「デジタル」でも生きるサンスイの音質重視設計。
◎デジタルからデジタルへ。音のクオリティ劣化が
まったくかんがえられないデジタルコピー機能。
◎AC,充電式バッテリー,カーバッテリーの
3電源方式とバッテリー充電機能。
◎デジタル録音/再生のフットワークを軽快にする
軽量・小型のコンパクト設計。
◎入力レベル,トラッキング表示,バッテリーチェック
3つの機能を集中した多機能メーター。
◎最適ポイントで信号を読み取る
リードレベル機能。
信号形式 | NTSC TV方式準拠 |
符号形式 | EIAJ標準フォーマット(STC-007) |
オーディオチャンネル数 | 2チャンネル |
標本化周波数 | 44.056kHz |
量子化ビット数 | 14ビット直線量子化 |
周波数特性 | 5〜20,000Hz±0.5dB |
エンファシス | プリエンファシス(録音時):ONに固定
ディエンファシス(再生時):ON/OFF自動切換 時定数:50μsec/15μsec |
高調波歪率 | 0.007%以下(スペクトラムアナライザー測定法) |
ダイナミックレンジ | 86dB |
ワウ・フラッター | 測定限界以下 |
誤り訂正方式 | CRCC及び2パリティによる誤り訂正と補正 |
入力端子 | LINE(ピンジャック×2) 90mV/47kΩ(MAX500mV)
MIC(標準ジャック×2) 0.45mV/5kΩ(MAX2.5mV) VIDEO IN(ピンジャック) 1Vp-p/75Ω |
出力端子 | LINE(ピンジャック×2) 250mV/10kΩ(MAX1.4V)
VIDEO OUT(ピンジャッ) 1Vp-p/75Ω COPY OUT(ピンジャック) 1Vp-p/75Ω ヘッドホン(ステレオ標準ジャック) 200mV MAX(8Ω) |
ローフィルター | 200Hz,−3dB(6dB/oct) |
マイクアッテネーター | −20dB |
電源 | AC100V 50/60Hz(付属ACアダプター AC-X1使用)
DC12V |
消費電力 | 30W(AC),16W(DC動作時) |
寸法 | 本体 266W×73H×287Dmm
AC-X1 101W×73H×201Dmm |
重量 | 本体 2.5kg(バッテリー除く)
AC-X1 1kg |
※本ページに掲載したPC-X1の写真,仕様表等は1983年6月のSANSUIのカタログ
より抜粋したもので,山水電気株式会社に著作権があります。したがって,これらの写
真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
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