PIONEER PD-3000
COMPACT DISC PLAYER ¥180,000

パイオニアが1987年に発売したCDプレーヤー。当時のパイオニアのCDプレーヤーの最高級機 で,漆黒うるし調
の仕上げが美しい「EXシリーズ」(他にLDプレーヤーやセパレートアンプ,DATなどもあった)の一 つで,優美な外
観の中に物量をしっかり投入して作り上げられていました。

D/Aコンバーター部には18ビット4倍オーバーサンプリングデジタルフィルターが採用され,ゆるやかな特性を持
つ低次のディスクリート構成アナログローパスフィルターで高次のサンプリングノイズを取り除くことで, 位相特性,
歪率の向上を図っていました。D/Aコンバーターは,量子化レベルを18ビットに引き上げた18ビットD/Aコンバー
ターをL/R独立で搭載した18ビットツインD/Aコンバーターを搭載していました。

ディスクのピット信号を読みとるックアップ部には,LDプレーヤーで培った技術が生かされていました。新開発の
精度ピックアップを搭載し,従来採用されていたコリメータレンズを必要とせず,高倍率の有限対物レンズを採用

ることで光路長に余裕ができ,安定した光路を実現していました。ハーフミラーも従来より厚いものを用い,入射角

度も大きく設定することで,外力に対する歪みを最小に抑え,光路に発生する有害収差を低減し光信号のクオリティ
を高めていました。フォトディテクタにも最新のIC技術を投入し,バッファアンプも同一IC内に集積し,外乱に対して安
定した信号系を実現していました。
また,ピックアップ部には,高級LDプレーヤーLD-S1で開発された「アキュフォーカスシステム」を採用し,読み取り
エラーを大幅に低減していました。これは,レーザーの光信号を電気信号に変換し演算処理するRF回路を改善する
技術で,フォカースサーボのために4分割されたフォトディテクタの構造上,レーザー光がピットの進行方向に沿って
フォトディテクタを横切るように動く際発生する,先行の信号と後行の信号の間の時間的ズれによる高域の位相ズレ
を改善するために,先行の信号を遅延させ,後行の信号と位相を合わせるシステムでした。これにより,読み取りエ
ラーの少ない高出力のRF信号が得られるようになっていました。

大容量トランスなど,電源部の強化も行われていました。サーボ,デジタル系電源とオーディオ系電源をトランスその
ものから完全に分離したツインパワートランスを搭載していました。電源プラグ根本からサーボ回路,オーディオ回路
専用に芯線を分離したOFC極太4芯電源コードを採用し,相互干渉を徹底して抑えていました。さらに,オーディオト
ランスは,OFCバイファイラ巻と振動を抑える珪砂封入樹脂含浸を採用した高音質トランスとしていました。
オーディオ回路用に,定電流ダイオード等の高精度部品を採用したディスクリートプッシュプル構成の電源回路を配
置し,供給電源の安定化を図っていました。さらに,負荷端の電圧の変化を検知してフィードバックし電圧を制御する
リモートセンシング方式を採用し,電源回路から負荷端までのインピーダンスの影響を低減していました。

オーディオ回路の基板は,140mm×300mmの大面積のものを使用し,余裕あるパーツレイアウトを施し,かつ両面
基板とすることで,サーボ回路と完全分離の構成として,相互干渉を排除していました。オーディオ信号系のD/Aコン
バーター以降のアナログ回路には,すべてAクラスFETバッファアンプを採用し,電源の負荷変動及び各回路相互の
干渉,全段,後段のアンプの負荷に影響されない安定した波形伝送を実現していました。

PD-3000の内部

デジタル信号回路内の複数のクロックの干渉によるビートノイズの発生を抑えるために,D/Aコンバーター,デジタル
フィルター,デコーダーからシステムコントロールマイコンまでクロックを同期させた「NEWクォーツマスタークロック」を
採用していました。また,デジタル信号処理回路からのノイズの他への混入を避けるために,使用していない回路の
動作を停止するデジタル/アナログアウト切換スイッチを装備していました。ヘッドホン回路もジャックに差すと初めて
回路が動作する方式とし,FL表示点灯ノイズを抑える,FL表示消灯スイッチも付けられていました。

PD-3000では,不要振動を排除する無共振・無振動化が徹底して行われていました。ピックアップを支えるメカベー
スを2重構造とし,ピックアップ側のベースに銅メッキを施して,さらにこれを特殊樹脂でモールディングして振動減衰
特性と磁気歪みの改善を図っていました。一番の振動発生源である電源トランスは,プレーヤー外部に独立したトラ
ンスベースを設定し,極厚アルミアングルと真鍮無垢のインシュレーターを採用して,トランスブロックをフローティング
構造としていました。

PD-3000ピックアップ部PD-3000トランス部

システムを支えるシャーシにはハニカム形状を採用し,1.2mm厚の鉄板を使用して,高い構造的強度を確保してい
ました。また,シャーシ全体に銅メッキを施し,不要な振動と磁気歪みを大幅に低減していました。
プレーヤー本体を支える脚も,振動減衰特性の高い大型インシュレーターを採用し,さらにその形状も樹脂成形され
たハニカム形状にして外部振動の吸収力を高めていました。
光学メカニズムを外部振動から守るため,光学系メカニズムをシャーシからフローティングし,減衰特性のすぐれた特
殊ゴムとスプリングによる低重心コアキシャルサスペンションを採用し,高剛性で内部損失の大きいセラミックの支柱
で固定して不要な振動を抑えていました。
CDプレーヤーはディスク盤を中央のみで支えるため,外部振動や音圧の影響を受けやすいということで,ディスクを
マグネットの吸引力でキャッチしてディスクの共振を抑える「ディスクスタビライザー」を搭載していました。また,ローデ
ィングトレイ部には比重の大きい特殊樹脂を使用し,重量と精度向上を図っていました。

PD-3000の底部

パーツも厳選された高品質ものが使用されていました。シャーシにL/R独立でがっちり固定された金メッキピンジャ
ック,極性表示付OFC極太4芯電源コード,高品質なフィルムコンデンサー,炭素皮膜抵抗,電解コンデンサーなど
非常にコストのかかった作りとなっていました。

以上のように,PD-3000は,パイオニアがパーツからコンストラクションに至るまで,贅を尽くして高品質に作り上げ
た高級機でした。パイオニアらしい中庸に音楽を聴かせてくれる癖のないアナログ的な大人の音を持った逸品でした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

全身で,高音質を奏でる。
REAL TRANSMISSION DESIGN

すべての信号をピックアップし,ピュアに伝送する。
 ◎CD技術は,高精度デジタル信号処理から始まる。
  ●伸びやかな高音を 実現する18ビット4倍オーバーサンプリングデジタルフィルター。
  ●微少レベルの再現 性を高めるリアル18ビットツインD/Aコンバーター搭載。
  ●読み取りエラーを 大幅に低減するアキュフォーカスシステムを採用。
  ●すぐれた読み取り 精度,高信頼性を実現。樹脂ボディ採用の新開発ピックアップ。
 ◎どのような条件下で も,余裕の伝送波形を生み出す。
  ●サーボ系,オー ディオ系を完全分離したツインパワートランス。
  ●常に安定した電源 供給を実現するリモートセンシングプッシュプル構成電源。
  ●理想的なレイアウ トを追求した大面積の高音質基板。
  ●アナログ回路の増 幅すべてにAクラスFETバッファアンプ採用。
 ◎ノイズ混入の要因を排除し,高純度な伝送を実現する。
  ●デジタル回路から の影響を抑えるNEWクォーツマスタークロック。
  ●不使用回路の動作 を止め,ノイズ混入を防ぐデジタル・アナログアウト切換機能。

音は不要な振動から解放され,美しい輪郭を現した。
 ◎システム全体に貫かれた,無共振化の思想。
  ●ピックアップを不 要振動から守る無共振化ラミサートメカベース。
  ●電源トランスから の振動を効果的に抑えるアイソレーテッドトランスベース。
  ●不要振動と同時 に,磁気ひずみを抑える1.2mm厚銅メッキハニカムシャーシ。
  ●ディスクの不要振 動を抑えるバーチカルクランプ方式ディスクスタビライザー。
  ●光学系メカの不要 な横揺れを防ぐ,コアキシャルサスペンション&セラミックメカサポート。
  ●振動特性にすぐれ たハニカム構造を採用。大型ハニカムインシュレーター。
 ◎音質追求のための高音質パーツ群
  ●接続コードの機械 的ストレスが音質に及ぼす影響を排除。
  ●OFC(無酸素 銅)極太4芯電源コードは,+・−極性表示付き。
  ●パーツの一つ一つ にまで音質追求の目を向けたC・Rパーツ類。
  ●高級感あふれる漆 黒うるし調デザイン。無共振化もバックアップ。
 ◎リファレンスならではの快適な操作フィーリング。
  ●ハイスピードリニ アモーター採用による平均0.5秒以下の高速アクセス。
  ●静かでスムーズな 動作を実現。重量級ローディングトレイ。
  ●オプティカル (光)リンクとコアキシャルの2系統デジタルアウトを装備。
 
 

●PD-3000の仕様●
 

●一般●

型式 コンパクトディスクプレーヤー
ピックアップ 3ビーム半導体レーザー方式
D/A変換フォーマット 16ビット直線
デジタル演算出力 18ビット
D/A変換 18ビット
電源電圧 AC100V,50/60Hz
消費電力 26W
重量 12.5kg
外形寸法 458W×129H×435Dmm

●オーディオ特性●


周波数特性 2Hz〜20kHz±0.3dB(EIAJ)
SN比 115dB以上(EIAJ)
ダイナミックレンジ 100dB以上(EIAJ)
チャンネルセパレーション 109dB以上(EIAJ)
ワウ・フラッター 測定限界(±0.001%W・Peak)以下(EIAJ)
全高調波歪率 0.0014%以下(EIAJ)
出力電圧 2V±0.5V(EIAJ)
チャンネル数 2チャンネル(ステレオ)
デジタル出力 同軸出力 0.5Vp-p(75Ω)
光出力  −15dBm〜−20dBm(波長660nm)
※本ページに掲載したPD-3000の写真・仕 様表等は1987年
 9月のPIONEERのカタログより抜粋したもので,パイオニア株
 式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断
 で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注
 意ください。                                       
 

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